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リレーエッセイ 高校生がワカル、大人がカワル
(2004年5月17日掲載)
 今年も新学期が始まり、我が予備校も慌しくなってきた。塾生の希望する、毎年変わるニーズに苦慮している。

 私のところへは、私が生物講師ということもあって、生物に関係の深い学部・学科の相談が多い。昨今の不景気を反映してか、農学部などの実学を目指す者が多い。なんとも堅実というか…。この判断に異論を唱えるつもりはないのだが、少し話をきくと「おや?」と思うケースが少なくない。

 なぜ農学部を選ぶかきくと「就職しやすいってきいた」「理学部だと教員くらいにしかなれないっていうじゃない…」噂とは恐いものである。そこで質問を変えてみる。「じゃあ農学部と理学部の違いって何?」ときくと、みんな黙ってしまう。このように、真偽が定かでない情報で進路を選んでいる現状が垣間見える。

 これは無理もないことでもある。「自分の志望学部・学科くらいは調べようよ」と少し前まではよく言っていたが、最近はもう言わないようにしている。大学のホームページを開いても、受験生が理解でき進路の判断材料になるような情報は意外に少ない。誰に向けて発信しているのかわからないものもある。また学科の名称が「バイオ○○学科」「生物○○学科」など大学によってむちゃくちゃで、実にわかりづらい。受験生に理解できるはずもない。

 そこで、ここ最近の進路相談では、まず「大学でどんなことがやりたい?」と問いかける。「DNAの研究がしたい」「とにかく生物がやりたい」など漠然とした回答が返ってくるが、「何がやりたい?」と問いかけることで「自分は何がやりたいのだろう?」と考えるようになる。何せ自分の人生に関わることだから真剣である。私をはじめ他の講師やチューター、高校の進路指導の先生から大学情報を少しずつ得て、友人と相談したり、また悩んでみたり…。時間はかかるが、塾生自らが進路を決定し、確固たる信念が芽生える。こうなれば後は受験勉強にまっしぐらに突き進める。これぞ青春の一ページである。

 受験生は、「大学に行きたい」という気持ちがまず先行し、「大学で何がやりたいか」はどうしても後回しになる。私が最も恐れるのは、受験間際に進路を悩み始めることである。受験勉強に身が入らなくなったり、イライラで人に当たり散らしたりと親も子も学校も予備校も大変である。しかし、「大学に行きたい」だけで合格できるほど受験は甘くはない。確固たる信念で受験に望んでほしいものである。
飯田 高明
【プロフィール】
いいだ・たかあき
河合塾講師*1968年三重県に生まれる。広島大学教育学部(理科)卒業後、同大学院理学研究科博士課程に在籍中の1995年より、河合塾広島校で生物を担当。2000年より、東京地区へ移籍し、現在、東大オープンや全統マーク模試をはじめとする模擬試験やテキストの執筆を手がけ、東京と広島を毎週往復し、生物の講義を行う。人気、実力ともに高い評価を得ている名物講師*著書に「こだわって!国公立二次分野問題集(河合出版 小畑成美・前田真共著)」がある。
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