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リレーエッセイ 高校生がワカル、大人がカワル
(2005年2月7日掲載)

 『オニババ化する女たち』()という本が売れている。女性疫学者が書いたこの本の主張は、「女性は自分のからだに備わった機能にきちんと向き合い、20代のうちにきちんと出産をしなさい。そうしないとエネルギーが行き場を失い、いつもイライラしたオニババになってしまいますよ」というもの。

 この本が発刊されたのを知ったとき、私は「少子化を憂慮する男性は同意するかもしれないけれど、若い女性や働く女性たちは大反発するだろう」と思ったのだが、実際は女性読者にもとても好評だという。大学の女子学生たちに意見を聞いたところ、「オニババになるのはコワい。やっぱり私も早く結婚しようっと」などと、やはり本の主張を好意的に受け取っている人が多い。オニババをテーマに特集を組んだ女性誌もあった。

 結婚、出産をしない女性がエライ、と言う気はない。若い学生たちにその道を歩め、と奨励するつもりもない。晩婚化や非婚化の結果としての少子化が、日本の社会にたいへん深刻な影響を与える、というのもよくわかる。しかし、それでもなお、私は「自分の人生を決めるのは自分」と思うのだ。とくに、やっと選択の自由を手に入れた女性たちには、のびのびと自分のやりたいことをやる人生を歩んでほしい。その「自分のやりたいこと」が結婚や出産、という人はそうすればいいし、「とりあえずは仕事」「ボランティア活動を思いきりやってみたい」「外国で暮らしたい」と思う人はそれを実現させるべく、一生懸命、がんばればいい。

 ただ、今のところ、残念ながら時間を逆戻りさせることはできない。だから、人によっては「私は子育てに忙しくて仕事は十分にできなかった」ということもあれば、「私は仕事に全力投球した分、出産はあとまわしになっちゃって」ということもあるだろう。まさに「人生いろいろ」だが、その取捨選択も、基本的には本人の自由、本人の責任で行えるのがいちばん。もちろん、男・女に関係なく…。

 そう思って学生の指導を続けてきた私だが、「オニババ論」の思わぬヒットと支持を見て、考え込んでしまった。 21世紀になっても、「女には女の幸せ」というのがあるのだろうか。高校の現場で進路指導に携わっている先生たちは、そのあたりをどう考えているのか、尋ねてみたい気がする。

香山 リカ

【プロフィール】
かやま・りか
精神科医・帝塚山学院大学人間文化学部教授。1960年札幌市生まれ。東京医科大学卒。学生時代より雑誌等に寄稿。現在も臨床を行いながら新聞、雑誌で社会批評、書評なども手がけ、現代人の"心の病"について洞察を続けている。専門は精神病理学だが、テレビゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。主著に『切ない…。』(青春出版社)、『「愛国」問答』(中公新書ラクレ)ほか多数。
ホームページ:
http://www.caravan.to

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