早いもので、脱・日本を図ってから25年余りが過ぎた。本場のアメリカでカウンセリングの勉強をしてやろうと決心し、大学を卒業してすぐ右も左もわからぬまま、裸一貫で日本を飛び出したのである。渡米の際、日本企業に就職しないことだけは漠然と決めていたものの、今から考えると当時の自分にはキャリアプランなど全くなかった。現在、こうしてカウンセリングの実践と研修を行いながら何とか食べてゆけるのも、これまで多くの人たちから指導を受け、様々な出来事を体験してきた結果であろう。しかし、ここでひとつ気にかかるのは「指導」という言葉である。ことに、キャリアにおける指導とは一体何を意味するのであろうか?
指導とは、辞書的な意味は「知識や技能などを習得させ、特定の目的を達成されるよう導くこと」であるが、心理的には「上から下へ」というニュアンスが含まれる。このため、師匠から弟子、上司から部下、先輩から後輩といった「タテ」の人間関係のもとで最も功を奏し、日本の小・中・高校の教育現場における学習「指導」や生活「指導」がこのことを明確に表している。しかし、職業や進路の選択という、人生の一大事にかかわる目標となると、インターネット革命の洗礼を受けた当世高校生気質には、このような上下関係を基盤とするアプローチは、すでにアナクロになってしまったのではなかろうか。
この点、アメリカのハイスクールでは、学生の職業や進路の選択にあたり、教師や目上の人物による指導よりも「援助」が中心とされる。ここでいう「援助」とは、学生たちが自分自身を客観的に見つめ、将来についての具体的な意思決定を行えるよう手助けすることにほかならない。受け持ち生徒一人ひとりの進むべき道について、「親身」になって助言を与えようとする日本とは対照的に、教師はあくまでも学生の自主的な意思決定の支援者役に徹するのである。この背景には、自分自身の進路を決定できるのは所詮自分以外の何者でもないのだ、というアメリカ的個人主義が厳然と表れているのは言うまでもない。
こうしたアメリカ的システムにおいては、スクールカウンセラーの関与が不可欠となる。カウンセラーの具体的な役割は、生徒一人ひとりに進学や就職に関する最新情報を提供すると同時に、カウンセリング関係を構築して面談を行いながら興味や適性のアセスメントを行う。こうして得られた数々のデータをもとに、学生たちと話し合い、現実的な職業や進路の選択を可能にしてゆくのである。もちろん全部が成功に終わるわけではないが、教師とカウンセラーが二人三脚で互いに協力しながら学生の意思決定をサポートしてゆくという「連立システム」である。アメリカのハイスクールや大学で実践されるこうしたキャリア援助が、そろそろ日本に定着してもよいのではなかろうか。
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| 【プロフィール】
おおたに・あきら●
米在住カウンセラー*メリーランド大学カウンセリングセンター、シニア・サイコロジスト。1955年大阪生まれ。高校在学中に米国オハイオ州へ1年間、家庭滞在留学を体験する。帰国後、上智大学外国語学部英語学科に入学し、卒業と同時に再度渡米、西バージニア大学院にてカウンセリング心理学を修める。教育学博士。ジョンズ・ホプキンス大学助教授を経て1989年よりキャリアと臨床心理のカウンセリング実践を行う一方、GCDFインストラクター、京都ノートルダム女子大学客員教授として日米で積極的に研修・講演活動を行う。*著書に『カウンセリング・テクニック入門』(二瓶社)はじめ論文多数。 |
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