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キャリア教育ニュース解説
(2004年11月8日掲載)

 文部科学省は10月5日、命を大切にする教育の充実などを内容とした「児童生徒の問題行動対策重点プログラム」をまとめた。同プログラムに対する社会の反応は教育関係者も含めて鈍く、「事件が起こるたびの対症療法」「現場を知らない建前論」などという見方もないわけではない。確かに同プログラムを批判するのはたやすい。だが、やがて大人になる子どもたちへの対応として考えた場合、果たしてそれでよいのだろうか。

注目されない文科省の対策プログラム

 今年6月に起こった長崎県佐世保市の小六女児殺傷事件は、加害者と被害者が小学生、しかも同級生同士ということで社会に大きな衝撃を与えた。さらに7月には、富山県福光町で女子高校生2人組による殺人未遂事件、新潟県三条市では小学6年生男児が刃物で同級生を切りつけるなど、子どもが加害者となる事件が続発した。
 このため文科省は省内にプロジェクトチームを設置。佐世保市の事件を中心に現地調査や関係者からの事情聴取を行った上で、再発防止策を検討し、まとめたのが同プログラムだ。柱は、(1)命を大切にする教育の充実(2)学校で安心して学習できる環境づくりの一層の推進(3)情報社会の中でのモラルやマナーについての指導の在り方の確立――の3つとなっている。
 このうち、佐世保市の事件の原因が、ホームページの書き込みやチャットでのトラブルではないかと一部で指摘されていることから、インターネット上のマナー(ネチケット)の指導を徹底するという内容は、マスコミでも中心的に報道された。また、最近の問題行動の多発による生徒指導の強化という観点から、警察との連携体制づくり、保護者や地域住民による「生活指導推進協力員」の配置などの方策も、賛否は別にして学校関係者の注目を比較的集めている。
 これに対して、「命を大切にする教育の充実」という柱は、おそらく教育関係者も含めて社会全体でもあまり関心を持たれていないのではないか。文科省や教育委員会は、子どもが絡む重大事件が起こるたびに、さまざまな報告書を策定し、心の教育や生命尊重の教育の重要性を指摘してきた。しかし、いずれも事件後の「形式的対応」という印象を免れない。特に効果的方策が打ち出されているわけでもなく、従来から繰り返してきた建前論を述べている報告書など読む気にもならないというのが、学校関係者の偽らざる本音かもしれない。
  また、関心が薄い別の理由は、それを子どもへの指導や方策という具体的な形にすることが難しいということだろう。自分の学校で事件が起こったわけでもないのに、具体化が難しい抽象的理念の指導強化を求められても確かに困る。
 しかし、現在の社会状況に目を向けると、そうとばかりも言っていられない。昨年1年間だけでも中高年を中心に約3万4千人が、自ら命を絶っている。1日平均にすると100人に達する勢いだ。見ず知らずの若者同士が、インターネットで呼び掛け合い、集団自殺する事件も増えている。
 子どもはいずれ大人となり、自分自身の力で社会の中で生きていかなければならない。長い人生、何が起こるかわからない。現時点で学校内に問題がないからといって、命を大切にする教育を建前論だけで終わらせることが、子どもの将来のためにならないことは明らかだ。

今こそ、抽象論に終わらせない努力を
  神戸市連続小学生殺傷事件をきっかけに、兵庫県教委は1998年、中学2年生全員を対象に1週間体験活動を展開する「トライやる・ウィーク」を導入した。自然や社会に接するさまざまな体験を通して、生徒たちの自己認識の深まり、人間関係の充実、不登校の改善など成果を上げてきている。学校の通常授業を休みにして児童・生徒全員に体験活動をさせるという取り組みは、今でこそ全国的に広がりつつあるが、トライやる・ウィーク開始当時の教育界の常識では考えられない大胆な試みだった。
 体験活動は、「命を大切にする教育」の1つとして、同プログラムが挙げている方策だ。それだけではない。互いに気持ちを伝え合い、言葉で生活上の問題を解決していく能力なども求めている。命を大切にする教育は、自他の命を尊重することを直接的に学ぶ取り組みにとどまらない。今後、子どもたちが大人になり、社会を生きていく上で必要な資質を伸ばしていくための教育とも言えるはずだ。
 命を大切にする教育を抽象論に終わらせず、いかに具体的な指導や活動に結び付けていくのか。これまでの固定観念を捨てた上で、できることから着実に取り組んでいく努力が、今それぞれの学校に求められているのではないだろうか。
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問題行動対策プログラム策定 文部科学省(10月5日)
長崎県佐世保市の小6女児殺害事件など子どもによる重大事件の続発を受けて、文部科学省は10月5日、事件の再発防止に向けた「児童生徒の問題行動対策重点プログラム」を策定した。主な内容は、(1)命を大切にする教育の充実(2)安心して学習できる環境づくり(3)情報化社会の中の情報モラルやマナーの指導の確立−の3つ。命を大切にする教育の充実では、各教科や生徒指導を通じて、生活上のトラブルを言葉で解決する力の育成や互いに尊重しあう人間関係を構築するための指導の充実を図るほか、人間関係を広げるための体験活動などを一定時間実施するよう推進することなどが挙げられている。また、安心できる学習環境づくりでは、スクールカウンセラーの拡充など、子どもの変化を早期に発見するための体制づくり、問題行動発生時における学校と警察によるサポートチームの設置などを求めている 。 http://www.mext.go.jp/
b_menu/houdou/16/
10/04100501.htm
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