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最前線!職業人インタビュー vol21
「地方から公務員の仕事は変わる!」独自の現状分析で積年の難問を解決
産業廃棄物の不法投棄に立ち向かう行政マン 千葉県環境生活部産業廃棄物課 副主幹 石渡正佳 氏
いしわた・まさよし1958年、千葉県生まれ。千葉県立佐倉高校、日本大学経済学部を卒業後、81年、千葉県庁入庁。96年4月から産業廃棄物課で産廃行政を担当し、現在、千葉県で活躍している産廃Gメン「グリーンキャップ」の創設にかかわる。01年4月からは、海匝(かいそう)支庁県民環境課で監視班のリーダーとして現場の調査チームを引率。税務調査も上回るほどの厳しい立入検査を行い、専門の財務分析により不法投棄への関与を立証する手法で次々に摘発。全国でも最大級の不法投棄常習地帯といわれた銚子市で、短期間のうちに不法投棄ゼロを達成した。そうして集められたデータの分析をもとに不法投棄の実態を構造的に解明し、02年に『産廃コネクション 産廃Gメンが告発! 不法投棄ビジネスの真相』(WAVE出版)を著した。著書はほかに『リサイクルアンダーワールド 産廃Gメンが告発! 黒い循環ビジネス』、『利権クラッシュ 日本列島分裂! 地方からの夜明け』(以上WAVE出版)、『不法投棄はこうしてなくす』(岩波書店)がある。
(2005年2月7日掲載)
※インタビュー:2004年12月9日

―今年、地球環境をテーマとした『愛・地球博』が開催され、環境問題への意識がますます高まってくると思われます。産業廃棄物の不法投棄問題もクローズアップされていますが、石渡さんの現在の仕事内容からお聞かせください。


現在は千葉県環境生活部産業廃棄物課の市原分室に在籍し、主に市原市周辺の産廃の不法投棄現場を監視し、発見した場合は投棄者に撤去させるまでのことを担当しています。いわゆる“産廃Gメン”ですね。メンバーは、緑色の帽子を被るので「グリーンキャップ」と呼ばれています。帽子のエンブレムは私がデザインしたものです。私がこの問題を産業廃棄物課で最初に担当した当時、パトロールは昼間だけ行っていたんですが、行った時は不法投棄されてしまった後ばかりでした。不法投棄は、見つかりにくい夜中に行われることがほとんどだったんですね。そこで私の発案で、夜中もパトロールを行うようにしたんです。そうしたらつかみ取り状態(笑)。昼も夜も同じ担当者では疲れ果ててしまうので、翌年から昼夜のパトロールチームを分けました。これが現在のグリーンキャップになりました。私は現在、昼間の担当で、不法投棄現場に急行し、測量や環境調査を行い、廃棄物の中から証拠となるものを収集し、ルートを解明して誰が廃棄したのかを割り出して、撤去を命じています。悪質な場合は警察と連携して逮捕に至らせます。

―公務員がそこまでやるものなのですか。

いいえ、もっとハードです。中には筋金入りのヤクザもいます。胸倉をつかまれることぐらいは珍しくありません。産廃の担当になって1カ月のうちに、業者間のトラブルで発砲騒ぎにも遭いました。警察からは、危険なのでその現場には近づくな、と言われました。それを守り、犯人が捕まった後に現場に行きました。しかし、その逮捕までの3カ月間に10万トンの産廃の山ができていました。首謀者はその後死亡し、産廃の山はいまでもそのままです。警察は逮捕すればそれで終わりかもしれませんが、我々の仕事は産廃の山を撤去するまで終わりません。だから、不法投棄させないことが大事だと痛感したのです。そこで夜間連続パトロールに加えて、常習現場の入り口に杭を打ち込んで強制封鎖したり、不法投棄に関与した県外の施設の立入検査をしたりといった方法を考えました。

―それで実際にどのような成果が上がったのでしょうか。


公式の統計では、99年には千葉県で18万トンあった不法投棄が、03年には1.2万トンまで減りました。15分の1です。全国規模では、99年は43万トン、03年は過去最悪の74.5万トン(※1)です。シェアで言えば、99年は全国の約42%の不法投棄が千葉県で行われていたのが、03年では1.6%まで下がったということになります。県庁と県警との連携が最大の要因。特に、千葉県警には全国で唯一「環境犯罪課」があり、不法投棄摘発の気運が高まってきました。そのほか、デフレと不況で住宅ブームも去る中、中国が廃プラスチックを資源ゴミとして買うようになるなど、不法投棄の基礎条件が下がり基調になっていた時に対策を打ったことが効いていると思います。

―それにしても、なぜ千葉県でそんなに不法投棄が多かったのでしょうか。


砂利採取の跡地の穴を持っているなど、不法投棄を呼び込む業者が千葉にいたからです。東京のゴミは最初、埼玉や神奈川に持っていかれ、最終的に千葉に運ばれるんです。しかし、千葉県が厳しく取り締まれば、それらは他県に持っていかれるようになるでしょう。いたちごっこの状態です。背後で不法投棄ビジネスをたくらんでいる暴力団は全国組織です。が、実際に現場で不法投棄をしているのは末端の業者。彼らは逮捕されても自分だけの罪にして、決して黒幕である暴力団が共犯になるようなことは言いません。ですから取り締まりだけでは限界があるんです。

―なるほど、言わば全国の不法投棄問題の縮図が千葉県だったのですね。ところで、その千葉県で実際に産廃処理を担当する地方行政マンとして、不法投棄がそもそも起こる理由をどう考えますか?

法律ができるまでは、産廃を自分の土地に埋め立てるのは自由でした。それが、法律ができてから産廃の埋め方が厳しくなった。厳しくなった分だけ、その受け皿となる施設を作ることが必要なんですが、それが用意されていないんです。大気汚染も水質も、環境に関する法律はみんなそんなふうに後から規制ができます。計画では、必要な施設を作ることになってはいますが、産廃には補助金がつかないこともあって追いついていないんです。いわば法律だけ作りっ放しの状態。「施設がなければ法律を守りたくてもできるわけないじゃない」ってみんな思っていますよ。実際、不法投棄現場で業者に「どこに持っていけばいいって言うんだ」と迫られても、こちらとしては一言もないんです。国の環境行政の失敗だと思っています。

―そうなんですか。

日本の行政のシステムは、国と自治体の2階建て構造でできています。国が法律を作って自治体がそれを執行するわけですが、国は「法律は完璧。それをそのとおりやらない自治体が悪い」と言い、自治体は「守れない法律を作る国が悪い」と言って責任をなすりつけあっている。誰も責任を取らないのは、地方で産廃問題を担当して痛感したことです。それは、教育も医療分野も、みんな同じ構造ではないでしょうか。

―石渡さんは、どうしていけば良いとお考えでしょうか。


環境省に何かしてほしいとは思っていません。法律だけでは解決できませんから。現場を担当する私たちの頭で考えて解決策を探るしかない。行政にせよ、企業にせよ、実際に環境を守るにはお金がかかります。環境の維持と経済の発展は二律背反のところがありますが、だからといって経済成長を止めても環境を守ればいいというキャッピング(※2)の発想では意味がないと思います。環境を守ることがビジネスとして成立する世界にすれば、どんどん効率的になる。お金を稼ぎながらどうやって環境を守っていくかが知恵の出しどころでしょう。そういうふうに経済原理を上手に使いながら環境施策を考えていきたいと思っています。

―石渡さんは、敢然と、ただし現実的に問題を解決することにこだわっておられるように思います。ほかにそういったご経験をされてきたことは。

一番大きかったのは、九十九里浜にあった海の家の不法占拠問題でしたね。国有地である海岸に夏の間だけ海の家を建てることを、国から事務委任された県が許可を出しているのですが、夏が過ぎても撤去されないばかりか、中には鉄筋コンクリート造り3階建ての家まであり、そこで生活をしていたんです。オーナーにはヤクザも含まれており、また地元の観光施設として必要だと商工会からも要請され、ズルズルと黙認を続けていました。91年4月に用地課に異動してその案件を担当することになり、上司と現地に行ったところ、コンクリートで基礎を打った100坪もの家が15軒、建て替え工事の真最中。海の家の許可が下りるのは7月からですが、それでは基礎工事が間に合わないので3月から始まっていました。その年は不法占拠が始まって18年目で、阻止しないと20年で国有地の所有権が消滅時効になってしまいかねない。同行した上司が「困った」と言うので、「ならば訴訟を起こすしかないでしょう」と言って、強制撤去に向けて踏み出すことにしました。地元からは「町の観光を潰す気か」と猛反発されましたが。

―海の家を観光資源として期待する地元住民とのせめぎ合いもあったのですね。それでどうなりましたか。

裁判には5〜6年かかって、勝訴しました。結果的には撤去前は13万人だった海水浴客が80万人まで増えました。何もない海岸の方が観光にもよかったわけです。地元の観光協会が危機感を持って様々な集客策を打ち出したことも大きかったと思いますが。

―18年目で断固、裁判に臨むことを決めた時はどんなお気持ちでしたか。

県庁職員はずいぶん甘く見られていたもんだと思いましたね。県庁だってやる時はやるという公務員としての意地の姿勢を見せないと、何ごとも守られませんよね。また、法的に解決するにも、不動産侵奪罪の告訴、民事訴訟の提起、行政代執行という刑事・民事・行政の3つの方法が考えられ、上司や東京法務局の検事とどの方法が最適かの検討を重ねました。私は法学部出身ではないので、勉強もかなりしましたよ。結果的に民事訴訟で建物収去土地明渡しを求めることにしました。こういった方法論の検討もいい訓練になりましたね。

―やはり、正義感のようなものがあったのでしょうか。

法律か観光振興かどちらを取るかということを最初は悩みましたが、最終的には海岸は自然のままが一番で、ヤクザが不法占拠している海の家は観光資源ではないだろう、という原点に戻っただけですね。18年もの間「できない」と思われたことができたし、観光振興にとっても結果的にはプラスになったわけで、この経験がさらなる難問であった産廃の不法投棄の解決にも生きたと思います。
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