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 高等教育機関の経営者が語る日本の教育の未来予想
 

2003年9月16日更新

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Chapter14
 

愛知淑徳大学 理事長・学長 小林素文氏

小林素文氏

小林素文氏
昭和43年、慶應義塾大学経済学部卒業。昭和46年、アイオワ州立大学大学院言語学専攻修士課程修了。昭和59年、愛知淑徳大学文学部教授。平成元年4月、愛知淑徳大学学長に就任。平成3年4月より、学校法人愛知淑徳学園理事長を兼任。

「10年先、20年先に役立つ人材の育成」のために、 10年先、20年先を見すえた教育を創造します。

変えるべきものと守るべきもの

 社会が大きく揺れ動き、また一方で少子化が急速に進んでいる現在、日本の大学は大きな変革期を迎えています。実際、いわゆる一流校といわれる大学をはじめとする多くの大学が危機感を持ち、さまざまな改革に取り組んでいます。私たち愛知淑徳大学もまた、変化を避けるわけにはいきません。しかし、ただ世の中の流れを追い、目新しいものを取り入れるだけの改革には、私は賛成できません。それぞれの大学には、守るべきものがあるはずです。
 1905年、本学の前身である愛知淑徳女学校を開いたとき、創立者である小林清作先生は「10年先、20年先に役立つ人材の育成」を教育方針に掲げ、一方で、生徒たちには「淑徳魂」を説きました。淑徳魂を今風に表現すれば、自分らしく生きること、逆境に屈せず頑張ること、そして他人を気づかうことと言えるでしょう。こうした学園の伝統的な精神は、100年たっても変わっていませんし、また、変えてはいけないものと考えています。これこそ愛知淑徳学園が守り続けるべきものです。

「10年先、20年先に役立つ人材の育成」のために

   本学は文学部1学部体制で、1975年に開学しました。その後、文学部(国文学科・英文学科)に図書館情報学科を加え、また現代社会学部(地域社会・国際社会・メディアプロデュース・都市環境デザインの4コース)、コミュニケーション学部(コミュニケーション心理・ビジネスコミュニケーション・言語コミュニケーションの3学科)、文化創造学部(表現文化、多元文化、環境文化の3専攻)を増設して、4学部体制の大学へと成長してきました。また1995年にはいち早く男女共学体制へと移行し、 さらに2004年4月に新たに2学部を増設しようとしています。こうした積極的な大学改革の根底のあるものこそ、「10年先、20年先に役立つ人材の育成」と「淑徳魂」という伝統的な精神です。この変わることのない学園精神を現代に合わせてアレンジし、発展させていくための変革に取り組むことこそ、これからの大学経営者の仕事といえるのではないでしょうか

医療と福祉をつなぐ「医療福祉学部」

 2004年4月に開設する学部のうちのひとつが、医療福祉学部です。これは医療と福祉の橋渡しをし、医療と福祉の両面から高齢化社会を支えていく人材を育成する学部。具体的には、医療貢献学科言語聴覚学専攻では「言語聴覚士」を、医療貢献学科視覚科学専攻では「視覚訓練士」を、福祉貢献学科では「社会福祉士」「精神保健福祉士」をめざして学びます。これらのスペシャリストはいずれも国家資格として認められ、また現代社会での必要性が高まっているものばかりです。

ビジネスの「今」と「これから」を学ぶ「ビジネス学科」

 2004年4月には、同時に「ビジネス学科」を開設します。これは現代の激変するビジネス界をできる限りそのまま、リアルタイムに学び取ろうとする学部。そのため、教員の約半数を国際的な舞台で活躍してきた企業出身者や公認会計士とするなど、さまざまな新しい試みに取り組んでいます。また、ビジネスの道具として、英語や中国語、コンピュータのスキルを徹底的に高めるほか、ベンチャー企業や外資系企業、マ  スコミ各社から講師を招いて開く「アントレプレナー特論」などユニークな授業も開講します。ほかにも集中的に学習したほうが効率が上がる科目については、週3コマ×4週間ほどで集中講義を行うインテンシブラーニング方式を採用するなど、教育方法にもさまざまな工夫を凝らし、より効率的で効果の高い教育を追究していきます。
 ここで念押ししておきたいのは、こうした新しい学部は決して社会の変化やニーズの変化だけを追いかけて生まれたものではないという点です。医療福祉学部は従来のコミュニケーション学部コミュニケーション心理学科の、ビジネス学部はコミュニケーション学部ビジネスコミュニケーション学科の教育を踏まえ、そこで私たち自身が確かに得たものをベースに、それらを発展させたものなのです。むやみに時代を追いかけ、新しいものに挑戦しても、成功の可能性は低いものです。だからこそ私たちは日常の教育に真剣に取り組むなかから、次の変革の芽を育てていこうと考えているのです。

新しい理念を改革のよりどころに

 また、伝統的な精神を受け継いだ改革をブレのないものにするために、時代に合わせた新しい理念も必要です。本学では1995年の男女共学化に合わせ、新たに大学としての理念を掲げました。それは「違いを共に生きる」です。男女の性差、国籍の違い、年齢や世代の違い、考え方の違い……さまざまな「違い」を理解し、受け入れ、共に生きることこそ、これからの時代を生きる若者に必要なこと……そんな想いがこの理念には込められています。もちろん大学としても男女共学化だけでなく、外国人留学生や社会人学生の受け入れなどに積極的に取り組み、理念の具現化に努めています。また、2005年の学園創設100周年に向けて進めている星が丘キャンパスの再開発では、この理念に沿い、バリアフリーや歩車分離、分煙などを徹底し、環境にもやさしい空間づくりをめざしています。
 さらに理念に加え、大学がめざし、学生が体得すべきものとして、「地域に根ざし、世界に開く」「役立つものと変わらないもの」「たくましさとやさしさ」の3つを掲げました。これは伝統的な「淑徳魂」を現代風にわかりやすく表現し、学生に示したものとも言えますし、これからの大学改革のよりどころとも言えるものです。たとえば本学では「役立つものと変わらないもの」という観点からカリキュラムを組んでいます。「役立つもの」とは、資格や専門的な能力などのこと、「変わらないもの」とは、ゼミなどでの研究やふれあいを通じて、世の中を見る目を養い、自分らしい生き方を学ぶことです。

いつまでも卒業生が誇りに思える大学に

 この変化の激しい時代に、大学の将来を展望するのは難しいものです。しかし私がひとつ確信し、めざしているのは、「卒業生が誇りに思える大学であり続けること」です。そのためには今の学生に最善を尽くし、活気のある、良い大学であり続けなければなりません。将来のための布石を打っておくことも大切です。同時に伝統的な淑徳らしさを守り、育てていく必要もあるでしょう。結局のところ、厳しい大学間競争を勝ち抜くには、学生と卒業生、そして社会からの評価を高めていくほかありません。本当に流行っている料理店は口コミで支えられているのと同じように、大学も小手先の改革や目新しさだけでは生き残るのが難しいと思います。すぐれた教育プログラムを提示し、学生の将来を支援するという目に見える取り組みと同時に、曖昧模糊とした「らしさ」や雰囲気、活気といったものもやはり大切なのです。
 そうした「らしさ」でいえば、本学には実にのびのびとした、おおらかな学風があります。これはぜひとも守っていきたいもののひとつですね。たとえばクラブやバイトに打ち込んだために、成績はギリギリで卒業する。そんな学生がいてもいいんじゃないかと思います。本学には今、名古屋の学生たちが催している「にっぽんど真ん中祭り」の中心となっている活動している者が何人かいます。私はそんな学生をとても頼もしく思っています。もちろん勉強をやりたいと思えば、どこまでも頑張れる。同時に熱中できる別の何かを見つけたら、それにとことん打ち込むこともできる。愛知淑徳大学は、そんな自由でおおらかな大学であり続けたいと願っています。

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