存在感のある大学を目指す
山梨大学は、教育人間科学部、医学部、工学部からなり、「地域の中核、世界の人材」をキャッチフレーズに掲げています。教育界に影響力があり、附属病院は地域の方に評価されており、工学部は地域性を活かした実績をあげています。
とはいえ現状に満足するつもりはありません。地方国立大学全般に言えると思いますが、もっと存在感を出していかなければいけないと思います。今は黙っていても学生は集まり、一定の研究実績もあがっています。しかし、今後も何もせずに現状維持ができるとは思えません。意識的に存在意義をPRしていかなければ埋没してしまいますし、定員割れを起こすような危険すら無視できないと思います。
まずは山梨大学の活動をもっと社会に知ってもらおうと、学長直属の独立した広報室を設置し、広報活動に専念できる職員を確保しました。これでしっかりした広報戦略を立て、計画的な広報活動ができるようになりました。今は全ての活動が大学の広報につながるよう意識し、露出を増やす努力を地道に重ねています。
ワイン、クリスタル、クリーンエネルギー、ナノテクノロジー・・・
特色ある研究で工学部をPR
近年、理系離れが問題になっていることもあり、工学部のPRには特に力を入れています。
工学部は、80年以上の伝統と実績があります。特に附属研究所は、大きな業績を上げています。例えば、ワイン科学研究センターは、ワインを専門に研究する日本で唯一の研究所で山梨県とも提携しています。日本でワイン製造に携わっている技術者のほとんどは本学の出身ですし、サントリーのチーフブレンダーも卒業生です。クリスタル科学研究センターも、地域性を活かして結晶に関する先端研究を行っています。
その他クリーンエネルギー研究センターは、日本を代表するクリーンエネルギーの研究拠点として、学外組織と連携しながら国家プロジェクトを主導しています。また、本学の「ナノ光電子機能の創成と局所光シュミレーション」事業は、国の指定を受けて新しい科学技術の研究を行う、戦略的創造研究推進事業となっています。
こうした特色ある研究を前面に押し出し、ここでしか学べない工学があることを高校生に知ってもらおうと考えました。その一環として、ワイン科学研究センターとクリーンエネルギー研究センターに、学部の1年から専門教育を受けることが出来るよう、学部・修士一貫教育プログラムを設けました。
研究センターをPRするほか、昨年度は工学部長が中心になって400校ちかい高校訪問を行いました。工学部の卒業生がラジオに出演したり、関東地区の工学部が合同で新聞の全面広告を打つなど、メディア露出も増やしました。多方面からの努力が実って、受験者数が昨年比で約170名増えました。今年度は名古屋での入試も計画しています。
外部連携が大学の存在感を高める
外部との連携もいいPRになります。
自治体は、国の機関である国立大学にはあまり関心がありませんでしたが、今は違います。中央市と県内の温泉とは、健康管理・生活習慣病の予防をテーマにした連携事業行っています。県とは燃料電池の共同研究を行っていますし、ワイン製造業の人材育成計画も作成しました。
今は、国立大学も自治体や企業など、外部と手を組まなければ資金調達が難しくなっています。ですから積極的に外部に働きかけています。綿密に計画を立て、充分な予算を確保すれば、外部機関は前向きになってくれます。努力すれば成果はついてきますし、自然と信頼関係も強まっていきます。
幸い工学部には目に見える技術があるので、外部の自治体や企業を巻き込んでいきやすい。これまでの連携事業の実績から、外部協力に積極的な学部として認知されるようになってきました。
社会の変化に合わせて大学教育の課題を洗い出す
学生の目線に立って教育内容を考えることも、国立大の課題の1つだと思います。今年度から、時代に合わせて全面的に再構築した基礎教育・教養教育がスタートしました。さらに基礎教育・教養教育を充実させるための大学教育研究開発センターを設置し、その専任教員も登用しました。
基礎教育については、英語、数学、物理のレベル別教育で個々の学生に合わせたきめ細かな指導を始めました。特に英語はTOEIC受験を義務付けるなど、力を入れています。教養教育の授業には、自治体や企業から外部講師を招いています。
基礎教育・教養教育と並んで充実を図っているのがキャリア支援です。大学で学んだことを将来につなげていくためには、キャリア支援が必要です。4月にキャリアセンターを設置してキャリア教育を推進することとしています、さらに同センターには、キャリアアドバイザーの有資格者を採用しました。現在、相談室等が手狭になってきたため8月を目処に改修工事を進めています。キャリア支援の中心となる人と場所を用意し、学部教育の早期から学生が将来のキャリアを意識していける体制を創っていきます。
また、社会が高度化し、学問が細分化している今、4年間の学部教育では時間が足りなくなってきています。すでに述べたように、ワイン科学研究センターとクリーンエネルギー研究センターでは、学部・修士6年一貫プログラムを設けています。
大学は学生のためのもの。学習環境の充実を図る
大学は学生がいてこその大学です。これからは学生のためにもっと予算を割くという意識が必要だと考え、現在、キャンパスの環境を全面的に整備しています。特に好評なのはローソンの設置です。2階と前面のウッドデッキにテーブルをおき、カフェのような感覚で利用できるようにしました。このほか、ほとんどのトイレを改装しましたし、一部の講義棟では全教室で天井、床、壁の全面改修、エアコンの取り付けと最新の教育機材の設置をしています。
学生の課外活動も支援していきたいと考え、表彰制度を設けました。スポーツ、ボランティア、文化活動などで活躍した学生を表彰し、所属している団体に補助金を出しています。今年の箱根駅伝の学連選抜チームに選ばれた選手もいますし、音大生も出場する全日本彩明ムジカコンコルソでは2年連続で本学の学生が入賞しています。そうした人を表彰していき、大学が学生の活躍を期待していると感じ取れる制度にしていきたいと思います。
キャンパス整備も表彰制度も予算がなければできません。学生のために使う予算と学部のために使うべき予算を明確に分けて配分し、学生のためにまとまったお金を動かせるようにしました。やはり予算制度や学内会計の仕組みをよく理解し、綿密な予算配分をすることが不可欠なのであり、それは学長の責務だと認識しています。
世の中は待ってくれない
迅速な行動と情報公開が勝ち残りのカギになる
私は40年間、脳外科医をしています。限られた時間の中で必要な処置をしなければ患者が亡くなってしまうという世界ですから、大学ではスピードアップの必要性を強く感じています。今はじっくり考えるより、スピードを優先するべき時期です。走りながら考える、間違ったら批判を真摯に受け止め、考え直していくというのが私のやり方です。ですから、チャンスを逸することなく大学としての行動を起こしていくために、意思決定の手続を短縮しました。その分、各部署にこまめに足を運び、教職員とコミュニケーションをとり、学内一の情報通になるよう努めています。
一方、こちらからは学長メッセージという形で教職員に向けて頻繁に問いかけを出しています。確実に伝えるために、メッセージは文書で出し、議論する際の資料にも使います。分かりやすい言葉できちんと数字をあげて書くこと、良い情報も悪い情報も全て表に出すこと、意思決定の過程を明示すること。それが感情論に走らず、理論立てた建設的な議論の下地になります。
どんなことにせよ、成果が出るには時間がかかります。日頃から、迅速な判断を重ね、一つ一つの課題に地道に取り組んでいこうと思います。そして、情報を皆で共有することで、教職員が大学全体のことを考え、力を合わせて大学を良くしていけるよう、日々努力していきます。
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