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リレーエッセイ 高校生のココロ
(2003年10月14日掲載)
 若者といえば「希望」「夢」の代名詞。…と言われていた時代はとうに過ぎたようで、今は若い人の元気のなさややる気のなさばかりが話題になっている。

 書店を見ても、『若者はなぜ「決められない」か』(長山靖生、ちくま新書)、『若者はなぜ怒らなくなったのか―団塊と団塊ジュニアの溝』(荷宮和子、中公新書ラクレ)、『若者が「社会的弱者」に転落する』(宮本みち子、洋泉社新書y)といったタイトルの本ばかりが並んでいる。いったいいつから、若者は決められない、怒らない存在になり、次代を担う力から弱者にまでなってしまったのだろう。

 もちろんこの背景には、経済を中心とした社会状況の悪化が大きく関係している。たとえ希望を持って一生懸命、勉強したところで、就職先すら見つからない。就職できても今度は倒産やリストラが待っている。そういう状況の中で、「さあ、がんばればきっといいことがあるよ!」と若者を励ますことなど、とてもできない…。そう思って自信を失っている大人も多いはずだ。

 とはいえ、若者の本来のエネルギーや可能性までがなくなったかというと、それは違うと思う。失恋した友だちのために徹夜で相談に乗る、ライブに行くために夜行バスで遠くまで出かける、といった情熱やパワーは昔と変わらない。ただ、その行き場が「勉強」「就職」「社会参加」といった生産的な方面、自立を目指しての方面に向かいづらくなっているのだろう。

 では、私たち大人は、どうやって彼らに「そのパワーをポジティブに使おう」と促せばよいのだろうか。これは、進路や就職活動だけにとどまらない、大きな社会問題だ。

 いちばん大切なのは、大人が建前だけでモノを言うのをやめることだろう。「頑張って受験勉強しなさい」「勉強して何になるんですか?」「…うーん、とにかく勉強はしなければならないんだよ!」といった場当たり的な指導では、若者はますますやる気を失ってしまう。ここは「たしかにこの時代、良い大学に行くことだけがすべてとは思わない。でも、勉強以外に今すぐキミの可能性を見つけて道を示すことは、私にはできないんだ。とにかく私にできることは、キミの適性と実力からこの大学を目指しなさい、と指導するだけだ」。いささかやりすぎかもしれないが、これくらいの誠実な態度でもいいのではないか、と私は考えている。
香山リカ

【プロフィール】
かやま・りか精神科医・神戸芸術工科大学視覚情報デザイン学科助教授。1960年札幌市生まれ。東京医科大学卒。学生時代より雑誌等に寄稿。現在も臨床を行いながら新聞、雑誌で社会批評、書評なども手がけ、現代人の"心の病"について洞察を続けている。専門は精神病理学だが、テレビゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。主著に『切ない…。』(青春出版社)、『「愛国」問答』(中公新書ラクレ)ほか多数。
ホームページ:
http://www.caravan.to

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