大学生の就職問題を扱った本を出版したあと、いくつかの大学から講演会の
講師として招かれた。いずれも大学の教員主催ではなく、キャリア支援センタ
ー、いわゆるかつての“就職課”の事務方が主催する講演会だ。聴衆は支援センターなどの事務職員だったり学内の教員だったり。
学生の就職問題に携わって長いというある事務職員は、こんな話をしてくれ
た。「教授や助教授の中には、私たちの活動をよくわかってくれない人もいるんですよ。“どうして就職率がもっと上がらないんだ。キミたちの指導が悪いんじゃないか”と言う人もいるかと思えば、“就職だけが人生じゃないんだから、そんなに学生をたきつけなくたって”と言う人も。もちろん私たちも就職が学生の進路のすべてとは思っていませんが、就職しない学生の多くはほかに進路を見つけることもできません。かといってその学生たちを指導するのは、至難のワザなんですよ。だってその子たちは、支援センターに足を踏み入れてもくれないんですから」
大学での私の経験から言うと、支援センターに行かない学生は「自分は就職したいのかしたくないかもわからない。そんないいかげんな段階でセンターに行っては悪い」と考えていることが多い。「じゃ、就職以外なら何がしたい?」と聞いても、「うーん」と首をひねる。こちらがしびれを切らして「あなたは社交性もあるし、人と接するような仕事が向いていると思うよ」とアドバイスしても、「そんなもんですか」と他人事のような顔をしている。つまり、自分の特徴や気持ちがまるでわかっていないのだ。
キャリア支援センターの講演会に呼ばれると、「教員たちも、まず学生が“自分はどういう気持ちなのか”をしっかり見つめられるよう、指導する必要がある」といった話をする。そうすると事務方の人たちは、「そうだそうだ」と言わんばかりにうなずく。その表情からは「ウチの就職率が高くないのは、私たちの技術不足ではありません。先生たちが、学生が自分に向き合えるよう指導し、支援センターに来られるよう“支援”してもらわなきゃ、何も始まらないんです」といったことばが聞こえてくる。
キャリア支援センターに行く支援をする、と言うのもおかしな話だが、それくらいしないと若い人たちは自分を見つめ、社会に足を踏み出す準備もできないのだ。そうだとしたら、高校はさしずめ「社会に出るための支援センターに行く支援の支援をするところ」とでもなるのだろうか?悪いジョークのようだが、かなり深刻な問題だと思う。
|