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最前線!職業人インタビュー vol13
「ありそうでなかったモノ」を求めて「企画」し続けていきたい
テレビ番組の企画をはじめ、多彩な顔を持つクリエイティブ・プロデューサーおちまさと氏
おち・まさと1965年、東京都生まれ。21歳のとき、テレビ番組の『天才たけしの元気が出るテレビ』の放送作家オーディションに応募、同番組の総合演出を担当していたテリー伊藤氏に認められ、フリーの放送作家としてデビュー。以来、現在まで数多くのテレビ番組の企画、構成、演出、プロデュースを手がける。代表作に『グータン』(フジテレビ系で放映中)『学校へ行こう!』(TBS系で放映中)『仕立屋工場』『東京恋人』『自分電視台〜SelfProduce TV〜』『24人の加藤あい』などがある。また、ドラマの脚本、音楽プロデュース、テレビ(BS日テレ『BSイレブンPM』)・ラジオ(TOKYO FM『アクセス・オール・エリア』)の司会・パーソナリティー、作詞(椎名純平with篠原涼子『Time of GOLD』)、CM監督、服飾デザイン、雑誌連載、商品・サービスのプロデュースなど、多方面で活躍中。主著に「おちまさとプロデュース 企画の教科書」(NHK出版)がある。
(2004年5月31日掲載)
※インタビュー:2004年3月23日


―おちまさとさんは、テレビ番組の企画をはじめ、多彩な顔を持つクリエイティブ・プロデューサーとして著名です。どれくらいのお仕事が同時進行しておられるのでしょうか。



自分でもわけわかんないくらいの数のプロジェクトに関わっています(笑)。会議、会議の連続ですね。1日の中でも自分のキャラクターがコロコロ変わります。でも、根幹となる考え方は1つなので、意外とラクなんですよ。

―その考え方、とは。

「ありそうでなかったモノ」を追求する、ということです。何でもそうだと思いますが、ヒットのさせ方に法則はないんです。あったとしても、すべて結果論。カラオケボックスとか、プリクラとかは、昔からありそうでなかった。ヒットした後では、誰でも思いつきそうな当たり前に思われるようなことでも、それまで誰も思いつけなかったからヒットしたわけです。

―なるほど。では、おちさん流の「企画の立て方」をお教えください。

僕には、モノを企画するときの考え方のパターンがいくつかあります。まず「こだわり」と「サービス」の比率をどこにおくか、というゲージを持って考えること。あるモノはこだわり95%に仕上げて5%だけユーザーにサービスしてあげる。あるものはこだわらずに大サービスする。その加減を考えることです。サービス、というのは、流行していること、とか、安心できること、と置き換えるとわかりやすいかもしれません。若くてとんがっている人は、ついこだわり100%でやりたがりますが、それだと自己満足になってしまいがちです。それで当たれば最高でしょうが、認められるのは5年後、ということになってしまう。いま実現させるには、多少のサービスが必要、ということです。それから、「振り幅」をつけること。「振り幅」とは、状況変化の大きさの度合いのことで、たとえば波瀾万丈の人生は、普通の人生の倍の振り幅がある、と考えるわけです。この「振り幅」の大きさがモノを面白く見せてくれるんですね。こういった考え方のパターンはほかにもいくつかあります。そうして面白い企画ができたら、ごく身近な人に言って反応を確かめるんです。

―企画はパッと思いつくんですか。


僕が企画を考えるときは、白い紙に向かって「さぁ考えるぞ」と言って始めるわけではありません。頭の中にある記憶の断片をつなぎ合わせるんです。記憶することは日々の積み重ねで、脳内パソコンにフォルダーを作ってストックしている、という感覚。そして、頭の中にはいつも13〜14人のキャラクターがいて、24時間365日、会議をしているんです。ピュアなやつが企画を力説すると、計算クンが冷静にそれを否定する発言をして、計算クンが勝つとその企画は消える(笑)。現に、こうしていまインタビューに答えている自分を、もう一人のすごく冷たい自分が「何カッコつけて言ってるんだよ」って否定しているんです。クリエイティブの源は、そんな危機意識にあるような気がしています。いつも「今回はダメかもしれない」「今回で自分は終わりかもしれない」って思いながら考えています、本当に。

―なるほど、優れた企画を考えるのは大変なことなんですね。


最大の企画は人生だと思っているんです。人生ほどすごい企画はない。自分を主人公にして、それこそ命がけで企画しているわけです。それなのに、誰も「企画」を教えてくれませんよね。「企画」という科目が本当に必要ではないのかな、と思って、「企画の教科書」っていう本を作ったんです。

―そこには企画の考え方がすべて書かれているわけですね。ところで、おちさんがこの道を目指されたのは、どういった経緯だったのでしょうか。

小学校3年生のときに、「ジョーズ」という映画を見て感動したんです。こんな映画をスピルバーグという当時26歳の青年が作っている。これはすごいことだ、自分もスクリーンの向こう側に行きたい、と思いましたね。それで21歳のときに放送作家として仕事を始めたんですが、自分が26歳になったとき、まだ何も残せていない、とブルーになりました。そうこうしているうちに38歳です。非常に危機感がありますよ。

―多彩な活動をされているのは、その危機感の反動なのでしょうか。

そうですね。テレビだけというのはがまんならないですね。デザインもやりたいし、音楽もやりたい。もちろん、いつかはそれらの総合芸術である映画を作りたいという夢があります。でも、映画だって通過点に過ぎない。現実を直視しながらも、果てしなく夢を持ち続けていきたいですね。この夢と現実の幅が「夢定規」で、それを常に意識することが重要なんだと思います。四畳半という現実から、ハリウッドという夢を想う。そういった幅を縮めようとすることが、力を生むのではないでしょうか。

―「夢定規」も、「危機感」の変形のように思います。



その意味では、仕事の依頼をあてにしていてはダメだ、という気がします。仕事を依頼されるのは、過去のご褒美に過ぎませんから。だから、僕の場合、依頼されても身分不相応だと感じるものなどはお断りしています。危機感を常に持っていることで、自分で考え、自ら動かざるを得ない状況に自分を追い込んでおく。そうやって、前向きに考え続けるポジティブシンキングと、その企画が引き起こす最悪のケースを考えるネガティブシミュレーションを繰り返していくと、ある日、ヌケた企画ができるんです。作業としては、「スゲェ面白い、世の中ひっくり返る!」といったアイディアを、それがどうなっていくか想定できるチャートを辿って、その枝の道が途絶えるまでナイフでグサグサ刺して消していく、というイメージですね。

―企画には、テーマ設定や予算などの制約もありますよね。

たいていは低予算で、しかも面白いモノ、という制約があります(笑)。でも、この一見相反することを実現させるのが企画の妙味なわけで。1石18鳥、なんていうことが実現できた企画もありましたよ。最高の企画って、見ている人に「やられた!」って思わせるものだと思います。何でこんなことを思いつくんだ、という、出所がわからないような企画です。それがバレたら負けだと思っています。
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