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キャリア教育ニュース解説
(2004年6月28日掲載)

 高校時代の科目履修状況に配慮して補習などを実施する大学が増えている。大学の補習は、大学生の「学力低下」を示すエピソードとしてマスコミなどでも盛んに取り上げられ、生徒を大学に送り出す側の高校における「学力向上」を求める論拠の一つにもなっている。しかし、高校が学力向上さえ図れば、この問題は解決するのだろうか。いわゆる「大学全入時代」を控えて、学力向上と同時に取り組まなければならない課題が高校にはあるのではないか。

大学の意識変化が背景に
 文部科学省が3月に発表した2002年度大学改革状況調査の結果によると、高校の履修状況に配慮した取り組みを実施しているのは国公私立404大学で、大学全体の59%に上っている。補習など学生の「学力低下」への対応が、大学にとっても一般的な取り組みとなりつつあることを示すものだ。ただ、取り組み内容をみると、「補習授業」の実施は168大学で、161大学だった00年度からほとんど変わっていない。
 一方で、「経済学部の学生なのに統計を知らない」「理学部なのに物理を学んでいない」など高校教育の多様化を批判する大学関係者は少なくない。実際に今回の調査では、高校の科目履修状況に応じて「既習組と未習組を分けた授業」を実施するのは00年度の80大学から02年度は102大学に増加しており、対応せざる得ない大学側の状況がうかがえた。
 「学力低下」と高校教育の多様化の関係は、さまざまな議論があるが、ある大学関係者は「学力問題や高校多様化に対応するようになったのは、実は大学自身の事情だ」と指摘する。不況により自前で社員を教育する余裕がなくなった企業が、即戦力として大学に質の高い学生を求めるようになっている。就職率は大学の人気も左右するので、必然的に大学は生き残りのために学生の質の向上に力を入れざるを得ないという見方だ。数多くの授業に登録し、難しい授業は途中で放棄するという安易な履修選択を防ぐため、年間履修科目数に厳しい上限を設ける「キャップ制」を導入した大学は、00年度の272大学から02年度は381大学へ、研修など組織的に大学教員の授業力向上を図る「ファカルティ・ディベロップメント」の導入も00年度の341大学から02年度は458大学へと、それぞれ急増している。大学生き残り競争の中で、研究中心だった大学関係者の意識が教育中心へと大きく変化していることが、高校教育に対する注文や批判の背景にあると言える。
「受験」から「進路」への転換を
 学生の質を上げる最も簡単な手段は、入試を難しくすることだ。06年度入試から国公立大学が大学入試センター試験で「5教科7科目」を課すのはこれに当たる。しかし、国公立大と一部有名私大を除けば、少子化による受験者数減少の中で科目増加に踏み切ることは難しい。一方、01年度入試で207大学が実施したAO入試は、03年度入試には337校に増加しており、今後も導入が進むのは間違いない。いわゆる「大学全入時代」を実質的に迎えつつある中で、生徒のほとんどが国公立大を受験する高校以外では、入試科目増による「受験圧力」はもはや切り札とはなり得ない。
 入試で合否判定をして入学させたのだから、補習でもなんでもして大学が対応すべきだという見方もあろう。正論ではあるが、本来、高等教育をすべき大学が限られた予算と人的労力を補習に使うのは、教育資源の有効的な活用とは言えず、大きな視点で見れば日本の教育にとって好ましくはない。また、欧米のように「卒業するのが難しい大学」にすべきとの意見もある。一定の成績に達しないと退学させるという「グレード・ポイント・アベレージ(GPA)」を何らかの形で導入している大学は、日本でも02年度で全体の21%に当たる146大学に上っている。しかし、欧米と違い財源のほとんどを学生の授業料に依存している日本の大学で、GPAが本当に機能するのか疑問視する向きも少なくない。
 いずれにしろ、多くの大学が根本的な解決方策を打ち出せない以上、今後ますます高校への要請が強まるのは確実だ。また、大学が批判する未習科目問題も、生徒の安易な科目選択というより、国公私立別や理系・文系別など「受験対応」の視点でカリキュラムを組んでいる高校に責任の大半があるという見方もできる。「大学全入時代」を迎えつつある中で、生徒にきちんとした進路意識を持たせ、それに対応した選択科目の履修指導をすることが、現在、高校に求められている。大学で何を学ぶのか、そのためにどんな科目を履修しておく必要があるのか指導をせず、単に「受験対応」の「学力向上」に励んでも、大学の高校生に対する学力低下批判を止めることはできないだろう。
このNEWSを読む
大学の約6割が補習を実施、大学改革状況調査(3月23日)
 文部科学省は3月23日、2002年度「大学における教育内容等の改革状況調査」の結果を発表した。それによると、未履修科目の補習など高校での履修状況に配慮した取り組みを国公私立全体の約59%に当たる404大学が実施していることが分かった。また、「学生による授業評価」は、国立97大学(98%)、公立61大学(81%)、私立416大学(81%)が何らかの形で導入しており、国公私立全体では574大学(84%)に上っている。ただ、学生による授業評価を大学改革などに反映させる組織的取り組みをしているのは実施校のうちの28%に過ぎず、授業評価の活用に課題が残っている。このほか、一定水準以上の成績でないと卒業を認めない「厳格な成績評価」(GPA制度)を導入しているのは、国公私立全体で146大学(21%)となっているが、前年度調査の91大学(14%)に比べると大きく伸びている。
http://www.mext.go.jp/
b_menu/houdou/16/
03/04032301.htm
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