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最前線!職業人インタビュー vol9
アメリカ留学で挫折、大きな転機に

―松本さんはどんな高校時代を過ごされましたか。

 無軌道でしたね(笑)。高3になっても、ロクに授業にも出ずに、喫茶店に行ってタバコを吸いながらマンガをよむ、といった日々でした。一駅隣にすればいいものを、こともあろうに校門のはす向かいの雀荘に入ってマージャンしているところに先生に踏み込まれて、どんな処罰を受けても文句が言えないという白紙委任状まで取られた(笑)。卒業式の日は、先生が学校にいないことをいいことに、教室で酒盛りしたり。酒は幼稚園のころから梅酒の原液を飲んでいたくらい好きで(笑)、中1のときのスキー学校で酒飲んでいるところを捕まって始末書を書かされたり。そんなことは学校始まって以来だったそうです。

―……。ご両親は何と。

 何も言われなかったですね。親は、人に迷惑をかけることと、イエスマンになることだけは絶対に許しませんでしたが、それ以外は放任でした。自分としても、モノを盗むとか、人を殴るなどの不良行為をしていたわけではない、という自覚はありましたから。

―そういった無軌道さで、得られたものとは(笑)。

 一緒にバカやった友達という財産を得られたことでしょうね。同じ行動を共有することで理解し合えるネットワークができる価値はあったと思います。そういった友人は、困ったときに利害など関係なく助けてくれる。もちろん、こちらもそんな友達は何をおいても助けますし。

―それでも、勉強して東大の法学部に合格された。法学部を選ばれた理由は。

 特にないです。父が文IIIでしたので、じゃあ文Iにしようと(笑)。そもそもは医者になりたかったんです。私が小学5年のとき、中3だった兄が病死しました。そのとき、医者や看護婦の姿に感動しましてね。ところが高3になる直前に、『小児病棟』という、障害を持って生まれた子どもを看病するストーリーのテレビドラマを見て、自分にはそんなヒューマニティはない、と思ったんです。こんな自分が医者になったら、医者という職業を汚すことになる、と。それまで理系でしたが、次の日、先生に文転したい、と申し出ました。その時は聞いてもらえたんですが、数日したら「もう間に合わなかった」と言われてしまいました。結局、理系のクラスのままで、文系の科目は選択だったので、例によって喫茶店通いです(笑)。案の定、12月の模擬試験でひどい成績で、考えを入れ替えて2ヵ月間、1日12時間受験勉強をしました。

―何ごとも徹底してやる、と(笑)。ところで、大学時代にアメリカに留学し、挫折した経験をされたそうですが。


 大学3年のときに友人と2人でアメリカに旅行に行き、引きつけられてその後1人でタフツ大学に行ったのです。ちょうどサマープログラムで世界中から学生が集まっていて、食堂やロビーでみんな話をしていました。でも、自分は何を話したらいいのかわからないし、英語が通じない。わかってもらえない、自分を理解させることができないんです。そんなことは生まれて初めてでした。しまいには相手に哀れみの目で見られてしまい、大きなショックを受けました。数日後の午後2時ころ、ハーバードスクウェアを歩いていて、公衆電話が目に入って、思わずコレクトコールで家に電話をしたんです。日本は夜中の3時ということも思い至らなかった。それほど追い込まれていたんですね。結局、3週間滞在の予定を、2週間で夜逃げして帰りました。外資系証券会社に就職したのは、このアメリカでの悪夢を、自分から飛び込んで払拭しようと考えたからです。

―大きな転機でしたね。一方、日本国内で言葉は通じるのに、自分を理解してもらえない、認めてもらえないと同じく追い込まれた状態の人もたくさんいます。

 自分を理解してもらう前に、相手を理解しようという発想の転換ができたらいいんですよね。コミュニケーションはお互いをわかろうとして初めて成立するものだと思いますから。

―なるほど。それでは、今の高校生をどう思われていますか。

 よく、今どきの若者はなってないとか、学力が落ちてどうしようもない、などといわれていますが、私はそうとは思いません。それどころか昔と比べれば、オリンピックの金メダルの数とか、海外のプロスポーツリーグで活躍する日本人選手とか、芸術分野で活躍する人とか、特許を取る人とかは増えていますよね。たしかに、若者を批判しているような世代はかつて世界一の学力を誇ったかもしれない。でも、彼らは一体何を作ったのでしょうか。ただ単に工業生産力を強くしただけではないでしょうか。彼らが、果たして民主的で暮らしやすい社会を作ったと言えるのでしょうか。


―今の高校生は違うと。

 NHKの『真剣10代しゃべり場』という番組にゲスト出演したんです。本物のリングの上で15歳から18歳の高校生たちが「女のリーダーは嫌われるの?」というテーマで言いあうという内容だったんですが、みんな自分の意見をしっかり持っているし、何よりバランスがいいんですね。偏差値一本やり、といったことがなくなって、多様な価値観を持っている。素晴らしいことではないか、と思いました。

―若者を批判するばかりの大人は、自分自身、それだけのことは何もしていない。逆に、若者を認める大人は、自分もそれだけの努力をしている。そんな傾向があるようですね。どうもありがとうございました。

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