| 不登校の経験がある20歳の小説家・金原ひとみさんが芥川賞を受賞して、話題になった。昨年、ある文芸誌のインタビューで金原さんが「生きづらさ、行き場のなさを感じていた」と十代を振り返って語っていたのを覚えている。
彼女と同じ年代の大学生たちに「生きづらさ」について尋ねてみると、意外に多くの人が「共感できる」「私もそういう時期があった」と答えた。ある学生は高校のときに友人関係や進路について悩んだとき、「自分の力じゃどうしようもないんだ」という無力感に襲われ、痛烈な「生きづらさ」を感じたという。「がんばれば何でもできる」「夢は必ずかなう」と教え込まれてきた高校生は、自分の力だけでは変えようもない現実や社会に直面したときに、この「生きづらさ」を覚えるのだろう。逆に言えばそれまでは、少子化の中でまわりから大事にされ、自分の限界を知ることもなく、自由に生きてきたということなのかもしれない。
となると、十代の若者に接する親や教師は、「夢を持ちなさい」と教える一方で、「自分だけの力には限りがある」ということも教えなければならないということになる。ところが、「がんばれ」「絶対できるぞ」と前向きに励ますのは簡単だが、「キミにはできないこともある」「あなたの思うようには社会は動かない」とややネガティブなことを伝えるのは、たいへんにむずかしい。傷つきやすい思春期の若者は、そう言われただけで「おまえはダメなやつだ」と否定されたような挫折感を味わうからだ。
若者を傷つけることなく、なおかつ「キミには限界もある」というメッセージを中学生、高校生のうちに伝えること。それこそが、まさに「それぞれの適性に合った個別の進路指導」なのだろう。「音楽大学に進んでコンサートピアニストになりたい?…うーん、今の実力じゃそれはむずかしいかもしれないけれど、あなたには人をほっとさせるやさしさがあるから、むしろ音楽療法を勉強したほうがいいんじゃないかな」。「それはムリ」と限界を示された上で、「より良い道はこちら」と導かれれば若者はほっとするはずだ。
ある学生が言っていた。「私の高校の先生は、進路相談のときにいくらむずかしい大学名をあげても、ニコニコしながら"自分でよく考えて決めてね"と繰り返すだけ。あれ、傷つきましたよ」。「あなたには無限の可能性がある」というメッセージは、ときに若者を傷つけることもあるのだ。
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