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リレーエッセイ 高校生がワカル、大人がカワル
(2004年8月30日掲載)

  夏休みに突入し、我が予備校では夏期講習真っ盛りである。私のところへく る質問が後を絶たない。我が塾生が勉強に熱心であるのは嬉しい限りであるが、 最近、気になる質問も多くなってきた。

 「問題文の意味がわかんない…」、「文章が長すぎて何が書いてあるのか さっぱりわからん」。これは深刻な問題である。文章が読めなければ問題を解 くことは夢のまた夢である。「新聞とか本とかをどれくらい読んでる?」と聞くと、ほぼ100%「ほとんど読んでない」という返事である。「なぜ読まない の?」とさらに深く聞いてみると、「だって面白くないもん」、「読むの苦手 だから」というありさまである。「できるだけ本や新聞を読もうよ」とはたら きかけても、「何の本を読めばいいの?」という答えはまだマシであり、ほと んどの子は「そんな暇ないよ」、「予習や復習で精一杯」と否定的である。

 私が、予備校で論述形式の答案の添削を行っていて感じていることであるが、 年々、塾生の書く文章が無茶苦茶になってきている。主語と述語が理路整然と 並んだ文章にほとんど出会ったことはなく、赤ペンで添削すると、「先生の指 摘と同じ意味で書いたんだよ」と不満をぶつけてくる。なぜ文章の修正が必要 なのかを理解してもらうのに一苦労である。

 現代国語の講師が「国語的生活を送っていないんだから当たり前」と言って いたが、これは名言であると思う。なるほど、私が受験の頃は、書籍や新聞を 読むのが当たり前であり、気づかないうちに「国語的生活」を送っていたので あるが、最近の子は気づかないうちに「国語的生活」を送っていないのである。

 ある出版社の編集者から、「書籍にかける金額がここ10年の間に1世帯、1 カ月あたり1万円以上減少しています…」と聞いて驚いた。携帯電話やパソコ ンに出費がかさみ、書籍代にまで支出がまわらないというのである。つまり社 会状況が変わってきたわけであり、「問題文の読めない子」にばかり責任を押 しつけてはいけないのかもしれない。しかし、社会状況が大きく変わっても、 受験は相変わらずペーパーテストが大半である。受験生にとって、受験は我々 が考えている以上に大きな壁であるのかもしれない。

 今までの経験上、読み手に通じる文章がスラスラと書けるようになると、問 題文も正確に読めるようになる。ただ、早い子で3カ月、遅い子で半年くらい かかり、特訓に耐えることができる子が年々少なくなってきている。せめて根 気強くあってほしいものである。


飯田 高明
【プロフィール】
いいだ・たかあき
河合塾講師*1968年三重県に生まれる。広島大学教育学部(理科)卒業後、同大学院理学研究科博士課程に在籍中の1995年より、河合塾広島校で生物を担当。2000年より、東京地区へ移籍し、現在、東大オープンや全統マーク模試をはじめとする模擬試験やテキストの執筆を手がけ、東京と広島を毎週往復し、生物の講義を行う。人気、実力ともに高い評価を得ている名物講師*著書に「こだわって!国公立二次分野問題集(河合出版 小畑成美・前田真共著)」がある。
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