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つちや・しげひろ
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1956年、福島県生まれ。帝京大学医学部卒業後、2000年3月までの16年間、癌研究会附属病院に臨床外科医として勤務。現在、福島県郡山市の医療法人慈繁会土屋病院外科部長。また、2000年7月、患者の立場に立った最良の治療の選択と闘病支援を目的とした組織「キャンサーフリートピア」を東京都千代田区に設立、代表に就任。ガンのセカンド・オピニオン専門医として、ガン治療をトータルにコーディネートする活動を行っている。著書に『ストップ ザ ドクハラ』(扶桑社)、『ドクターハラスメント』(扶桑社)、『がん病棟の真実』(経済界)、『このガン、切るべきか切らざるべきか』(NHK出版)がある。
http://cftopia.com/index.html
(2004年6月28日掲載)
※インタビュー:2004年3月24日
―土屋先生は、いま福島の土屋病院と東京の「キャンサーフリートピア」の両方でお仕事をされていますが、お仕事の配分は。
週の前半は福島でガン治療、後半は東京で相談医、という形でやっています。両方こなしている理由はいくつかあります。まず、ガン治療医としての現場を離れてしまうと、医療の問題点が見えなくなること。それから、相談医はたいてい、生活の心配がなくなって現役をリタイアした医者が始めるもので、相談医だけではなかなか食べていけないといわれています。なら、40代からのライフワークとして、またビジネスとして成り立つかどうか、チャレンジしようじゃないかと。もっとも、僕の場合は土屋病院という生活上のセーフティネットはあるんですが、今は、やろうと思えば、相談医100パーセントでもやっていける自信はあります。
―「キャンサーフリートピア」は医療機関なのでしょうか。
問診だけを行うので、医療機関ではありません。ガンの患者さんに対して、セカンド・オピニオン(
*
)としていろいろな相談に応じています。しかし、僕は相談というよりも、治療だと思ってやっています。保険はききませんから、自由診療ですね。料金はホームページで公開しています。有料、ということをはっきり明示しておかないと、逆に「あそこは何やっているんだ」と思われるし(笑)、患者さんは聞きたい情報を事前に整理して来られるというメリットもあります。非会員の方の場合は、僕の話を1時間聞いて6万円払うことに価値を見い出す人が来られるわけです。
―患者さんはどういった方が多いのでしょうか。日本全国から来られるんですか。
沖縄からも来られますよ。たいていは主治医から見放されたり、再発してどうしたらいいか悩まれている方ですね。
ガン治療というのは、最初は根治を目指すんですが、なかなか根治できないんです。そこで大切なのは、ガンというものをいかによく理解してつき合っていくのか、ということ。ここをおろそかにすると、医療に対する納得性が低くなって、人生が不満だらけなものになってしまいます。再発して、なおも厳しい根治治療を続けていくのはつらいことですし、そうでなければ、ガンというプレッシャーに押し潰されてしまう。そこで、ガンがあってもいい、ガンとともに生きていくんだ、という意識改革が必要になるんです。ですから、ここでの診療は、大げさに言えば宗教的なところも求められていると思っています。
―「心の診療」という側面もあるわけですね。
エビデンス・ベース(科学的根拠)ではなく、ヒューマン・ベースの診療、ということです。科学的根拠に基づく治療は、人間に冷たいんですね。また、そんな治療がその人に合うとは限りません。手術も服薬も嫌、という人もいる。生きるも死ぬもその人の勝手なわけで、ならばその人が選択した生き方、治療法を支援しましょう、というわけです。普通の病院では、ガン患者が「手術は嫌です」と言ったら、ならばもう来ないで、と言われるでしょう。その病院なり医者なりの方針で、手術と決めたらそれに従ってもらわなければ困る、と。ところが、ガンの治療には幅があるんですよ。たとえば、一人暮らしの人は、生活をサポートしてくれる人がいなければきつい治療は無理ですよね。年齢や生活環境などに応じて、治療法は変えていくべきなんです。そういうことは医者はみんな理解しているんですが、そんなことは今の医療システムではできないんです、手間ひまがかかりすぎて。3時間待ちの3分診療という現状では、やりたくてもできない。これは、患者が医者の情報をもっていないから、ブランド病院なら間違いなかろうとそこに集中してしまうことが原因でしょう。でも、小さな診療所にだって優れた医者はいるんです。そんな情報が出回らないのは、保険制度によって、誰が診ても診療報酬は同じなので医療機関間の競争がなく、出してもメリットがないから出したがらないだけです。
―――そうなんですね。ところで、てっきりガンの治療とは、手遅れにならないようにおしなべてなるべく早く切るなり、制ガン剤や放射線でやっつけなければならないもの、と思っていました。
ガン細胞は30回分裂して1センチくらいになりますから、できてから見つかるまでに長い時間がかかっている。我々が診るときは、実は発ガンから数年以上経っているものが多いんです。ですから、焦る必要はありません。無理に手術したり、強い制ガン剤で副作用に苦しまなくても、休眠療法といって、ほとんど副作用のない弱い抗ガン剤を服用して現状維持を目指すやり方もあるんです。それに、なかなか認識されませんが、ガンは特殊な病気なんかではありません。いまや2人に1人はかかるごく普通の慢性病、生活習慣病なんです。たばこや刺激物など、よくいわれる原因もありますが、一番の原因は加齢なんです。ですから、僕は学校でガンの知識を教えるべきだ、と言っているんです。
―なるほど。それでは、土屋先生がキャンサーフリートピアを始められた動機は、どういったことでしたでしょうか。
ガン治療の老舗である病院に16年間、外科医として勤務していて、いわば、ガンを切りまくってきたわけです。僕は切りたがり屋だった(笑)。フジテレビのアナウンサーだった逸見政孝さんがガンにかかったことをテレビで告白し、闘病ぶりが報じられましたよね。そのとき、あそこまでの大手術をしなければ、もっと生き延びられたという批判が起こりました。事実、多くの医療機関では、患者さんのため、というより、外科医の満足のための手術が行われていたんです。その患者さんに手術は良いことではなくても、1パーセントでも助かる確率があるなら、という理由で、実は医者が満足するための機会として手術が行われている。痛い、苦しいのはすべて患者さんなわけですから。そこに気づいて、そんなことより、無駄な手術をいかに減らして、ゆとりのある、人間らしい情を大切にした医療をやっていかなければいけないんじゃないか、ということで始めたわけです。
―そこでセカンド・オピニオンとして、手術以外の道もアドバイスしていらっしゃるわけですね。セカンド・オピニオンを嫌がる医師も多い、と聞きますが。
患者さんが、主治医にセカンド・オピニオンを聞きたいのでカルテを出して、と頼むと、そんなに信用できないのか、と返されると聞きます。しかし、こういった対応は次第になくなって、セカンド・オピニオンはいずれ定着していくと思います。普通の買いものは、何軒もお店を見比べて買いますからね。それと同じです。いや、いわば命の買いものなんだから、もっと慎重に見比べてから決めるべきなんですよ。
―土屋先生は、『ドクハラ』についても著書やマスコミを通じて告発されています。
ある患者さんが、キャンサーフリートピアに行きたくても行けない、って言うんです。なぜかと聞くと、主治医に嫌な顔やいじわるされたら困るから、と言うんですね。医者にとっては、セカンド・オピニオンという雰囲気が邪魔なんです。そんなハードルを越えていかないと、セカンド・オピニオンなんて広まらないと思って、社会的に問題意識を広める意味を込めて、目に余るような医者の対応を集めて発表することにしたんです。最初はメディカルハラスメントと言っていたんですが、わかりにくいということで、ドクターハラスメント、ドクハラに変えたら、わーっと広がりました。最近は医療ミスが続いて、大きな社会問題になっていることも注目された要因だと思います。こうした医療の問題は昔からあったんですが、患者さんの意識が次第に高まって、医者に遠慮する必要はない、という流れになっていると思いますね。
―そんな本を出して、ご同業から恨まれたりしませんか(笑)。
よくそう聞かれるんですが、静観しているのが一番得、と思われているんでしょう。下手に異論反論しても、後ろにはマスコミが控えていることや、世の中の流れはどっちに順風かはわかっていますからね。病院で私の名前を出したら、急に丁寧な対応になった、という患者さんがいました(笑)。テレビなどにも出ましたから、知られているんですね。僕の名前はドクハラ抑止力にはなっているかもしれない(笑)。
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