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 高等教育機関の経営者が語る日本の教育の未来予想
 

2004年2月23日更新

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chapter46
 

長浜バイオ大学 理事長 吉田 保氏

吉田 保氏

吉田 保氏
1932年生まれ。(株)京都機関紙印刷センター・代表取締役を経て91年学校法人関西文理学園・理事長に就任。2001年財団法人長浜バイオ大学設立準備財団・理事長に就任後、2002年12月学校法人関西文理総合学園(長浜バイオ大学)理事長に就任、現在に至る。

バイオ系の人材はこれからの
日本に絶対必要とされている。
バイオでは最高の環境を提供したい。

バイオの大学は企業にも学生にも
求められているという確信があった

 長浜バイオ大学は、今春スタートしたばかりの大学です。県下の高校のみでなく、県外からも学生が集まり、我々の予想を超える高倍率となりました。まずまずの滑り出しでしたが、大学の新設にこぎつけるまでは困難の連続でした。
 新聞を読んでいて、「産学官」と「バイオ」の文字が出ない日はありません。日本政府も21世紀を生命科学の世紀と位置づけて、「バイオテクノロジー戦略大綱」をまとめ、2010年には日本のバイオ産業に110万人が従事すると予測しています。諸外国より育成が立ち遅れているとされる、高度で専門的なバイオ技術者が不足することは目に見えています。
 一方、我々の関西文理学園では10年前に日本初のバイオ系単科の専門学校「日本バイオカレッジ」を設立し、バイオの中堅技術者を育ててきましたが、この不況下にもかかわらず、就職率はきわめて高い群を抜く数字を挙げてきました。著名な企業への就職も多い。実践的な力をつけるために、大学を卒業後リターンして入学してくる学生もいるくらいです。夏期講座を受講する社会人も数多い。ただ、2年間に限られた専門学校で養成できるのは中堅技術者まで。高度な専門性を身につけるには4年間の大学教育が必要だと考えていました。
 ところが、この湖北の地に大学を作ることに対しては、まず身内の理事会に猛反対を受けました。我々が大学を運営した経験のない京都の学校法人であること、莫大な資金をどう準備するのか、湖北の長浜へは阪神地域の学生が行かない、などの懸念からです。
   これらの反対や懸念は滋賀県や長浜市といった地元自治体とバイオ関連を中心とした企業の支援・協力を取り付けることで乗り切ってきました。特に数十年来、大学新設の悲願を持ち続け、本学を市を挙げて歓迎し、誘致してくれた長浜市の力が大きかったのです。長浜市は東洋経済新報社の「全都市住みよさランキング」で3年連続1位(1995〜97年)となったこともある、景観の美しいところですが、京阪神と名古屋の中間地点にありその狭間となります。若者の定住化、活性化につながる大学の設置と産業の育成を強く望んでいたこともあり、住民パワーも含め半官半民で盛り上げてくれました。
 また教員をどう確保するか。本学は即戦力となる高度なバイオ専門技術者を養成することが主眼です。産業界から研究者を迎えるために努力もし、公募にはきわめて多くの応募をいただきました。また、本学の構想に共鳴していただき、生命科学の第一人者と言われる高名な教員を招聘できました。これで極めて優秀な教授陣を確保できる目処が立ちました。

バイオ単科の新設大学にできることは何か
小さな大学だからこそ大きな夢を追求したい

 我々が大学を開くにあたって、既存の大学と差別化し、どんな優位性を持たせられるか、3つの特色を考えました。
 まず1つは既存の大学の「弱点」を衝くこと。これまでのバイオは農学系、理学系、薬学系、医学系、工学系等、タテ割りに分かれています。これを学際的にクロスオーバーして、バイオサイエンスに集中して体系的に学べる1学科をつくることです。バイオは「西高東低」と一般的にいわれるように、京阪神地区には京大、阪大等強い大学が多数ある。愛知にもいい大学がある。いわば挟み撃ちされる格好ですが、バイオに特化することによって強みを打ち出すことにしたのです。
   2つめは実学第一で、即戦力となる高度なバイオ技術者を養成することです。このことを専門にした大学はわが国にはこれまでなかったのです。バイオテクノロジーは日進月歩ではなく「秒進分歩」と言われるほど進歩が速い。教学の基本は実学ですから、最先端の研究・実験の設備を整えました。古い設備を使っていたのでは、企業に就職しても使い物になりませんから。これには、産学協同も関わってきます。専門学校で培った経験も生きました。
 3つめは本学を核にして、この地域を大学発信型のバイオクラスターとすることです。バイオ版シリコンバレーとも言うべきこの「長浜サイエンスパーク」で産学官による共同研究を推進し、バイオ関係の企業や研究所の集積地としていきたい。これが学生たちの即戦力を育てることにもつながりますし、これまでなかなか難しかった大学発のベンチャー企業のインキュベーション機能も持たせることになります。ここから新しい企業を創出していきたい。現在、企業の進出を促進すべく、共同ラボを立ち上げる話も出てきています。

次の目標は大学院設立とサイエンスパークの充実

 大学院を設立したいと考えています。第1期生が学部を卒業する2007年春の設立を目指していますが、できればもう1年開設を早め、他大学卒業者や社会人を受け入れたいですね。やはり、大学でバイオサイエンスを研究する上では、大学院抜きには考えられない。高校の先生方から聞かれるのは、必ず、「就職だいじょうぶですね」ということと大学院の開設について。実は大学院を修了しても、オーバードクターといって就職できない人も結構いる。だが、本学の卒業生ならその心配はないとはっきり言っています。何といっても高い授業料を払い、保護者は教育投資をしているわけですから。教育もサービスですから、その投資に見合う結果をお返ししたい。
 この春、一般入試は高倍率をつけたので、集まった受験生たちにマスコミがなぜ本学を受けたのか「出口調査」をしました。返ってきた答えの大部分は、新しい大学だから優秀な教員がいるだろう、施設設備も最新のものが備えられているだろう、というのが一つ。もう一つは就職は大丈夫だろうから。それから産学官協同への期待でした。保護者が尋ねてくることもこの3つに集約されます。
 本学では、卒業するときには卒業証書と起業するための「事業計画書」を持って卒業してもらう、とよく話しています。これは、ハイレベルなバイオの専門技術と経営ノウハウの両方を身につけてもらうということで、いわばビジネスとテクノロジーの両刀使いを育てるということですね。これからの研究者にはビジネスセンスも不可欠なのです。
 現在の中国政府のトップ指導者9人のうち6人が理系出身です。しかも、中国では理系大学のナンバーワンである清華大学出身です。理系がトップになる時代なのです。日本の企業も例外ではありません。新産業の創出や経営革新、技術革新には理系の専門知識とマネージメント知識の両方が必要なのです。
 さて、本学で研究開発した成果をいかにビジネス化するか。産学官の連携や共同事業をいかに進めていくか。ここが我々の知恵の絞りどころです。また地元長浜の企業・産業界からの期待に加え、市民の大学への関心も大きい。本学では滋賀県が主催する淡海生涯カレッジに教員を派遣したり、高大医携等の具体化について力を入れることにしています。
 バイオベンチャー企業が本学から続々と巣立っていき、長浜サイエンスパークにはバイオ関連を始めとする企業のラボが集積し、この「バイオ版シリコンバレー」に知や産業を結集させること、これが我々の目指す姿なのです。

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