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リレーエッセイ:FORZA! キャリアガイダンス@メール
現役医師が見ている「教師のこころ」 働きすぎていませんか?
 連載初回の「生徒が好きですか?」には、多くのご意見や感想をいただきました。「目からうろこが落ちる思いがした」などのありがたいご感想や、反対に「もっと広い愛を」といった考えさせられるご意見もありました。それらを読ませていただきながら、先生方は本当に生徒のことをまっすぐに見ておられるのだな、という思いがして頭が下がりました。

 さて、さまざまな問題が山積し、ますます多忙化する学校現場。読者の先生方は働きすぎていませんか? 私も診察中に「働きすぎないで」と患者さんに言うことがよくありますし、私自身も知人や職場の仲間から言われる言葉です。まあ、これは挨拶のひとつと考えればよいのかもしれません。でないと、「すぎるとはどういうことだろう。どこでそれに気づけば健康を害しないで済むのか?」とかえって悩んでしまうことにもなりかねないからです。けれども、ストレスフルな教職業務に疲れ果てて具合を悪くした先生方が回復された後に、「がんばりすぎていました。これからは、『いい加減』にバランスをとりたいと思います」とおっしゃる言葉には、やはり考えさせられるものがあります。

 前回、プロの教育者としての「機能」を発揮し、しかも同時に自分の「健康」も維持してほしい、と述べました。ところが実際には、この機能と健康のバランスをとるのは案外難しいものです。自分の健康だけを考えて同僚の先生に分掌業務を押しつけても平気というのでは困りますが、仕事熱心のあまり過労死も辞さないというのもさすがに心配です。ではどこで線引きをするか? たとえば労働安全衛生法などでは、1カ月間の時間外労働が80時間〜100時間を越えた場合、過重労働による健康障害のリスクが増大する点に注意を喚起しています。しかしながら、こうした数字は一つの目安としては重要ですが、実際にはさまざまな個人的要因を考慮する必要があります。ちょうど生徒の進路指導をする場合に偏差値だけではなく、一人ひとりの適性や志向を重視することと同様ではないでしょうか。

 結局のところ、まずは「このごろ働きすぎているな」と自分で気づくことが大切です。私の診療経験からも、過労の自覚がない場合に心身に変調を来たされる先生が少なくないことを痛感するからです。そのうえで自分の勤務状況と客観的に照合しながら、「ここから先はもう自分をいたわろう」と思いきるラインを見つけ、実際に生活のメリハリをつけることでしょう。

 また一方では、「働きすぎないで」と同僚の先生方と声をかけ合う思いやりというものが、たとえ挨拶だけに終わったとしてもとても大切です。それこそがカウンセリングマインドの始まりでもあるわけですから。
 
 
  社団法人東京都教職員互助会 三楽病院精神神経科 中島 一憲 氏
 
なかじま・かずのり
1956年、広島県生まれ。1982年、東京医科歯科大学医学部卒業。精神科医、医学博士。1990年より社団法人東京都教職員互助会三楽病院精神神経科に勤務。1999年、同部長。2006年より東京都教職員総合健康センター長兼務。東京都教育庁委嘱医。東京医科歯科大学臨床教授。日本学校メンタルヘルス学会運営委員など。主著に『先生が壊れていく―精神科医のみた教育の危機』(弘文堂)、『あなたの学校は大丈夫ですか? 教師のメンタルヘルスQ&A』(ぎょうせい)、『こころの休み時間―教師自身のメンタルヘルス』(学事出版)、『教師と子どものメンタルヘルス―診察室からみた社会と教育』(東山書房)などがある。
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