RECRUIT Learning Information Services Div.Co.   2008年2月4日更新  
  激変する教育業界の経営戦略「志願者減少時代の次の一手」  
  ■ CHAPTER  015   豊橋創造大学・豊橋創造大学短期大学部 学長 後藤圭司氏  
 
             
    profileimages   理学療法学科に続き、看護系学科の設置も構想中。
さらに地域に根ざし、地域に貢献できる大学へ。


後藤圭司氏

1935年名古屋市生まれ。名古屋大学工学部化学工学科卒業、名古屋大学大学院工学研究科博士課程化学工学専攻修了、工学博士取得。
京都大学工学部助手、北海道大学工学部助教授、名古屋大学工学部助教授、北海道大学水産学部教授、豊橋技術科学大学工学部教授、同大学学長を経て、2007年4月より、現職。
粉体工学会名誉会員、中日産業技術賞(中日新聞社)専門委員会座長。ほかに社団法人東三河地域研究センター副理事長、東海産業技術振興財団副理事長、(株)サイエンス・クリエイト代表取締役社長などを務め、地元産業界との関係も深い。

   
             
     
 

地域に密着し、
地域にすぐれた人材を送り出す大学

 現在、私立大学経営をとりまく環境はまさに激変しており、難しい舵取りが求められていると感じています。
 国立大学等は法人化をきっかけに改革が進み、次は私立大学の質的な改善が求められています。今後、私立大学は機能別に分化し、それぞれの大学が特色を出していくことが重要になってくるでしょう。特に本学のような比較的小さな規模の大学は、キラリと光る個性がなければ、社会に存在価値を認められないかもしれません。では、本学の個性とは何でしょうか。私は、答えは「地域」にあると考えています。地域に密着し、地域に求められる人材を輩出し、地域の中での存在感を高めていくことが、本学の個性につながるはずです。
 こうした意味では、本学は一貫して地域密着の大学運営を貫いてきたといえるでしょう。
 豊橋創造大学は、1996年に開学した新しい大学です。経営情報学部経営情報学科1学科の単科大学として誕生したときから、「創造性豊かな人間味あふれる人格の形成と専門職能教育を施すことを目的とし、広く国際的視野をもって、人類の福祉に貢献する社会人の育成をその使命とする」ことを理念に掲げ、地域の産業界にすぐれた人材を送り込んできました。また産学協同による教育・研究にも力を注ぎ、一定の成果をあげてきたと思います。

理学療法学科の開設により
医療系教育の分野へ

photo  地域に密着した大学経営を続けていくなかで、2006年4月にリハビリテーション学部理学療法学科を開設したことは、本学にとって大きなターニングポイントとなりました。
 元来、医療系の教育機関は学外実習などをはじめとした教育の面でも、人材輩出の面でも、地域密着の傾向が強いものです。本学の理学療法学科も地域のニーズを受け、地域の協力を得ながら無事に開設し、現在は意欲を持った学生たちが理学療法士として社会に出ることを夢みて、一生懸命に学んでいます。こうした意味で、理学療法学科は本学の使命と目的に沿った、真に本学らしい学科であるといえるでしょう。
 また理学療法学科の開設にあたっては、本学では次の医療系学科の開設も視野に入れていました。地域では、すぐれた医療従事者へのニーズがきわめて高いことがわかっていたからです。
 本学としては、日々理学療法学科の充実に向けて、また、医療系学科の開設に向けて、様々な医療機関との連携・協力関係の構築に努めてきました。そんな中、地域からの強い看護学科開設の要請があり、このたび、2009年4月に看護師養成の学科開設をめざすことを決意しました。この構想は、独立行政法人 国立病院機構 豊橋医療センター(旧:国立豊橋病院・旧:国立療養所豊橋東病院)からの要請と協力を得て実現したもので、今後は豊橋医療センターの力もお借りしながら、新学科の開設準備を進め、なおかつ理学療法学科の充実にも取り組んでいくことになるでしょう。

「出口」が明確で意欲を引き出す
そんな大学像をめざします

 私は、今後の私立大学経営では、「出口」つまり卒業後の進路を明確に示し、その目標を達成するための学習プロセスを明らかにすること、それによって学生のやる気を引き出すことがとても重要だと考えています。この面では、理学療法学科に続き、看護系学科を開設すれば、きわめて出口が明確な2つの学科が揃うことになり、本学の特色をよりハッキリと地域社会に示すことができるようになると思っています。
 一方で、もうひとつの学部である情報ビジネス学部キャリアデザイン学科は、めまぐるしく変化発展する社会にあっては、常にそのニーズを把握し対応していく必要性から、時に、こうした特色づけの面でやや弱さがあるように感じています。そこで現在、教員・職員を挙げて学部のコンセプトや教育システムの見直しを行っており、来年度にはひとつの答えを出したいと考えています。

「チーム医療」の実践学習など
学科間の連携教育を本学の特色に

 私たちが看護系学科の開設に期待している点は、もうひとつあります。
 現在、医療界では複数のスペシャリストがチームを組み、患者さんの治療に取り組む「チーム医療」が重視されています。理学療法学科に加え、看護系学科を持つことで、本学ではキャンパスのなかで実践的・体験的にチーム医療を学ぶことができる体制が整うはずです。このような両学科の連携は、学問の充実と将来の就職という面で、両学科の学生にとって大きなメリットになるでしょうし、本学の大きな特色にもなるはずです。
 また、情報ビジネス学部キャリアデザイン学科では現在、医療系の情報処理を学び、診療情報管理士などの資格取得をめざすコースを用意しています。こうした分野では、医療系の両学科との連携が可能でしょう。さらに、同じキャンパスで学ぶ姉妹校の豊橋創造大学短期大学部には幼児教育・保育科と専攻科福祉専攻があり、これら医療・福祉と関連の深い学科でも何らかの連携教育ができないかと模索しています。こうした高度な連携教育が実現したとき、豊橋創造大学は新たなステージへと歩みを進めることができると考えています。

これからは学外との連携も視野に
新しい教育の姿を模索したい

photo  連携教育という面では、今後、他大学をはじめとした学外との連携にも大いに注目すべきだと考えています。
 実は、私自身は工学部の出身で、理系畑を歩いてきた研究者です。現在、工学の分野では、知覚センサが注目され、今後のテクノロジーの発展に大きく寄与すると期待されています。知覚センサとは、視覚や聴覚、触覚、味覚、嗅覚など人間の知覚に相当するセンサで、あらゆる産業分野での応用が可能であり、それが実現すれば私たちの社会と暮らしをさらに一段階バージョンアップさせることができると考えられているものです。そんななかで医療は、知覚センサと相性がよい分野と考えられます。もしかしたら将来、本学と周辺の工学系大学との連携という意外性のある展開も可能かもしれません。
 いずれにしても、これからは従来の常識を取り払い、より大きな視野で学外との連携教育の可能性を探っていくことも大きな課題となってくることでしょう。

変わることのない「創造性教育」を柱に
社会と時代の要請にあわせた教育を

 さて、2006年4月のリハビリテーション学部理学療法学科の開設から、大きく動きはじめた本学ですが、今後はどんな方向に向かっていくのでしょうか。
 方向性を決めるひとつの要因は地域のニーズであり、この面では今後も積極的に地域の声を聞き、柔軟に応えていくことが大切と考えています。
 その一方で、私立大学経営には変わることのないひとつの柱を持つことも大切です。本学にとってのその柱とは、開学時に掲げた「創造性豊かな人間味あふれる人格の形成と専門職能教育を施すことを目的とし、広く国際的視野をもって、人類の福祉に貢献する社会人の育成をその使命とする」という理念にほかなりません。とりわけ、大学名にも取り入れている「創造」という言葉が重要なキーワードになるでしょう。
 本学では、開学以来、学生の創造性を引き出す教育に力を注いできましたが、それは理学療法学科を設置し、看護系学科の開設をめざす現在も変わることはありません。こうした学科では、必要な知識と技術を身につけ、国家試験に合格することが大きな目的となりますが、同時にみずから考え、創造力を持って仕事に取り組む姿勢も欠かせないものです。実際、医療の世界では4年制大学を卒業した理学療法士や看護師には特に、こうした考える力、創造性を期待していると聞いています。また開設2年目の理学療法学科でも、すでにレポート制作・発表に積極的に取り組み、創造力を養っています。今後は、卒業論文への取り組みなどを通して、さらに大きく学生の能力を伸ばしていくことになるでしょう。
 これからも社会は変化し続け、そこで求められる人材像も変わっていくでしょう。しかし、本学が理念として掲げる「創造性豊かな人間味あふれる人格」は、どんな時代にも変わることなく求められるはずです。今後もこの理念を大切にしながら、時代の変化を見つめ、地域の声をよく聞き、個性と存在感のある大学をめざして努力を続けていきたいと考えています。