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企業最前線!職業人インタビュー vol3
「世の中にないモノ」を生み出して新しい生活を作り出したい
大ヒット中のデジカメ「IXY DIGITAL」を開発
みぞぐち・よしゆき1959年生まれ。1984年、大学院修士課程修了後、キヤノン入社。電子スチルカメラシステムの開発を担当後、デジタルカメラの開発を手がけ、99年から「IXY DIGITAL」の開発チーフに就任。2000年5月、初代の「IXY DIGITAL」発売。
(2003年6月23日掲載)


―溝口さんはデジタルカメラ「IXY DIGITAL」の開発チーフでいらっしゃいます。「IXY DIGITAL」といえば、サッカーの中田選手を起用したCM、といえばわかりやすいと思います。初代から最新機種の「IXY DIGITAL 400」まで、大ヒットしていますね。

 ありがとうございます。

―大ヒットのポイントは。

 「IXY DIGITAL 400」は、初代と同じカードサイズながら、400万画素、光学3倍ズームレンズ搭載、かつ約185gという軽量、などといったところが評価されていると思います。

―デジタルカメラは、日本が世界で圧倒的に高いシェアを持っている製品で、国内の各メーカーがしのぎを削っています。「IXY DIGITAL」の開発チーフに就任した当時は、キヤノンはデジカメには出遅れていたとか。

 その通りです。当時、そして現在もキヤノンはフィルム式のカメラではトップブランドですが、99年のデジカメ市場シェアでは、富士写真フイルムさんとオリンパス光学さんの2社で60%を占めていたのに対し、キヤノンは3%に過ぎませんでした。

―それが「IXY DIGITAL」などで現在では20%前後を占めるまでに。開発にはどういったご苦労があったのでしょうか。


 キヤノンが手がけるからには、デジカメでもトップになりたい、という思いは当然、ありました。その手段の1つとしてIXY DIGITALでは、高性能のままさらに小型軽量化する道を選びました。それがここまで受け入れられるという確信はなかったのですが。当時、私は業界で最小・最軽量のデジカメを開発中だったんですが、さらに「その半分のものを作れ」と上司から命令されました(笑)。

―うわっ!それだけでも大変さが想像できる気がします。特に大変だったことは何でしたか。

 レンズの開発と電池まわりですかね。小さくするだけなら簡単かもしれませんが、それで満足できる性能を出すことが難しいんです。部品のサイズだけではなく、いかに消費電力を下げるか、駆動スピードを上げるか、などといったことはソフトウェアやメカの出来で大きく変わりますので、どこまで性能をアップさせることができるか、全体的に追求し続けるしかありません。

―日々、暗中模索といった感じですか。

 そうですね。どこまでできるものなのか、やってみないとわからないのです。あと何カ月かければどれだけできるのか、もわかりません。限界といったものが見えない。作っては改良、作っては改良、の繰り返しですね。通勤時間はもちろん、休日、家でくつろいでいるはずの時でも、頭の中にミリ単位の数字が浮かんでくるんです(笑)。

―正解のない世界、ですね。もっと緻密な計画があるものかと思っていました。

 いえいえ。どこまでやればいいのか、という答えはないんです。もちろんビジネスですから、一応、到達目標を定めて、生産計画を立て、でき上がったものを市場に出しますが。それでおかげさまで売れて、ようやく答えがわかったかな、といった感じですね。


―それで顧客の声や評価、競合製品などをもとに、さらに後継機種を開発していくわけですね。

 はい。よほどのイノベーションでもない限り、そうやって地道に進化させていくしかないでしょうね。最新機種の「IXY DIGITAL 400」は、高品位の性能と操作の簡単さをどうバランスさせながら高めていくか、といったことが開発のテーマになりました。

―ところで、溝口さんのキヤノンへの入社動機をお聞かせください。

 世の中にない商品を作りたかったんです。当時、キヤノンでは電子スチルカメラを手がけていましたが、まだ世の中になかったので、これをやりたい、という思いが動機になりました。

―新製品開発に携わりたい、と。

 大学では工学を専攻していたこともあり、当然、メカには興味はありました。ちょうどその頃、ソニーさんからウォークマンが発売されたんです。強いインパクトを感じましたね。これは凄い、と。すぐに買って使ってみると、とてもいい。気がつくと毎日使っているわけです。ウォークマンができる以前には、歩きながら音楽を聴くなんて思いもよらなかったわけですが、こんな小さな製品一つで、人の生活を変えることができる、文化を生み出すことができる、と実感しました。また、そのことに技術を専攻する者として感動を覚えたんです。それ以来、自分の職業志向がはっきりしたような気がします。

―なるほど。ではそのソニーに入社しよう、とは思われなかったんですか。

 そこは天邪鬼というか(笑)。ソニーに入りたい、という人はたくさんいましたし、ウォークマンはすでに世の中にありましたから。
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