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基調講演 : 「わたしの改革“いま教育に求められること”」
_キャリア教育の本質とは、「世の中のあらゆることの統合」にある_

基調講演 : 「わたしの改革“いま教育に求められること”」
_「異質との出会いこそが人を育てる」を理念に学生と社会との出会いを支援_

基調講演 「わたしの改革“いま教育に求められること”」
キャリア教育の本質とは、「世の中のあらゆることの統合」にある
東京会場●東京都杉並区立和田中学校長 藤原 和博 氏

東京都の公立中学校初の民間出身の校長に就任し、「学校の革新」という公的なプロジェクトに挑戦している藤原和博氏。「世の中のあらゆることが統合される本質的なキャリア教育」を目指す「よのなか科」という授業を、自ら教壇に立って実践している。この授業を題材に、いま学校や教師がなすべきことを鋭く喝破した。

友人の発言で広がる、世の中の奥行きと世界観
 講演冒頭でまず和田中「よのなか科」の紹介VTRが流れる。外部講師らしき中年男性や多数のオーディエンス。生徒たちが目をみはったり口々に発言する様子が放映される。続いて、本人も驚くほど似ているさだまさし氏との交流について会場を沸かせたのち、「“心の教育”が必要だとなると、ビオトープをつくって済ませているような教育界は思考停止状態にある。キャリア教育も同様で、単一のカリキュラムでは豊かなキャリア観を育むことはできない」。キャリア教育をめぐる教育界の現状に対しての強い問題意識を口にした。
 藤原氏が考えるキャリア教育の本質とは、「全教科が包括されるような、“世の中のあらゆることの統合”にある」(藤原氏)。そこで、より理想に近いキャリア教育として、自ら考案し、実践しているのが週1回の授業「よのなか科」だ。
 例えば「人間の知恵で商品の付加価値はどれだけUPするか」といったテーマが設定される。教材にはゴム製品など、ごく身近でありきたりなものが選ばれる。「身近な素材だと触れるたびに子どもが授業を想起する」(藤原氏)ことを意図している。100円ショップに行くと分かるが、輪ゴム1箱なら300本で100円(1本0.3円)、風船10個も100円(1個10円)、笛つきの風船だとこれが一つで100円、と徐々に付加価値がつけられていく例が説明される。
 次に、参加者(生徒、保護者、見学者ら)は「自分ならどんな商品をつくるか」と問いかけられる。「自然に帰るタイヤ」「ガラスのように透き通ったゴム」などのアイデアを生徒が発言する。「これを繰り返していくうちに、普通の友だちの言葉を聞きながら世の中の奥行きを知り、世界観が広がっていく効用がある」と藤原氏は述べる。
“教育的瞬間”をどれだけ体験させられるか
 そして、ゲストが登場する。杉並区内にある、生徒たちにはなじみのない化学メーカーの経営者。しかし、その会社がつくる製品は付加価値の固まりなのである。時計の文字盤に使われる夜光塗料が1kg100万円もする、という事実を告げられた時、一同は「エーッ!」と声をそろえて驚く。ゲストの話に、全員が食い入るように耳を傾ける。「これが“教育的瞬間”。一生忘れない体験になる。こういった発見をどれだけ生み出せるかで、自分も世界を変えるような仕事をしたい、と思わせることができる。これがキャリア教育なのではないか」と藤原氏は力説する。
 ちなみに、藤原氏はゲストの人選や活用の仕方も試行錯誤してセオリーをつかんだという。「総合的な学習の時間に招いて講演してもらってもダメ。どんな有名人でも、45分間生徒の心をつかんで話ができる人は非常に少ない」。むしろ、前述のような知る人ぞ知る技術力を有している企業経営者などに、授業のなかで登場していただくのが効果的だという。「私が探し出した夜光塗料の会社の経営者は、この時初めて学校で話をしたという。こんなに身近にすごいキャリア教育の題材があったにもかかわらず、これまで誰一人として見つけ出さなかった」と藤原氏は舌鋒鋭く語る。
 また、「よのなか科」の授業は、ロールプレイングやシミュレーションなど、ゲーム的な手法を駆使している。「当事者として参加させることで、自分のこととして考えるようになる」(藤原氏)という効果があるのだ。
大人が学ぶ姿に子どもは学ぶ
「よのなか科」では、保護者や見学者も参加することを要請される。過去、文部科学大臣も、生徒と同じワークシートに自分の考えを書き込んだ。「子どもは身近な大人が学ぶ姿勢から学ぶ。例えば、本を読まない大人が周りにいれば、子どもも本を読まない。子どもは大人をよく見ている。決してだまされない」と藤原氏はそのねらいを述べる。
 最後に、民間企業から教育界に転じ、教員の実情を見て驚いたことを踏まえ、藤原氏は次のような問題意識を唱えた。
(1)本を読まない教員が多い。藤原氏の著書を1冊も読まずにはるばる和田中学校まで見学に来る教員もいる。
  そういった教員が、どうして生徒に「本を読め」と言えようか。
(2)インターネットを使える教員が少ない。それでは満足な情報収集もできない。
(3)異分野の人との交際がない。自腹を切ってでもつき合うべき。
「学校経営を教職員だけで行う時代は終わった。地域や保護者も経営のパートナーに巻き込んで、共同責任で行っていかなければいずれ行き詰まる」(藤原氏)。
 2003年4月の校長就任以来、5000人にも及ぶ見学者をはじめ、マスコミにも注目されている藤原氏と「よのなか科」。その迫力あるライブにセミナー参加者も圧倒された一時間だった。
基調講演 : 「わたしの改革“いま教育に求められること”」
「異質との出会いこそが人を育てる」を理念に学生と社会との出会いを支援
大阪・名古屋会場●東京大学副理事・キャリアサポート室長 竹原 敬二 氏

民間企業でキャリア教育研究プロジェクトに携わり、東京大学の副理事に転じて「キャリアサポート室」を立ち上げた竹原敬二氏。なぜ東大で「キャリアサポート」なのか。その背景と、「異質との出会いこそが人を育てる」という理念のもとに、東大生が社会と出会うために取り組んでいる施策についての報告があった。

生き方について、考えが深まらずに苛立つ学生
 1970年代以降の大学における就職活動の変遷を振り返ることから、竹原氏の講演は始まった。70年代、大学生の就職には教授推薦が主流だった。80年代に入ると、大学進学率の向上とともに就職先への自由応募が伸張する。90年代、情報化社会の進展とインターネットの出現、バブル経済の崩壊により、価値観の多様化が進む。そして2000年代。「就職氷河期」となった未曾有のデフレ不況と、それからの回復による空前の売り手市場が待ち構えている。「しかし、学生の悩みは深い」と竹原氏はいう。
「就職活動を前にしている学生たちは、決して楽しそうではない。生まれて初めて自分の生き方を真剣に考えなければならない局面に立っても、考えが深まらないことに苛立っている」。竹原氏らが東大の卒業生に大学の就職支援の必要性についてアンケートを取ったところ、学部卒者の70%、文科系の修士生に至っては、81%もが「もっと組織的に支援してほしかった」と回答している。「大学3年・修士1年の時点で、急に社会に出てやりたいと思うことを考えろ、と言われても唐突すぎるのではないか。中学・高校時代から人生観・キャリア観を養っておくことが必要で、そのためにも多彩な人々とのふれあいが大切」と竹原氏は指摘する。

カリキュラム選択は、人生プロセスのデザイン
 そこから、「異質との出会いこそが人を育てる」という、大学における望ましいキャリア形成のあり方が導き出された。「凄みのある先生や先輩との出会いが学生にインパクトを与える。しかしただ会わせるだけではなく、ちゃんと人を見ることができるように仕向けることがキャリア教育の重要なポイント」(竹原氏)。この考え方が導かれた背景には、竹原氏が東大に転じる前、民間企業で取り組んでいたキャリア教育研究プロジェクトの成果があった。同プロジェクトでは、欧米諸国のキャリア教育の実態調査などが行われ、その結果が同学のキャリア形成支援サービスの参考にされている。同学のサービス内容は大きく次の3つに分かれる。
(1)「知の摩擦プロジェクト」
(2)新入生ガイダンスの変革
(3)全国の高校生への大学説明会
 (1)は、学生とOB・OGが交流する仕掛けづくり。国家公務員、民間企業の社員、研究者、起業家、フリーランスなど、様々な職業に就いている100人強のOB・OGと300人ほどの学生が適宜、仕事などについて自由にディスカッションを行う、というもの。その場だけに終わらず、自主的なゼミが設けられてその後も交流・研究活動が行われている。
 (2)は、まず、先輩学生が各授業のリコメンドメディアを作成し、新入学生に配布することから始められている。
 (3)は、優れた研究者である教員が、大学で行われている学術研究の素晴らしさなどを語る、というもの。
「(2)(3)で、カリキュラムを選択するということが、人生の目的を踏まえてそのプロセスをデザインするということなのだと理解してもらいたい」と竹原氏はそのねらいを語る。
偏差値ではなく、やりたいことから大学の選択を
 こうした施策を大学が行うのと同時に、高校でも行えることはたくさんあるはず。竹原氏は次のような4点を要望した。
 まず、偏差値に応じて受験する大学を選ぶのではなく、○○がやりたいから●●大学の△△学科に進学する、という選択をしてほしい、ということ。
 そして、大学または社会に出てやりたいことが漠然でもあることが大切、ということ。 その次に、いかなる職業であれ、何かを獲得するためにはほかのやりたいことをあきらめ、頑張ることや集中する力が必要だということ。
 最後に、大学は高校と社会を結ぶポイント。高校からぜひ要望を寄せてほしい、ということである。
「30年間光合成の研究一筋、という友人が東大にいる。彼は高校1年生の時に出会った地学の先生の話に打たれ、物事を突き詰めていく生き方に引かれてその道に入った。このように、高校の先生は生徒をわが子のように思い、良いところをどんどん引き出すのと同時に、“知る”“わかる”ということの面白さを伝えてほしい」
「忙しいことは存じ上げているが、先生自身にももっとキャリア研究をしてほしい。1人の先生が毎月1人の職業人と会えば、1校に20人の先生がいるとして一年間に高校として240職種の人と会える。そういった試みが大切ではないか」と、具体的な提案・要望を述べた後、東大の法人化後の改革について言及し講演は終了した。「改革により、日本はおろか世界の知の頂点を目指す」(竹原氏)という東京大学で始められたキャリア教育の試みは、他大学へ影響を及ぼしていることは無論だが、直接伝えることによって高校現場へもインパクトを与えた。
ワークショップ:バーチャル・カンパニー体験ワークショップ
身近にある問題を解決し、新しいものを創造する活動を通じて、社会の一員としての責任や役割を習得していく「アントレプレナー教育」。アントレプレナーシップ開発センターがその指導者を育成するワークショップを開催する。対象は、高校および大学の教員。企業運営や電子商取引を体験する、国際ビジネスのシミュレーションプログラム「バーチャル・カンパニー」を展開する。
【日時】 2006年3月24日(金)13:00〜16:40
【会場】 京都リサーチパーク西地区4号館1階Co-semi(コウゼミ)
【対象】 高校・大学の教員
【参加料】 3000円(資料代含む)※定員20名
【申し込み】 下記メールアドレスに氏名、所属学校名、住所、連絡先、担当学年を記入の上、申し込む。
info@entreplanet.org
【詳細】 http://www.entreplanet.org/whats_new/2006vcworkshop/3.26vcindex.html
【主催・問い合わせ】 アントレプレナーシップ開発センター
京都市下京区中堂寺粟田町93京都リサーチパーク スタジオ棟
電話:075-315-9103 FAX:075-315-9134
http://www.entreplanet.org/
シンポジウム:キャリア教育シンポジウム
政府がニート問題の解決策の一つとしてキャリア教育を推進する現状を踏まえ、キャリア・コンサルタント・シンポ実行委員会は、キャリア教育の実践事例やノウハウに関するシンポジウムおよび分科会を開催する。立正大学助教授の宮城まり子氏の記念講演も行われる。
【日時】 2006年3月19日(日)9:40〜17:00
(全体会9:30〜14:40、文教部門分科会14:50〜17:00)
【会場】 昭和女子大学(グリーンホールおよび教室)
東京都世田谷区太子堂1-7
http://www.swu.ac.jp/showa/access.html
【受講料】 4000円 ※定員 全体会650人、文教部門分科会200人
【詳細】 http://www.kknews.co.jp/sigaku/
【主催・問い合わせ】 全体に関しては…キャリア・コンサルタントシンポジウム実行委員会事務局
電話:03-5805-3251
文教部門に関しては…教育家庭新聞社:03-3864-8241
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