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最前線!職業人インタビュー vol14
もっと個性を伸ばす教育を



―土屋先生の高校時代についてお聞かせください。

福島県立安積高校という、県下で1、2を争う進学校の中でも、さらにトップクラスの理数科に入りました。入試は250点満点で、平均が231点。僕は234点で、17番目でした。数学は100点満点が半分もいたんです。このクラスだけ、学校区がなくて生徒は全県から集まってくる。1クラス40人で、3年間クラスの生徒は変更ないんです。そのせいか、今でもそれなりのつき合いは続いていますよ。学校はバンカラでしたが、理数科には勉強できるやつばかりが集まっていて、休み時間も席を立たずに勉強している(笑)。僕なんかは、入学して以降、剣道ばかりやっていたこともあって、クラスの中では落ちこぼれになっていきました(笑)。

―剣道の腕前は。

初段です。2段以上取るのが嫌になった。通っている道場の先生が審査員だから、昇段できるのなんかわかっているからね。先生から、試合のとき初段だと相手からなめられると言われましたが、逆に、初段のままで3段に勝ったほうが気分いいと言い返しました(笑)。

―――クラスでは、周りは秀才ばかり。

クラスで一番成績がいいヤツは、僕たちとも話を合わせようと、新聞のテレビ欄を読み込んで話題を仕入れてきていました(笑)。そいつの教科書を見ると、やたらめったら線が引いてある、欄外まで。そんなに線引いたらどこが大事かわかんないじゃない、と言ったら、「大事じゃないところがあるの?」って聞き返されました(笑)。


―土屋先生はそうではなかった。

勉強はあまりしなかったな。根っからの怠けものなんですよ。でも、人間なんて基本は怠けものでしょう。その上でいかに自己管理ができるかが大事なんであって。人間性のある医療が大事だ、なんて言っている僕でも、夜中に病院から電話かかってきて呼ばれるのは嫌だしね。でもそうやっていやいや行っても、患者さんの顔を見れば変わりますよ。家族と同じような感覚ですからね。だから、患者さんを家族と思えるような医療は、たくさんの人相手では無理なんですよ。そうかと思えば、患者さんに面と向かって「あなたのせいで3日も寝てないんだ」などとドクハラを言う医者もいる。そういうのは医者に向いていないと思いますが、そもそもは現在の医療のシステムがドクハラの土壌になっているんですね。

―医者になるためには、どういったことが一番大切なのでしょうか。

まずは体力ですね。これはどんな職業でもそうだと思いますが、体力がなければ技も知識もついてこないと思います。よく「心・技・体」といいますが、僕は「体・技・心」だと思う。剣道もそう。体ができていないと、メンタリティだけではカバーできないんです。だから、若い頃は強靭な体を作るために鍛えなければならないと思いますよ。体が丈夫ならば、それだけでもやっていけることがあるし。それから心ですね。患者さんの苦しみや悲しみが自分のこと、家族のこととして思えるかどうか。みんな最初はそんな志があっても、研修医は忙しくて本も読めず、流れ作業的に患者さんに対応していくうちにそんな本質を忘れてしまうんです。

―――体や心が大切といっても、医者にはやはり成績が優秀な人がなっていきますね。



人間性は試験では判断できないから、仕方なく偏差値の高さを競う学力試験の結果で判断し、医師の免許が与えられている。ところが、偏差値の高い人は、勉強ばかりやって、あまり人づき合いをしてこなかったような者が多いんです。だから、医者は病気は診れても人は診れない、と批判されるんだと思います。大学に入ってから、模擬の患者に接する訓練もやりますが、それだけで人との接し方が学べるとは思えないですね。僕はよく、医者は新生児のまま社会に出ているようなもんだ、と言っているんです。もう少し社会の厳しさとか、深い人づき合いとかを経験してからなったほうがいい。医者になるとすぐに先生と呼ばれ、1晩数万円という金も入ってくる。ステイタスも高く批判が届きにくい。人と平等につき合うことが難しいから、医者以外の仕事は無理かもしれない(笑)。第一、医学生は就職活動しないんですよ。医局に入って、そのまま病院が決まる。自分で仕事を探すという意識が欠落しているんです。

―土屋先生ご自身が医者になろうと思われたのは、やはり父親の影響でしょうか。

そうですね。子どもの頃から手術に好奇心があって、毎日のように家の病院で見ていたんですよ(笑)。手術してどんどんガンをやっつけてやりたいって思っていました。そのままずっとそういう感じで来て、ガンの専門病院に勤務していたときでも、毎日行ってなるべく切らせてもらうように働きかけていました。それがね、あるときからどこかおかしいって思うようになってね。学会なんかでも、いっつも人と違う批判的な意見ばかり言っている。そもそも、人と同じことやってたら、新しくて楽しい人生なんてないって思っていますから(笑)。

―いい医者を生むために、学校教育でできることがたくさんありそうですね。教育現場に対してのご要望とは。



バランスのとれた高度な知識も大事なんですが、社会に出れば専門性があれば通用しちゃいますから、もっとそれぞれの個性を伸ばして専門性を身につける教育をしてもらいたいですね。アメリカでは、スペシャリストはみんな同列の扱いですよ、スポーツでも商売でも学問でも。一方、日本では文武両道といわれ、普通の子がスポーツだけできてもあまり評価されない。日本のエリートは、何でもできる子でしょう。高校教育までで最低限のインテリジェンスを身につけて、大学に入ったらやりたい分野に集中して伸ばすようにできればいいと思うんです。なのに、大学受験までがきつくて、大学で遊んじゃうから勉強したことなんか抜けちゃう。それでは何のために学問するのか、わかんないですよね。だから、成績がいいからステイタスの高い医者になった、というやつが多くなるんですよ。だからこそ、なおのこと個性を生かす教育をしてほしいと思いますね。

―ありがとうございました。

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