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基礎から分かる教育トピック キャリアガイダンス@メール
「学力テスト」〜本当の学力向上は図れるのか〜
 学力向上策の一環として学力テストを実施しようとする流れが、国※1、自治体のレベルで広がっている。しかし、ペーパーテストの実施を広げさえすれば、これからの時代に必要な学力が、本当に向上するのだろうか。
米国の教育改革でも大きな批判
 米国では2001年以来、すべての州で学力テストを実施して学力を保障しようという教育改革を進めています※2。しかし私が2003年に在外研究員として現地に行ってみると、多くの人がこの制度を批判していました。テスト対策のために詰め込みの勉強をさせている学校が多かったり、成績の悪い生徒に試験を受けさせないようにしている学校があったりするなど、日本の昭和30年代の全国学力テスト※3で起こったような問題すら聞こえてきました。
 日本で学力テストの実施が検討されているのも、学力低下に対する国民の不安に応えよう、ということが大きな動機だと思います。もちろん文部科学省は、かつての全国学力テストのような「負の側面」が起きないよう、細心の注意を払って実施しようとしています。しかし、学力テストを毎年行いさえすれば学力が上がるだろうと考えている人が多い現在の風潮の下では、昭和30年代の日本や今の米国と同じ問題が発生する危険性があります。
解決策は、日本の学校の「伝統」にあった
 学力の向上に目覚しい成果を上げた学校や地域に行ってみると、学校の教師全員がやる気を出していることが共通して観察されます。しかもそうした教師たちが、子どもの発言を引き出し、思考力を伸ばすような授業に力を入れた結果として、テストでも好成績を上げることができたのです。ペーパーテストの点数を上げることだけを意図した授業をすれば、短期的には成績が上がっても、長期的にはかえって悪くなるでしょう。心や体もいっしょに伸ばしてこそ結果として知的側面も大きく伸びていくのであり、「文武両道」こそが本当の学力につながります。
 保護者にも実は、教師の仕事を理解している方がたくさんいます。子どもの成績が上がったかどうかだけでなく、よくクラスをまとめているとか、授業の準備を熱心にやっているなどの点を、ちゃんと見ているものです。教師同士の会話でも、指導力の高い教師への評価はほぼ一致しており、ペーパーテストの成績とは別の視点で評価されています。
 米国では意外なことに、日本の授業研究がブームとなりつつあります。実は日本には、授業のいとなみを深く洞察できる教師も保護者も多いという「強み」があるのです。この強みを生かして、子どもの成長や教師の仕事を、ペーパーテストの結果だけでなく総体的に評価することが重要だと考えています。(談)
 
この人が解く!
  国立教育政策研究所主任研究官 千々布 敏弥 氏
 
キーワード
*1 国レベルでの学力テスト
 文科省は、従来ごく一部の小・中学校に限定していた「教育課程実施状況調査」のペーパーテストを、2002年から数十万人規模に拡大するとともに、高校生も対象に加えた。2007年度からは新たに小・中学生対象の「全国的な学力調査」を実施することを目指しており、先ごろ検討会議を発足させた。
*2 米国教育改革での学力テスト
 ブッシュ政権は2001年の発足に伴って、「ノー・チャイルド・レフト・ビハインド(すべての子どもが落ちこぼれないように)法」を制定。連邦政府の補助金によって各州が学力テストを実施し、その結果を公表させることによって学力向上を目指している。
*3 昭和30年代の全国学力テスト
 日本では1956(昭和31)年から66(同41)年まで、全国学力調査が実施された。学習指導要領改訂の資料とすることが目的だったが、テスト対策の授業が行われたり、成績の振るわない子どもを欠席させたりするといった問題が各地で起こり、日教組を中心に激しい反対闘争も繰り広げられた。
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