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保護者のための子どもの進路相談室
保護者の皆さまから、お子さんの進路に関するご相談を募り、リレーエッセイ でおなじみの飯田高明氏・香山リカ氏と、『キャリアガイダンス』編集長が回答いたしました。多くの保護者の方に共通する相談内容を選んでご紹介します。 ご参考にしていただければと思います。
思春期の男の子(高校2年)を持つ母です。反抗的な態度に悩んでいます。反抗期の子どもへの立ち向かい方、言葉遣いのヒントがいただければと思います。(高校2年男子・母)
最近は、高校生なのにまったく反抗期もない、という子も多いようです。「うらやましい!」と思うかもしれませんが、実はこれが問題。芽生え始めた「自分らしさ」を死守するため、親のちょっとした言動にも反発してしまうことが原因となって起きる思春期の反抗期は、おとなになるためには欠かせないもの。それがなければ、たくましい「自分らしさ」も育ちません。
 とはいえ、"思春期の嵐"まっただ中の子どもを持つ親は、どう対処してよいか、と悩んでしまうでしょう。大事なことは、ふたつ。まず、「子どもの主張、意見をよくきいてあげること」。つまり、「あなたをひとつの人格として尊重しているよ」ということを、態度で示してあげるのです。でも、だからと言って子どもの言いなりになる必要は、まったくありません。ふたつめに大事なこと、それは「遠慮しないで、親も言いたいことを言うこと」です。「子どもにきらわれたらどうしよう」「なんでもハイハイと従ったほうが簡単」と、はれものに触るような態度で接すると、芽生え始めた「自分らしさ」はおかしな方向に成長してしまう。「何言ってるんだ、ババァ!」「その口のきき方は何!深夜のバイトなんて、わが家の方針では絶対許せません!」とバトルになったとしても、いいではありませんか。もちろん、うわべだけの注意や叱責は子どもに見破られてしまうので、ここは親も真剣になって、「これだけは言わなきゃ!」と子どもと対峙してみてください。
高校3年ともなると母親に相談ということはしなくなるようです。けれども、傍からみていると、地に足のついた建設的な考えではないところで進路を決めるようで心配です。(高校3年男子・母)
「地に足のついた建設的な考えではないところ」というのは、たとえばどんなことを指すのでしょう?「ラクだからこの大学に行く」といった夢のない安易な態度のことでしょうか、それとも逆に「ミュージシャンになって全米デビューを目指す!」といった夢見がちな態度のことでしょうか。
 もし前者だとしたら、それは今の子ども全体に見られる傾向のようです。ただ、私も大学の教員をしているのでよくわかるのですが、ただラクだというだけではこの時代、大学は生き残っていけません。高校生からは「あの大学、適当にやっていても卒業できそう」と見えても、大学はそういう子たちにも夢を与え、就職先を探す意欲を与えることができるよう、あれこれと創意工夫をしています。だから、それほど心配はいりません。
 それから後者の場合、それはもう、「夢を持てない子どもが多い時代、いくら建設的には見えなくても、夢を持てるだけですばらしい!」と手放しでほめてあげたいくらいです。そういう夢や意欲があれば、もしその先でつまづいても、きっと自分の力で立ち上がることができるはず。
 しかしそれよりも問題なのは、「母親に相談してくれないから」とそのままあきらめているような親の態度なのではないでしょうか。「学費出すのは親なんだから、自分の考えをきちんと説明する義務があなたにはあります!」と子どもに迫るくらいのパワーを、まず親が持ちたいものです。
先日学校の進路説明会があり、2年生の間に志望大学を決めるようにいわれました。子どもは他県の私大を希望しているようです。希望はかなえてやりたいのですが、親から見ると向いていないようにも見えます。また自宅外私大ともなればお金の心配もあります。どこまで子どもが真剣に考えているか、単に憧れなのかわからないので、困っています。(高校2年男子・母)
志望大学を早くから決めることは、受験対策の面からみてもよいと思います。ただ、高校2年生の段階ではピンとこないのも現実です。私も、「獣医になりたい」「医者になりたい」などの憧れはよく聞くのですが、「○○大学○○学部!」とはっきり答えることのできる塾生はかなり稀です。これは無理もないことで、各大学の情報や、受験の状況など、志望大学を判断するデータが足りないのです。広告で大学ガイダンスやオープンキャンパスの情報など見たら、さりげなく参加を勧めてみたり、ゆっくりとコミュニケーションをとってみてはどうでしょうか。その会話の中から、息子さんに向いている大学や学部を模索することができると思います。息子さんは他県の私立大学を志望しているようですが、当然家計を圧迫します。参考までに、「東京の私立大に入学した場合の」「自宅生と自宅外生」の費用の違いは、大学生協連調べによると、

  自宅生 自宅外生
 大学入試までにかかった費用 1,361,800円 2,462,000円
 1ヶ月の生活費 60,640円 134,180円

という違いがあります。この現実を知らせて、真剣さを問うのも必要ではないかと思います。何にせよ、情報不足の解消に努めれば、道は開けると思います。
子どもにとってどんな大学を選べばよいでしょうか、基準のヒントをください。(高校3年女子・母)
日本には多くの大学があって判断しづらい気持ちはよくわかります。まず、娘さんが何をやりたいのか、何に興味をもっているかが問題となります。当然、受験で勝つだけの学力もついてまわります。その兼ね合いで大学や学部は概ね絞り込めてきます。ただし、各大学には当然特色があって、偏差値が低くても、高度な研究を行っている「穴場」みたいなものもあります。また、同じ学部でも、大学によって専門分野が分かれている場合もあります。例えば、「○○大学の生物学ではほ乳類を扱っているが、は虫類は扱っていない」という具合にです。受験という試練を切り抜けてきた学生が多く、学生どうしで切磋琢磨できるという意味で、受験偏差値は重要な基準になりますが、各大学の専門性もよく調べて選べばよいでしょう。なお、受験に必要なあらゆる情報を入手できるホームページがありますので、ご紹介しておきます。参考にしてください。
河合塾Kei-Net(ケイネット) http://www.keinet.ne.jp/keinet/
リクルート進学ネット http://shingakunet.com/
仕事と学問と大学の学部・学科の関連がよくわかりません。どうすればいいでしょうか。(高校1年男子・母)
大学の学問は、医学や薬学など将来の仕事を前提としたもの、農学や経営学など、直接には仕事に結びつきませんが、仕事に役立つもの、理学や文学など仕事を前提にしないものなど多種多様です。企業では、大学卒者に対して、研修など企業教育を徹底しますので、研究職を除けば、あまり仕事と学問を関連づけなくてもよいようです。研究職は別で、専門性がかなり問われます。この場合、大学院へ進学して専門性を高めていた方がよいようです。まず、息子さんがどのような職種につきたいか、どのようなものに興味があるかをよく話し合ってください。自然に大学・学部・仕事を絞ることができると思います。
大学の入試のしくみがよくわかりません。子どももわかっていない気がします。それでよいのでしょうか。親として何をすればよいですか。(高校2年男子・母)
大学入試は、国公立大学と私立大学で大きく異なります。国公立大学では、まず、一次試験として、「センター試験」があります。これは、英語・国語・数学・理科・地歴公民の分野から幅広く出題される試験で、マークシート方式(すべての問題が選択式)です。その後、二次試験があります。文系では英語・国語・地歴公民、理系では英語・数学・理科が課せられる場合が多いです。そのほとんどが記述式です。場合によっては面接や小論文が課せられます。なんにせよ、多くの科目をこなす力が要求されます。私立大学では、試験は一回きりで、国公立大学よりも受験科目は少なく、2科目〜3科目を課せられる場合が多いです。親御さんが悩まれるのも無理はなく、大学受験は年々多様化の一途を辿っています。まず、息子さんの進路がある程度絞り込まれた時期に、息子さんと一体となって、高校や予備校などから情報を収集することをお勧めします。
最近の大学はAO入試を実施しているところも多いと聞きます。AO入試を視野に入れながら、どう受験勉強を進め、進学先を絞っていけばいいのか、悩んでいます。(高校2年女子・母)
毎年、夏頃がピークになるのですが、塾生にAO入試のアドバイスを行っています。AO入試では自己推薦書を書かなくてはなりません。毎年、塾生が苦労するのは、「大学でどんな研究がしたいのか」「自分の将来像」「なぜこの大学を選んだのか」「自己アピールできるものは何か」などです。その労力は大変なもので、自己推薦書を書くために多くの時間を割くことになります。AO入試は、ふと思いついて合格できるほど甘くはありません。本人の独創性、将来性、発展性を大学が買うのです。
AO入試を視野に入れるのであれば、本気で取り組む必要があります。本人が大学でやりたいことを具体化できるだけのデータ収集、独創的でしっかりした内容を文章に的確に記す努力を早めに行うことです。早めに行えば、他の勉強を中断せずに受験対策を平行して行うことができます。また、AO入試では受験する大学の特色などをよく調べておくことも重要です。その過程で自分に合った大学選びも果たせることでしょう。
高校2年の息子には「自分の好きなことをやりなさい」といっていますが、本心は長男なので、家業を継いでほしいのです。大学進学を考えていますが、家業に学歴は関係ありません。大学では一般的な見識を深めたり、幅広い人間関係の構築に役立てば…と思っています。単に家業を継ぐのであれば、経営学あたりの文系に進学するのが妥当だと思うのですが、彼の好きなことはコンピュータで理系です。3年生でのクラス分けを考えなければいけない時期ですので、文系と理系では授業内容も随分違うと思い、今、とても悩んでいます。(高校2年男子・母)
家業を継ぐかどうかという問題は、私の実家も自営業でしたので、よくわかります。お母さんの言われる通り、大学は、見識を深めたり、幅広い人間関係の構築に役立ちます。でも、その視点に立つのであれば、文系・理系はあまり関係ないのではないでしょうか?私は大学では理系に進んだのですが、「専門馬鹿」になるのが怖くて、積極的に文系科目を履修しました。要は、本人が大学で何を学ぶべきかだと思います。息子さんは、コンピューターが好きだとのことですが、多くの受験生が無趣味で目的が定まらない中、好きなものがあるのは良いことだと思います。文系への進学が本人に向いていない場合、大学の4年間が悲劇になります。家業と大学は切り離して、文系・理系、どちらが向いているかをよく話し合ってください。
子どもの希望の仕事はいま花形のゲーム関係ですが、一生の仕事として続けていける能力のある人は一部でしかないと思います。資格を身につけられる進路を親としては希望しているのですが……。(高校3年男子・母)
そうですね。そう思っていらっしゃるお気持ちをお子さんにお伝えになっていますか?
心配なので反対する、というスタンスではなく、「こう心配しているんだけど」と持ちかけることで、「本当に一握りの人しか活躍できない世界なのか」「それを自分で調べているか」「そのうえで覚悟しているのか」、あるいは「業界全体や職種の広がりなどまで把握したうえで可能性を感じているのか」など、お子さん自身がその職域の難関度をどれだけ知って、そこに向けてどれだけの意欲をもっているのかを、率直に話し合えるといいですね。そして親としては当然な「安定した進路への希望」を口に出されてもまったくかまわないと思います。幸せになってほしいからの発言なのですから。「刺激的な道で苦労してみたい」と答えるかもしれませんし、内心では本当に大変そうだからもう少し考えようと思うかもしれません。親の希望を理解しつつ、自分の道を現実的に考えていく……、親子の会話をぜひそんな過程のスタートにしてください 。
息子の頭に浮ぶ職業が、あまりに狭い範囲の中でしかないことが気になってます。将来なりたい自分の姿を思い描けないと選びようはないのでしょうか。親としてだけでなく、大人の役目として、様々な職業についている方との交流の機会や、職業体験をさせてやりたいと思っています。(高校1年男子・母)
具体的に職種名を将来の目標としてあげられる……こんな高校生は進路意識がしっかりしているとほめられそうですが、それがたまたま目や耳にした職業に限られ、しかも実はそれほど内容を知らなかったり、ということは確かに多いですね。ぜひいろいろな経験をさせてあげていただきたいです。そのときに、さまざまな職業を知る、つまり仕事内容を知る、のはもちろんですが、それ以上に、仕事をもった大人がどんな気持ちでどんなことに取り組んでいるか、を肌で、気持ちで知るような出会いであってほしいと思います。さらに、その仕事が社会のなかでどんな役割をもっているかなどの視点も取り入れてあげたいですね。「この仕事そのものは自分はとてもできないかもしれないけれど、この人が目指しているようなものを自分ももちたい」「社会でこんな役割を果たす仕事を、自分もぜひやってみたい」。そのままの将来モデルを思い描くより、何にこだわって仕事をしていきたいか、職業選択以前にそんなことを考えさせる働きかけを、ぜひ親も社会人もしていきたいものですね。
まだ自分の性格、好きなこと、将来してみたいことを把握していないような気がしています。そんな状況で目標を見つけることができるのでしょうか。心配です(高校1年女子・母)
見守る側としては、「きっちりと自己分析をし、将来のプランを設計して目標を立てなければ」と順序だてて気をもんでしまいますよね。でも、同時並行でよいのではないでしょうか。高校生には、自分はどんなことをしているときが楽しいか、しっかり確かめながら、どんな方向に進んでいきたいかを、すぐには見つけられなくても真剣に考え続けていく、そんなプロセスこそ大事です。まずは、今送っている「高校生活」のなかで、彼女がかんばっていることは何か、どんなところにその魅力があるかなどの話をしてみてはどうでしょう。授業や部活や友人との関係などさまざまな活動を現実に行っている毎日の生活のなかにこそ、「自分」も「将来」も実は含まれています。話しながら、彼女自身がはじめて気づくこともあるはずです。また、知り合いや親戚の方など、娘さんに刺激になりそうな大人と出会う機会などをアレンジしてあげて、娘さんの生活のなかに、彼女にピンと響くような、なりたいもの、やりたいことへのヒントを増やす努力をしてみてはと思います。もちろん家族のなかでの会話にもそれはあるはずです。
不況の中、果たして進学しても就職できるか心配です。(高校2年女子・母)
本当ですね。いまは保護者の方も高校生も同じ不安を抱えている時代ですね。
ここに進学すればだいじょうぶと太鼓判を押される進学先もなければ、進学せずに就職するのももっと難しい。さらにいえば、いったん就職したからといって一生安泰ということなどもありえない……こんな時代にできることはどんなことでしょう。それは就職のことだけを考えた進路選択をしないことだと思っています。そして先を読もうとばかりしないことです。将来の職業や就職のこと、そして今後の社会の見通しは、進路選択を考えるうえでもちろん欠かすことのできないものです。十分に研究したいです。でも、そのことだけ考えた進路選択はその時点で本人にとってそれほどよいものとは思えません。何があったとしても「自分で選んだ道だから、まっ仕方ないか」と思えることや、「よし、今選べる選択肢のなかで自分がぎりぎり許せるものをキャッチしよう」という心持ちや力を備えておくことのほうがずっと重要な時代に、実はなっているのです。自分が納得できる、他人のせいにしない、損得勘定だけではない、そんな進路選びをして、とお子さんに伝えてあげてください。
子どもの希望する進路がこの先不安になってきたときに対する親の対応に不安を感じています。今の時代にそったアドバイスができるか、将来就職するのに有効な教育科目、知識の習得を進められるか、自信がありません。(高校2年女子・母)
具体的に有効な情報提供や方向決定のアドバイスをしようとなさっていますか?
専門家であるキャリアカウンセラーもそこまではしません。この時代先を見越して「こっちがいい」「これがいい」と薦めることの難しさをキャリアガイダンスにたずさわる人間は皆感じています。
ご存知の限りの知識を伝えてさしあげるのはもちろん素晴らしいと思いますが、保護者の方がいままで不安に直面したときどう対処し、乗り越えてきたか、そんな経験を話してあげてはいかがでしょうか。そしてどんなときも応援してるよ、という気持ちを伝えてあげてください。人間は味方がいると元気が出ます。家族くらい最強の応援団はないと思っています。
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