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―小島さんの高校時代はいかがでしたか。
受験に全部失敗して、やっとある都立高にもぐりこんでふてくされていました。不良ということではありませんでしたが、親が厳格で門限が7時半でしたので、夜遊びがしたくて屋根伝いに隣の家に行って脱出する、なんてことも。当時の先生からは、「なんで、あのおまえがいまこうなっているんだ」って言われています(笑)。
―門限が7時半とは厳しいですね。
親がうるさかったのはある意味よかったと思いますよ。父親の会社が家のそばで毎日仕事場を覗いていたのは今考えるとすごく勉強になっています。それから夜遊び防止で毎日お稽古ごとをさせられていましたが、何1つモノになってません。興味がないと能力にならない見本です。自分から好きになったことじゃないものは長続きするはずありませんからね。
―卒業して、当時の三菱銀行に入られました。
20数年前、化粧して髪染めてピアスした高卒の新入行員は私だけでした(笑)。おまけにスキーとサーフィンで真っ黒。支店のベテランの先輩から、「海水浴に行くような格好して銀行に来ないで! お客さまに見られたら困るから着替えてきなさいっ!」って怒鳴られました。
―当時の銀行は堅くて厳しかったのではないですか。
先輩からはコテンパンにやられました。ですから、自分の悪印象をリカバリーするために、一生懸命仕事を覚えていき、先輩からも可愛がられるようになったと思います。そのうち自分が新人教育を担当するようになって、そのときの経験が生きましたね。三菱銀行で7年間教わったことが、いまの自分の原点だと思います。その後結婚退職し、7年間の専業主婦のあと、夫の勧めで仕事を再開する準備をしました。新人教育の経験を生かそうと仕事を探していくうちに、県の職業指導員の欠員があり、資格試験を受けたら合格した、といった感じです。入庁後、これじゃあ教えるには全然足りないとあらためて通信制大学で勉強しました。
―職業訓練校では、その原点はどのように生かせましたか。
若い女の子にOA業務を指導していたとき、卒業間際になると、銀行で教わったあいさつや敬語の使い方、先輩からの教わり方、仕事の段取りのつけ方、やりたいことを実現させるアプローチなど、自分がお局さまを演じてリアルに教えていたんです(笑)。就職した会社からは、「小島さんの生徒はマナーをわきまえ、気働きができ、仕事の覚えが早い」ってほめられました(笑)。
―OA指導の域を超えていますね(笑)。
新人教育をやっているようなものですね。というのも、中小企業は新人教育がなかなかやれていないので、そこまでこっちがやれば即戦力となって就職率も上がりますから。
―職業訓練からキャリアデザインに進んだ理由はどういったことなのでしょうか。
当初は条件マッチングをやっていたんです。生徒には資格を取らせて、自分はどんどん求人を開拓していました。「うちにはパソコンがうまく、可愛くて素直な子がいるんですよ」って具合(笑)。こちらはお墨付きですから、簡単に決まるんですね。でもすぐにやめてしまうんです。「入社して初めて、やりたい仕事じゃないことがわかった」と生徒に言われて、苦労して仕事を見つけてきたのに、自分がやってきたのは就職の押し付けか、とショックを受けたんです。確かに就職させれば一丁上がり、でした。でも、それでは最初の就職がたった数ヵ月、という経歴に汚点を残すことにしかならず、心底申し訳ないことをしたと猛反省したんです。そんなときに、アメリカのキャリアカウンセリングを知った、という経緯です。
―それを日本でも使えるように工夫されたんですね。
当初は手探りでした。一番参考になったのは、グループワークによる集団の中での他者理解、という効用です。日本の学校では、みんなと同じが安心。言葉は悪いですが、去勢されていると感じました。そうではなく、他人と自分は違うということがわからないと、自分に向かい合わないものです。「個」を出していくためには、人の意見を聞き、自分はどうなのかと考えて発言し、尊重し合わなければなりません。あるツールを使って意見を発表するセッションを進めていくと、他人との違いがわかって説得力を持って訴えるようになるなど、格段によくなります。こうして自分に向き合って、自分で自分の能力を発揮したくなるように持っていけば、それを発揮できる場所はどこかを自分で考えて、自発的に行動を起こし始めるんですね。
―では、高校の教育現場に期待されることは何ですか。
学校にもっといろいろな人を入れてほしい、ということですね。先ほども言ったとおり、大人が寄ってたかって子どもを見守る社会にするべきだと思いますから、いろいろな職業の人の話を聞く機会を作ってほしいと思います。先生だって、教科を教えて、部活やって、親の要望を聞いて、と大変でしょう。そうすれば進路指導は楽になると思いますし(笑)。
―「10年後の私」といった作文も書かせるなど、将来を描かせる進路指導も行われていますが。
これだけ世の中が変わっている時代に、10年後どころか5年後だって予測できませんよ。3年後以降のキャリアデザインをさせるくらいなら、予期せぬ変化にどう対応するか、といったことを学ばせたほうがいいと思います。スタンフォード大学のジョン・クルンボルツという教育学と心理学の教授に「計画された偶然性」という理論があります。従来は「未決定」は望ましくないものとされていたのですが、彼の学習理論では、「未決定」であることによって新しい学習が促進されるから逆に望ましいものである、と考えるんです。
―予期せぬ出来事がキャリアデザインに結びつく、というくらいの柔軟性が必要だと。
経済的な理由などで本当にやりたいことをあきらめている子で、「動物が好き」といった気持ちを20歳になっても持ち続けていた子がいました。そういう思いを捨てる必要はないんだよ、自分を大事にしようね、と言うと、よし、やりたいことをやろう、と自分で決断し、それに対して責任感が生まれてくるんです。現に、その子は3年間必死に働いてからトリマーになるための学校に通う、と決めて実行しました。あまりによく働くので、会社から「夜間の学校はないのか」と引き止められたくらい(笑)。芸能界を夢見たって、歌手になれなくてもCD作りに関われるような周辺の仕事もたくさんある。それで満足できることもあるんです。大事なのは自分がやりたいことをみつけることと、それを実現するまでのプロセスをつくること。そして選択の決断力と自信です。そうなれば、後は予期せぬ出来事をつかんでキャリアを開いていくのではないでしょうか。
―どうもありがとうございました。
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