進路指導・キャリア教育を推進する  
 
 キャリアガイダンス.net  
 PRODUCED BY RECRUIT  
 
 
HOME
ダウンロード
ワークシート・書類
統計データ
キャリア教育事例

過去記事の見出し検索
メールマガジン
リクルートサービス案内
進路指導関連サイト
編集部へのご意見・ご感想
メールマガジンTOP > 高校生がワカル、大人がカワル
キャリアガイダンス@メール
メールマガジンお申し込みはこちら
リレーエッセイ 高校生がワカル、大人がカワル
(2004年9月13日掲載)

 アメリカの大学では毎年7月から8月にかけてオリエンテーション花盛りとなる。筆者の勤めるメリーランド大学でも 9月に始まる新学期に先がけ、新入生、およびその親たちが団体で 1泊2日のオリエンテーションに連日押し寄せてくる。大学のキャフェテリア ( 学食 ) で食事をとり、ドーミトリー ( 学生寮 ) に体験宿泊してもらうのであるが、日中は大学ぐるみで親子別々に様々なプログラムが組まれている。筆者たちカウンセラーも、新入生がこの大学でサクセスするためにどうすればよいかについてミニ講義を行わねばならない。

 生き生きとして、張りのある、実り豊かな大学生活を送るための条件とは何か?

 アメリカ屈指の名門ハーバード大学が、学業で好成績を修め、大学生活全般において大いに満足していると答えた卒業生 1600人を対象に実施したアンケート調査結果がこの問いに答えるヒントを与えてくれる。この報告書から日本の現状に見合うと思われる項目をいくつか拾って考察してみよう。

まず一番に目につくのは「最低1人、できれば数名の教授と親しくなれ」である。アメリカの大学に限らず、教師と生徒の関係希薄化は日本の高校・大学教育でも深刻な問題となりつつある。真の教育とは単なる知識の伝達ではなく、教える者と学ぶ者との人間関係を基盤に、自己と社会、ひいては様々な現象を理解してゆく過程にほかならない。このプロセスにおいては、教師と生徒の積極的な関わりが不可欠とされる。これを無視して単に知識だけを提供することは、頭デッカチで性格に歪みがあったり、対人関係が未熟な人物を生んでしまう結果となりかねないであろう。

 ハーバードの調査はまた「外国語を学べ」と勧めている。アンケートに応じたエリート卒業生の60パーセントが、外国語学習は「キツイが本当に楽しかった」と回想す る。英語熱の高い日本人が喜びそうな結果であるが、なぜ外国語の履修が大学生活に満足をもたらすのであろうか?留学したいからといった、日本でありがちな理由とは全く違い、報告書によると「語学クラスは少数制で、サボることが許されず、しかもグループで勉強する機会が多い」からと指摘している。さらに「小さな試験が頻繁にあり、途中で1つのテストに失敗してもやり直しが利きやすい」という功利面も、成績を重視するハーバードの学生たちは見逃していない。このアドバイスが特に興味深いのは、外国語の習得そのものよりも、少数の集団で学ぶという学習環境に焦点が当てられていることである。先に述べた、教師と生徒の繋がり を縦糸 とする なら、ここで強調される生徒間の関係はまさに横糸と言ってよい。大学という環境のもと、この縦横2本の糸が織り合わさって、学生一人ひとりに個性豊かな人生の絵模様が創造されてゆくのである。

 調査結果にはこの他、「時間を考慮せよ」、「幅広い科目を取れ」、「グループで勉強せよ」、「文章力を身につけよ」など、ごく普通のアドバイスが目立つ。しかし、こうした当たり前の事柄こそ、学生生活を実り多いものにする根本原理と言えよう。それゆえ、これらはハーバード大学という恵まれた環境におかれた学生にとってだけでなく、日本をはじめ世界で共通するものだと考えてよい。

 オリエンテーションのミニ講義は、アンケートにリストアップされた最後の言葉、すなわち「学業以外にも多くのことを体験せよ」で締めくくられる。ハーバードの調査が明らかにしたところによると、勉強だけに打ち込む「ガリ勉タイプ」よりも、奉仕活動など学業以外にも精を出す「何でも見てやろうタイプ」の学生のほうがむしろ優秀な成績を収め、学生生活に対する満足度も高い。一言で言うなら、バランスの取れた、積極的な大学生活を送る学生がベストなのである。ハーバード大学卒業生が教えるこれらの教訓、日本の学生や教育者の方々にも示唆するところが多いのではなかろうか?

大谷 彰

【プロフィール】
おおたに・あきら
米在住カウンセラーメリーランド大学カウンセリングセンター、シニア・サイコロジスト。1955年大阪生まれ。高校在学中に米国オハイオ州へ1年間、家庭滞在留学を体験する。帰国後、上智大学外国語学部英語学科に入学し、卒業と同時に再度渡米、西バージニア大学院にてカウンセリング心理学を修める。教育学博士。ジョンズ・ホプキンス大学助教授を経て1989年よりキャリアと臨床心理のカウンセリング実践を行う一方、GCDFインストラクター、京都ノートルダム女子大学客員教授として日米で積極的に研修・講演活動を行う。著書に『カウンセリング・テクニック入門』(二瓶社)はじめ論文多数。

メールマガジンお申し込みはこちら
←バックナンバー ご意見・ご感想をお聞かせ下さい
 
 
 
RECRUIT