ときどき「高校生の読者」から手紙やメールをもらうことがある。書き手が本当に高校生なのか、とくにメールの場合は真偽がさだかではないが、高校名まで記されているものはホンモノと考えてよいのだろう。
彼らの手紙の特徴をひとことで言えば、「ストレートでまじめ」。もちろん、自分から進んで意見を書き送ってくる人たちだからまじめなのはあたりまえなのかもしれないが、大学生のレポートよりもよほど誠実で、中身がしっかり伝わってくるものが少なくない。たとえば、精神科医やカウンセラーになりたいという高校生たちは、「どうしてそう思うようになったか」という理由としてまず自分自身の家族関係、友人関係の悩みを率直に述べたあとで、「この経験を生かして、苦しんでいる多くの人たちの手助けをしたい」と言う。自分の現実の経験や思いと夢や理想とが、すんなりつながっているのだ。
ところが大学生になると、自分の思いと現実とのあいだには大きなギャップがあることに気づかされることになる。しかも今どきの大学生は妙なマーケティング感覚を持っていて、自分が世間でどれくらい通用する人間なのかを、常にシビアに“値踏み”している。「それはカウンセラーとかになって人助けできればいいけれど、臨床心理の勉強もむずかしいし就職口もないみたいだし、ジブンには無理ですよ」。そのことばに間違いはないのだが、若者には「どうしても夢を実現させたいのです!」とストレートに自分の気持ちを語ってもらいたい気もする。
それにしても、高校時代には「こうしたい、なりたい」と率直な思いを持っていたはずの子が、いったいどこで「どうせ私なんて」と自分に見切りをつけるようになるのだろうか。大学入試のときなのか、それとも入学してから先輩たちに「この大学にいても就職できないよ」といった話を聞かされるのか…。もちろんすべての高校生が熱くて、大学生は冷めているというわけではないのだが、少なくとも私に手紙をくれる夢いっぱいの高校生が、大学に入って「やっぱりダメだ」と簡単に自分に失望するようなことにはなってもらいたくない。そのためには、高校と大学の教員が連携して、若い人たちの夢が途切れずに育って行くシステムを作ることも必要なのかもしれない。そんなことを言うと、クールな大学生たちには「そんなのただの理想論ですよ」と笑われてしまうだろうか。 |
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【プロフィール】
かやま・りか●精神科医・神戸芸術工科大学視覚情報デザイン学科助教授。1960年札幌市生まれ。東京医科大学卒。学生時代より雑誌等に寄稿。現在も臨床を行いながら新聞、雑誌で社会批評、書評なども手がけ、現代人の"心の病"について洞察を続けている。専門は精神病理学だが、テレビゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。主著に『切ない…。』(青春出版社)、『「愛国」問答』(中公新書ラクレ)ほか多数。
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