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キャリア教育ニュース解説
(2004年5月31日掲載)

 文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」事業と「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)」事業が、今年度で3年目を迎える。理科・数学分野に重点を置いたSSHは科学技術立国のための人材育成、SELHiは国際社会で活躍できる人材の育成を目指しており、両事業は社会的に大きな注目を集めた。しかし、3年目を迎えた現在、高校関係者の一部を除けば両事業に対する社会的関心は次第に薄れつつあるようにもみえる。スーパーハイスクールの持つ意味とはいったい何なのだろうか。

「エリート校批判」は沈静したが
 新学習指導要領に対する学力低下批判を受けて、「確かな学力」路線に転換した文科省は、2002年度からSSHとSELHiの二つのスーパーハイスクール事業をスタートさせた。公募から選ばれたスーパーハイスクール指定校は、SSHが今年度新規指定の20校と既指定校を合わせて合計72校、SELHiが新規指定35校で合計88校に上っており、研究開発学校として学習指導要領に縛られない取り組みを行っている。例えば、SSHの富山県立富山高校は、中学校から高校への理科の移行を円滑にするため「自然と科学」を1年生で実施しているほか、家庭、保健、公民を融合した「人間と科学」などの学校設定科目を設けている。SELHiでも英語の授業で日本語を一切使わない授業をしている学校もある。スーパーハイスクールは各学校が独自の取り組みを展開しているのが特徴だが、それだけに「内容は玉石混交」と指摘する関係者もいる。  
 スーパーハイスクールは発足当初、一部の学校のみを優遇するという「エリート校批判」を招いたが、現在ではその声も少なくなっている。その背景には理科・数学、英語などの特定分野で卓越した人材を育成するという狙いと現実の矛盾がある。スーパーハイスクールは、学習指導要領にとらわれない教育をできるが、それは学習指導要領で定められた教科・科目を受けないことでもある。特に国公立大受験を考えると、現状ではこれは生徒の不利となるため、スーパーハイスクールは、理数科、英語科などの専門学科が公募するケースが増えている。また、普通科でも一部の希望者のみを対象とする取り組みが多く、教育課程全体を変えるまでには至っていない。大学入試の壁が、逆にスーパーハイスクールの「エリート校化」を妨げているという皮肉な現象と言えるだろう。
キャリア教育の観点から再確認を
 このため、発足時には非常に高かった一般社会の関心も薄れつつある。第一次指定のスーパーハイスクールは、今年度で3年間の指定期間が切れるが、「来年度以降どうなるのか見通しがつかない」と不安を隠せない関係者も少なくない。だが、スーパーハイスクールがこのまま一般社会の教育への関心事の主役の座を降りたままでよいのだろうか。生徒の興味・関心や個性を伸ばすために、カリキュラムや指導体制を整え、大学との連携も積極的に行うというスーパーハイスクールの取り組みは、「特定分野」に限定したキャリア教育でもある。文科省がキャリア教育をこれからの学校教育の重要な柱の一つと位置付けている現在、スーパーハイスクールの役割はますます重くなるはずだ。「エリート校批判」の裏返しによる過剰な期待がある意味で一般社会にあったが、それが沈静化した今こそ特定分野に興味・関心、能力がある生徒を伸ばすというスーパーハイスクール本来の趣旨を再確認すべきだろう。
 まず、今年度で指定期間が切れるスーパーハイスクールは、研究補助金を削減した上で、指定期間を延長する必要がある。また、スーパーハイスクール関係者の間では、研究補助金の使い方に制約が多すぎるという批判も多く、学校の裁量で自由に使えるようにすることも課題だ。そして将来的には、スーパーハイスクール以外の高校でも、特定分野に強い興味・関心、能力を持つ生徒に、学習指導要領に縛られない教育を行えるような道を開いていくことが求められる。
 スーパーハイスクールが、「学力低下批判」や国の人材育成戦略などの中で生まれたことは否定できないが、その中から「卓越した人材」が生まれたかどうかという成果を疑問視する前に、生徒の興味・関心、能力を最大限に伸ばし、将来の生き方につなげるというキャリア教育の観点から、スーパーハイスクールの実践を見直すことは決して無駄ではないはずだ。
このNEWSを読む
文部科学省 2004年度のSSH指定校などを発表(4月1日、5日)
  文部科学省は4月、2004年度のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)とスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)の指定校を発表した。SSHは科学技術教育や理科・数学教育の振興のために2002年度から指定されたもので、大学との連携などにより学習指導要領にとらわれない教育ができる。公募した47校から千葉県立柏高校など20校が指定され、指定校は合計72校となった。一方、国際化に対応した英語教育を実施するSELHiは、公募98校中から35校が指定された。これでSELHiは、2002年度からの指定校を合計すると全国で88校となり、全都道府県に指定校が行き渡ったことになる。
http://www.mext.go.jp/
b_menu/houdou/16/04/
04040501.htm

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