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リレーエッセイ:FORZA! キャリアガイダンス@メール
現役医師が見ている「教師のこころ」 生徒が好きですか?
 近頃、先生方と話していて気になることがあります。それは、「生徒が好きだから教師をやっている」というセリフです。もちろん、生徒がキライでは教師はつとまりません。子どもたちとの交流が教職のやり甲斐そのものであることもまちがいないでしょう。それを否定するつもりはありません。

 けれども、同じことが私ども精神科医についても言えます。「患者さんが好きだから医師をやっている」とは、正直なところ私にはとても言えません。私が精神科医として未熟だからでしょうか? 少なくとも20年以上精神科医として診療に携わってきて、今の私に言えるのは、「こころを病んだ患者さんを放っておけない」、「悩んでいる人を見ると何か役に立ちたい」という理屈ぬきの想いです。疲れ果てながらもたくさんの患者さんを診療することができるのは、そうした想いと職責を果たさなければという考えからです。患者さんのなかには、いわゆる相性の悪い方もいますし、なぜこの人の主治医なんだろうと悩んでしまうことだってあります。

 先生方も、実際のところはそうではないでしょうか。生徒と接する時間も十分にとれないほど多忙化した学校現場で、疲れ果てながらもプロとしての教育活動を営むことができるのは、「生徒のことを放っておけない」とか「教育者としてできるだけのことをしてあげたい」という想いに駆られてのことでしょう。よほどの達人でない限り、そういった人間味が教師にも精神科医にもあると思います。どちらも人間関係を扱う職種だからこそ、です。反対に、「生徒が好きだから」とあっさり言える先生は、どうも心配です。私の臨床経験からして、そういう先生はストレスに弱くてこころの病気になりやすかったり、いわゆる力量の乏しい方が少なくないのではないか、と思うからです。

 つまり私が申しあげたいのは、ますます厳しさを増す昨今の教育事情のなかで、「生徒が好き」だけではやっていけないということです。あくまで子どもたちを専門的視点から見つめ、課題を発見して関わっていく洞察力と行動力が欠かせないのではないでしょうか? やさしさだけでなく、そのような視点と力量をもった先生こそがプロの教育者としての「機能」を発揮し、しかも同時にストレスフルな学校現場で自分の「健康」も維持できるのではないかと思います。いや、そうあってほしい、と切に願います。

 さあ、本連載はこうした先生方にエールを送るべくスタートします。全国でもっとも多くの先生方が受診される職域専門病院に勤務する一精神科医の思いつきが少しでもお役に立てれば、と念じています。
 
 
  社団法人東京都教職員互助会 三楽病院精神神経科 中島 一憲 氏
 
なかじま・かずのり
1956年、広島県生まれ。1982年、東京医科歯科大学医学部卒業。精神科医、医学博士。1990年より社団法人東京都教職員互助会三楽病院精神神経科に勤務。1999年、同部長。2006年より東京都教職員総合健康センター長兼務。東京都教育庁委嘱医。東京医科歯科大学臨床教授。日本学校メンタルヘルス学会運営委員など。主著に『先生が壊れていく―精神科医のみた教育の危機』(弘文堂)、『あなたの学校は大丈夫ですか? 教師のメンタルヘルスQ&A』(ぎょうせい)、『こころの休み時間―教師自身のメンタルヘルス』(学事出版)、『教師と子どものメンタルヘルス―診察室からみた社会と教育』(東山書房)などがある。
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