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リレーエッセイ 高校生がワカル、大人がカワル
(2004年10月12日掲載)

 10月に入り、センター試験まであとわずか。私立大の試験も近づき、我が塾生の質問も真剣みを帯びてきた。しかしここ数年、歳をとったせいか塾生の質問の意味がわかりづらくなってきた。

 「先生、よくわかんない…」→「何が?」→「いや、さっきの授業」→「授業のどの部分?」。このような問答を繰り返さないと、塾生の質問の本質にたどりつけなくなってきている。

 夏の終わり頃から、我が塾生の中には推薦入試やAO入試を受験する者がいて、志望動機などの書類をもってきてアドバイスを求めてくる。面接特訓の依頼もある。当然、一肌脱ぐのであるが、「なぜその大学を目指すの?」と聞くと、ほとんどの場合「えっ…」と言葉に詰まってしまう。「こんなとき、何と答えればいいの?」、「どうすれば、相手に印象のよい答え方ができるの?」と必ずこうなる。最初、私は「何も考えてないのか…」と思っていたが、問答を繰り返していくうちに、彼らは彼らなりに一所懸命で、なぜその大学を受けるのか、大学で何がしたいのかは深く考えており準備もしていたのである。優秀な受験生なのである。では、なぜこちらからの問いかけに言葉を発せられないのだろうか?

 どうやら今の子どもたちは、情報を入力する力は優れているようだが、情報を処理し、それを出力する(表現する)能力を鍛えていないようである。入った情報が脳の中にいっぱい詰まっているが、それを取捨選択して出力するのが苦手というイメージである。これはひとえに、普段のコミュニケーション不足に原因があるのではないかと思う。テレビもゲームも一方通行であり、情報だけが子どもたちの中にどんどん入力される。一方、子どもたちが情報を出力する機会は、塾生の話をきいてもどうやらあまりないらしい。そういえば、授業も一方通行である。クラブ活動や生徒会活動などがなく、学校や予備校で授業をおとなしく聞き、理解して帰るだけでは出力がうまくできなくてもこれは仕方がないことである。

  予備校講師というものは情報の出力のプロである。出力に秀でた分、出力の苦手な子どもたちの本質を理解できなくなっているのかもしれないと反省している。しかし、それにしても子どもたちから本音を引き出すのに苦労する。彼らに情報を出力できる機会をもっと提供し、辛抱強くこちらが子どもたちの本音を引き出せるようにしたいものである。そのための時間をつくることが大人の務めかもしれない。
飯田 高明
【プロフィール】
いいだ・たかあき
河合塾講師*1968年三重県に生まれる。広島大学教育学部(理科)卒業後、同大学院理学研究科博士課程に在籍中の1995年より、河合塾広島校で生物を担当。2000年より、東京地区へ移籍し、現在、東大オープンや全統マーク模試をはじめとする模擬試験やテキストの執筆を手がけ、東京と広島を毎週往復し、生物の講義を行う。人気、実力ともに高い評価を得ている名物講師*著書に「こだわって!国公立二次分野問題集(河合出版 小畑成美・前田真共著)」がある。
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