いよいよ入試が近くなってきた。センター試験、私立大、国公立大入試と体力勝負の時期である。
塾生に接して思うのだが、年を経るごとに、「競争社会に強い子」「競争社会に弱い子」がはっきり分かれてきているように思う。「自分が年寄りくさくなってきているだけ?」と自問自答するのだが、他の講師からも同様の意見が鳴り止まない。
我が予備校では数多くの模擬試験を実施しているが、塾生が模試の成績を見たときのリアクションは大きく二つに分かれる。「数学の成績が悪かった。数学さえできれば何とかなるから、今度は頑張る」「数学の成績が悪かった。もう数学はダメだ。志望校のランクを変えたい。学部を変えてもいい」前者と
後者では天と地との開きがある。前者は「競争社会に強い子」、後者は「競争社会に弱い子」である。
「競争社会に強い子」に話を聞くと、中学・高校とクラブ活動を頑張っていた子に多い。「他の子も頑張っているんだから自分も頑張る」「他の子には負けられないよ」「ここまでやって負けたら悔しいじゃん」クラブの厳しい練習や大会などで培った精神力がこのような言動になっているに違いない。悩み事の相談を受けても「愚痴」「弱音」は少なく、嬉しい限りである。
さて、問題は「競争社会に弱い子」である。「もうやっても無理」「他の子と比べないで、頭悪いんだからさあ」「だいたい受験なんてなんであるのさ」「高校の進路指導が遅いんだから仕方ないじゃん」…すぐあきらめてしまう。こんな子が年々増えてきている。よく聞くと、大抵は今までたいした競争にぶつかったことのない子である。
よく考えると「仕方ないかな」とも思う。子ども達は、受験という競争社会に突入するまで、「勝つ」「死に物狂いで成し遂げる」という機会が少なくなってきたように思う。テレビや新聞の報道でよく目にするが、小学校の運動会で順位を競わない、演劇は全員主役、学校の成績は順位ではなく目標到達度がわかるしくみに変更…。競争の経験といえば、もはや「お受験」、クラブ活動くらいしか思いつかない。「教育現場」の立場や取り組みには当然理由があり、そのことに異論を唱えるつもりはまったくないが、こと「受験」の一点だけから見ると、あまりにも競争経験が少ない子が増えすぎた。受験は一発勝負の弱肉強食のとても嫌な世界である。これが現実である。
子ども達の「競争に向かう状況」が二極化している。でも大人の競争社会は激化の一方だ。このギャップが年々開いており、受験生にとって受験そのものが大きな大きなハードルとして立ちはだかっている。これをどう埋めるかが課題である。果たして我が塾生は乗り越えてくれるだろうか。心配の種は尽きない。やはり年寄りくさくなったのか…。
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| 【プロフィール】
いいだ・たかあき●
河合塾講師*1968年三重県に生まれる。広島大学教育学部(理科)卒業後、同大学院理学研究科博士課程に在籍中の1995年より、河合塾広島校で生物を担当。2000年より、東京地区へ移籍し、現在、東大オープンや全統マーク模試をはじめとする模擬試験やテキストの執筆を手がけ、東京と広島を毎週往復し、生物の講義を行う。人気、実力ともに高い評価を得ている名物講師*著書に「こだわって!国公立二次分野問題集(河合出版 小畑成美・前田真共著)」がある。
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