十数年間に及ぶ航空管制業務や航空管制官の教育訓練企画などに従事した経験を生かし、現在、航空保安大学校で教官を務め、次代の航空管制官を育成している中川知子さん。「知識やスキルはもちろんですが、それ以上に大切な『人命を預かる仕事』というマインドを教え込むことに力を入れています」
市街地や山間部、海沿いなど、空港がある場所の地理的条件に応じて管制業務の特性は異なり、航空管制官は赴任地が変わるごとに訓練を受け、試験に合格しなければ業務を行うことができない。中川さんは、航空管制官としては埼玉県所沢市にある東京航空交通管制部や東京空港事務所(いわゆる羽田空港)の管制室で仕事をしていた。航空交通管制部では、主に巡航高度にある航空機に対して他機との交錯を避ける指示を、市街地の大規模空港では騒音など様々な制約がある中で効率的な離着陸を行うための指示を出す。それらの知識やスキルは異なる。「その都度、訓練を受けて資格を得るのは大変ではありますが、資格を増やすごとに航空管制官としての幅が広がる実感があります」
航空管制官は、目視またはレーダーを見ながらパイロットと交信し、機器の入力操作、運航票と呼ばれる紙面への情報記載など、同時に複数の作業を行わなければならない。さらに相手は音速に近い高速で飛行する航空機であり、何事も即断即決が求められる。例えば、「燃料が不足しているから着陸の優先度を上げてほしい」という要請がパイロットから入ると、その危険度を瞬時に判断し、即座に周辺を飛行する関連航空機に待機や回避指示等を発出し、適切かつ迅速に対応しなければならない。悪天候への変化、航空機のトラブルなど、緊急事態は常に背中合わせ。強い精神力やストレス耐性が不可欠だ。「それだけに、最後にパイロットから『Thank you!』と言われると充実感を覚えます」。パイロットも航空管制官も、乗客の命を預かる仕事。「航空管制業務は、ほかの管制官やパイロットとのチームワーク。同じ目的を共有している一体感が魅力ですね」 |