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最前線!職業人インタビュー vol7
いつも現場に身を投じたい
元・少年鑑別所教官のジャーナリスト
くさなぎ・あつこ元・法務省東京少年鑑別所法務教官。その後、地方局アナウンサーを経てブルームバーグL.P.に入社。テレビ部門アンカー、ファイナンシャル・ニュースデスクを務める。退社後は経済や少年犯罪、イラク問題を中心としたジャーナリスト活動、講演活動を行う。現在は「文藝春秋」「週刊文春」「Web現代」等に政治・経済・国際問題を取り上げて取材・執筆中。その他、朝日ニュースター「愛川欽也 パックイン・ジャーナル」に出演中。著書に『レイラの終わらない戦争』(光文社)、『完全版 ペイオフ対策』(角川書店)がある。
http://www.topcoat.co.jp/journalist/kusanagi/
(2003年11月25日掲載)
※インタビュー:2003年9月4日

―草薙さんは、2003年2月15日から2週間、イラクに取材に行かれ、5月下旬に『レイラの終わらない戦争』を出版されました。帰国して20日後に戦争が始まり、2週間で終結宣言は出されたものの、戦闘状態は続いています。現地の人との交信などはあるのですか。


 つい先日、レイラから電話があったんです。執筆した本のタイトルにもなったレイラとは、イラクで私たち取材スタッフの通訳兼イラク政府の監視員を務めた40歳の女性です。彼女は主婦であり、バグダッド大学でスペイン語を専攻している学生であり、ボランティアで通訳や監視員もやっていました。イスラム社会にもこんな女性がいるのだ、と驚き、偉いなぁ、がんばってほしい、と思っていたんです。戦時下で、普通の女性がどんな気持ちで過ごしているのかを取材したかった私は、どうしても自由に行動したくなって、監視員である彼女に無理をお願いすることばかりでした。彼女は困惑しながらもできる限り私たちのリクエストに応えてくれました。イラクで彼女と別れてから、開戦前夜にEメールをもらったきり、連絡が取れず心配していたのです。

5カ月ぶりの連絡ですね。

 ええ。でも電話口の彼女の声はまるで別人でした。そして、「あなたが知っているレイラではない」。「今回は心までやられた」と言っていました。彼女にとっては3度目の戦争でしたが、街中には死体がころがり、彼女の通っていた大学の図書館は跡形もない状態だそうです。夢や希望など、持てる状態ではないのでしょう。ただ、ただ、疲弊している様子が伝わってきました。私には、日本という平和な帰る場所がありましたが、レイラにはイラクしかないわけです。やりきれない思いです。

―開戦前とはいえ、危険なイラクによく行こうと思われましたね。

 たまたまチャンスをいただいたので思い切って行こうと決心したのですが、尋常な神経では行けないですよ。生命が直接脅かされる初めての経験でしたから。「もしかしたら…」と思って、戦争保険をかけ、生命保険額を増やしました。経験したことがない恐怖感を味わいましたが、今思うと行ったからこそわかることってあるんですよね。


―どんなことですか?

 イスラムという、私たちとは全く違う世界とはいえ、根本のところで「戦争はしたくない」という思いは一緒だったのです。戦争を回避したいという思いが伝わってきました。それと、やはり実際に行くと行かないとでは、問題の捉え方が全く違ってきます。自衛隊派遣を議論している政治家や官僚などの大半はイラクになんて行かないでしょう。すごい保身を感じますね。小泉さんが行けばいい(笑)。

―イラクのほかは、どういったお仕事をされているのですか。

 いま手がけているテーマは大きく3つあります。経済と少年犯罪、それにイラク問題が加わりました。経済については講談社のインターネット・マガジンの「Web現代」に連載しています。少年犯罪については、かなり衝撃的な内容を取材中です。ぜひ読んでいただきたいと思います。また、「わが子を『犯罪者』にしないための『ゲーム脳』研究」を週刊文春で連載し、さらに続けて、少年問題の連載が始まりました。特異な少年犯罪が多発していますので、この原因は何かということを突き止めたいと思っています。

―以前、少年鑑別所で教官をされていたご経験を生かされている。

 そうですね、少年犯罪の基礎的なことはわかっていますから。ただ、私が鑑別所で教官をしていたのは15年ほど前になりますが、当時と今とでは、送致されてくる子どもは違う感じがします。では環境的に何が変わったのか、といったら、やはりテレビゲームなんです。

―ゲームが、ですか。

 ええ。でも私はゲームそのものをヒステリックに否定するつもりはありません。要は、周囲とのコミュニケーションに問題があるんだと思います。最近の凶悪な少年犯罪の背景には、少子化があります。一人だから、かけるお金も多く、子どもをペット化してしまう。ペットだから自分の思うまま、というばかりに母親は子どもに過干渉になる一方で、父親は不在です。ゲームを持っていないと仲間外れにされてしまうから、と親はゲームを買い与える。親の責任が一番大きいと思いますね。


―家庭が犯罪を生み出している…。

 長崎の駿ちゃん事件の犯人の子の家には、ゲームが天井に届くほどあったそうです。その母親は子どもの通う小学校を何度も変えた。子どもは親にいい子を装うものですから、親は子どもがおかしいことに気づかなかったようですが、周りはみんな気づいていた。親が悪いのは、15年前も今も同じです。親、しっかりしろよ、と言いたいですね、本当に。

―家庭だけでなく、学校にも問題がありますか。

 ある校長先生が、「いまの学校では組み体操ができない」と言っていました。親が危ないからやめろと言ってくるのだそうですが、クラスでみんなが協力して何かを成し遂げるということが非常に難しくなっているそうです。こんなことでは協調性が養われないと思います。「個性化」が一人歩きして、一人ひとりが自分勝手にやればいい、といった感じになっているのでしょう。しかし、協調性の上に、はじめて個性が花開くのではないでしょうか。いま、自分は特別、自分だけよければいい、という風潮になっていると思います。だから、誰でも傷つけていい、となってしまうのではないでしょうか。とんでもない話です。

―どこに原因があると思われますか。

 教育制度を決めている官僚の方々は、もっと底辺にいる人のところまで降り立ってみるべきではないでしょうか。そんな経験をしたこともない人が、机上で決まりごとを作っているからうまくいかないという面もあるのでは。先生も、企業に勤めるなどして社会経験を積んでからなったほうが、世の中からどんな人材が求められているかがわかっていいのではないかと思います。

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