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リレーエッセイ 高校生のココロ
(2003年9月22日掲載)
 夏休みも終わり、予備校では本格的に受験戦争に突入した。模擬試験の結果を見て、塾生もようやく大学との距離感、現実とは何かがつかめてきたようだ。

 私は、二学期の最初の授業を楽しみにしている。塾生の顔が見違えるほど大人っぽくなるからだ。その顔からは、一学期に見られた無邪気さが消えている。「夏休みの間に苦労したんだなあ」そんな雰囲気を表情が物語っている。塾生の顔は、私の夏バテなど消し去り、私に俄然やる気を吹き込む。「受からせてやりたい」「なんとか苦労を軽減してやりたい」そんな気持ちにさせてくれる。

 しかし、喜んでばかりもいられない。受験が近づくにつれ、受験生のストレスは増大している。この時期になると、塾生から聞こえてくる声に余裕がなくなってくる。「睡眠はどれくらいとったらいい?」「頭がボーっとするんだけど、休んでる間に他の子に差をつけられてしまう」「不安で食事が喉を通らない」どうも受験生というものは極端に走るようである。私が最も塾生に気をつかっているのもこの時期である。塾生の中には、この時期に頑張りすぎて受験間際に息切れしてしまう子、不安ばかりが毎日続き、勉強よりも悩んでいる時間が多い子など、多種多様な症状が出てくる。

 受験生は、この時期までに多かれ少なかれ模擬試験を受けている。その結果を見て、「このままでは合格できない」「苦手科目の成績が悪すぎる」まざまざと現実を思い知る。「偏差値」というものはとかく悪玉扱いされがちだが、全国にいるであろう「敵」と自分の差を知るには最もてっとりばやい。この「偏差値」によって受験生が真剣に勉強してくれる。模擬試験を多く手がけている私としては嬉しい限りである。だが、「偏差値」は諸刃の剣であり、受験生を窮地に追い込んだり、場合によっては、やる気そのものをふきとばしてしまう。

 このような状況を理解してやらないと、アドバイスそのものが受験生をさらに追い詰める結果となる。「もっと必死でがんばらなきゃ」とは最悪のアドバイスである。受験生は頑張っているのだ。どう頑張ればよいか、目標に辿りつくためにはどうしたらよいかなど、少し背中を押すくらいがよいようである。
この一番危うい時期を切り抜けると、受験生の腰が据わる。「やるしかない」この声が出だしたら立派な大人だと思う。一学期からは想像もできない強固な意志を感じる。こう考えてみると、受験というものも悪くはないなあと思う。
金井壽宏

【プロフィール】
いいだ・たかあき
河合塾講師1968年三重県に生まれる。広島大学教育学部(理科)卒業後、同大学院理学研究科博士課程に在籍中の1995年より、河合塾広島校で生物を担当。2000年より、東京地区へ移籍し、現在、東大オープンや全統マーク模試をはじめとする模擬試験やテキストの執筆を手がけ、東京と広島を毎週往復し、生物の講義を行う。人気、実力ともに高い評価を得ている名物講師*著書に「こだわって!国公立二次分野問題集(河合出版 小畑成美・前田真共著)」がある。

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