実習のようなシミュレーションでは
決してできない実践的な学び。
大学を評価する指標の一つに、偏差値というものがあるのは周知の通りです。しかしそれはあくまで、「入学時の偏差値」です。大学とは本来、社会で生き抜くための力を身につける場であって、大切なのは「卒業時の偏差値」のはずです。本学は、学生たちが社会に出るときの偏差値をトップに押し上げる大学でありたい。また、このような明確な特長をもたなければ、本学は生き残っていけないのです。
その柱となるのが、2007年度から本格的に導入した「OSUプロジェクト共育」です。教員が学生にとって魅力あるテーマを提案し、学生が自主的にそのプロジェクトへ参加します。現在、「ソーラーカー・プロジェクト」「オキシライドプロジェクト」「OSUパリダカ参戦プロジェクト」「学生フォーミュラー参戦プロジェクト」「温泉掘削プロジェクト」などのさまざまなプロジェクトが動いています。昨年度は19プロジェクトで、今年度に入って多くの申請があり、現在30プロジェクトに増えました。ものづくり中心でしたが、今後は文系のプロジェクトをもっと取り入れていきたいと思います。
企業との協働も多く、プロジェクトに従事している間は実社会の一員として活動しなければなりません。そこが実習のようなシミュレーションの場とは決定的に違うところです。仕事というものは、なかなかうまくいきませんね。それと同じように、学生たちは「OSUプロジェクト共育」で実にいろいろな壁にぶつかります。問題解決の答えも簡単には見つかりません。無数にある方法から答えそのものを自分たちで見つけていかなければならない。このような壁にぶつかりながら、学生たちは自主性、創造性、コミュニケーション能力、人との連携力、問題解決力といった「社会人基礎力」を、まさに実践から修得しています。
挫折と成功、その両方が
学生を成長させている。
いくつか例を挙げましょう。本学とパナソニックの共同研究で行われている「オキシライドプロジェクト」は、オキシライド乾電池を原動力とする電池自動車を開発して、スピードのギネス記録に挑戦するという試みでした。スケジュールはCM撮りの日まで厳密に決まっている一方、影も形もないところからのスタートですから、学生たちは必死でした。その甲斐あって予定通り2007年8月、時速105.95kmでの走行を成功させ、「乾電池を動力源とした車両の最高速度」のギネス世界記録として認定されました。その後いよいよCMの放映日となったとき、製品にトラブルが出てCMはストップ。ほんとうに何が起こるかわかりません。ほかにも自動車に関するプロジェクトは盛んで、「OSUパリダカ参戦プロジェクト」には、協賛企業の協力を得て2007年に本学が初参戦しました。燃料はガソリンではなく、使用済みてんぷら油を精製したBDF(バイオディーゼル)燃料を用いて環境問題への関心を喚起しました。さらに、国内で廃棄された自転車を学内で整備し、リサイクル自転車としてラリーのゴール地点であるセネガル政府に寄贈するという国際貢献も行いました。2008年も同じように準備を進め、車検も通し、車体、燃料、セネガルに贈る自転車、すべてを整えました。ところが、大きく報道されたのでご存じでしょうが、政情不安のため「パリダカ」が中止になりました。いろんな方の協力をいただきながら多大な労力をかけて行った準備も、航空券も、残念ながらすべて水の泡です。このように自分たちの努力だけでは、どうしようもないことが多々起きるわけです。
挫折体験の例ばかり挙げましたが(笑)、挫折と成功の両方の体験が学生を大きく成長させます。要は、すべてが自己完結ではすまないという社会の現実、常に外の世界とつながっているということを学ぶ機会にもなっているわけです。これはあらかじめ結果のわかっている実習や実験では学べないことです。いま「温泉掘削プロジェクト」として、学内に地域との交流の場となる温泉を掘る計画が進んでいますが、地盤調査をして温泉が出る場所がわかった。でも条例が引っかかってきた。これも外とのつながりを実感する好例ですね。それを行政サイドとどう交渉して解決に導くのか、すべて学生に任せるようにします。
学生たちは自分の学んできたことを
母校や企業でも自信をもって語っている。
ほかに「OSUプロジェクト共育」の大きな教育効果として、活動を通じて自分の足りない知識を自覚できる点があります。たとえば「学生フォーミュラー参戦プロジェクト」では、レギュレーションの書類はすべて英語です。難しい専門用語も含めて、学生たちは自分で翻訳をしなければなりません。海外の人々とかかわるプロジェクトでも英語力の問題が生じます。ここで学生たちは語学の必要性を痛感します。1年次から「OSUプロジェクト共育」に参加すれば、早い段階で何を勉強しなければいけないのかが理解できます。しかし何より大きな成果は、学生時代に寝食を忘れて物事に打ち込んだ経験です。これは大きな自信になります。そういう体験をした学生は、出身高校訪問や説明会の機会にプレゼンテーションをしています。母校に出向き500人くらいの前で「大阪産大で、こんなことに取り組んだ!」と熱く語ります。また、企業の関心も非常に高いです。面接に行っても自分の取り組んできたことについて自信をもって語れます。何に苦労した。何に失敗した。どこが成長した。自分の言葉で語れますから、決してボロが出ません。企業にすればほしい人材です。なかには「幹部候補として採用したい」と申し出てくださった企業もあります。そういう学生を一人でも多く育てていきたいですね。
受験生が「やりたいこと」で選べる大学に。
「OSUプロジェクト共育」は「やりたいこと」で学部・学科、学年の枠を超えて学生たちが集まります。だからモチベーションが高い。受験生にもAO入試などを通じて、「やりたいこと」で本学を選んでもらえるようにしたいですね。そして1年次から「OSUプロジェクト共育」に参加する。そうすることで非常に大きな教育効果が望めるでしょう。しかし工学部というのは一般に電気、情報、機械といった技術軸の学科構成になりますが、これでは具体的に何をするのかわかりにくいかも知れません。それよりもロボット、自動車、ロケットなどのように「モノ」を軸にしたほうが受験生から魅力的に見えるのではないでしょうか。そこで本学では、ロボットなどのモノをテーマに、電気、情報、機械という要素技術を串刺しにした教材開発などにも取り組んでいきたいと思っています。
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