3月、教員をしている大学の卒業式があった。全学の式典のあと、例年、学科で内輪の集いを開く。学科主任から卒業証書を受け取った卒業生ひとりひとりが、1分程度のミニスピーチを行う。
印象的だったのは、多くが「友だちがたくさんできた」「いろいろな出会いがあって楽しかった」「仲間とゴタゴタしたこともあったけれど、今は良い思い出」などと、“人間関係”について語ったことだ。
大学で学んだこと、卒業論文や卒業製作のこと、教員から教わったこと、あるいは社会に出てからの夢などについて話した人は、ごくわずかだった。
4月になって大学も新1年生を迎え、はじめての授業でのアンケートに「大学でやりたいことは?」という項目を入れておいた。こちらは、「友だちづくり」よりも「勉強」と答える人の数が上回った。「趣味をきわめたい」「スポーツやりたい」と答える人も多かった。
これだけから結論めいたことを言うのはちょっと乱暴だが、私は思った。「そうか、入学のときは勉強や趣味に燃えている学生も、4年間の学生生活が終わるときには結局、『いちばん心に残っているのは、友だちづきあいのこと』となるのかもしれないな」それくらい、若い人たちにとって“人間関係”は重要な問題なのだ。
大学を出てせっかく就職したのに、「やめたい」と相談に来る若者たちの離職の理由も、まず“人間関係”だ。大人は、仕事の内容さえ自分にあっていれば、“人間関係”なんてうまく切り抜ければすむじゃないか、と思うが、彼らにとっては“人間関係”がうまくいかなければ、どんなに魅力的な仕事も色あせて見えてしまうのだ。
逆に考えれば、「あそこの大学の先生たちはユニークだからキミにあってるんじゃないかな」「この専門学校の学生たちは心やさしい人が多いらしいよ」と“人間関係”を中心に考慮しながら、進路を決めていくこともできるかもしれない。とくに「やりたいことが見つからない」と悩む生徒には、その人間性の部分に注目して「あなたならこの学校の雰囲気にぴったり」と助言するのも有効だと思う。もちろん、高校の教師や親がそれなりの情報を持っていなければ適切なことは言えないが…。
行った先で楽しくやれるも、やれないも“人間関係”次第。やや頼りなくも思えるが、それも現代の若者気質のようだ。
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| 【プロフィール】
かやま・りか●
精神科医・神戸芸術工科大学視覚情報デザイン学科助教授。1960年札幌市生まれ。東京医科大学卒。学生時代より雑誌等に寄稿。現在も臨床を行いながら新聞、雑誌で社会批評、書評なども手がけ、現代人の"心の病"について洞察を続けている。専門は精神病理学だが、テレビゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。主著に『切ない…。』(青春出版社)、『「愛国」問答』(中公新書ラクレ)ほか多数。
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