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リレーエッセイ:FORZA! キャリアガイダンス@メール
「マニュアル回答がなぜダメなのか?」

 今回は「マニュアル回答がなぜダメなのか?」ということについて述べますが、この点について前回、とりわけ「自分自身が実際に経験し、感じてきた言葉で、受験している会社に対する思いや、これまでの自分の経験を語ることこそがなによりも大事だ」とご紹介しました。ただし、くれぐれも「マニュアルに書いてある回答そのものがダメ」というわけではないことに注意していただきたいと思います。

 例えば志望動機を訊かれたら、「御社の将来性に惹かれて……」と答えるのがイチバンだとするマニュアル本があったとしても、回答そのものはまったく問題ありません。

 ただ仮に、問題があるとしたならば「御社のどこに将来性を見たのか?」を付け加えることこそが、前述した「思い」の表現に繋がるということです。そして、その「思い」の表現そのものは、決してこなれたものでなくともいい。いや、むしろ高校生らしいもの――つまり「素直で朴訥なもの」の方がむしろ、やや皮肉な物言いではありますが、いまや「ひねくれてしまった?」面接官の心を打つのだと思います。

 ちなみに、今年の夏の話題を一気にさらったものに、早実のハンカチ王子こと斎藤投手の活躍がいまだ私達の記憶に新しいと思いますが、どうしてあれほどまでに「大人の心」を掴んだのか、仮に学ぶべきものがあれば彼の人気の秘密にこそあるように思います。

 たしか彼が大学進学を決めた記者会見後のシーンのことでした。手短に自分の進路について、大勢押しかけた記者に訥々と自分の決断を話した斎藤くんが、両脇を固める学校関係者と伴に退席する際に、それは起きたのです。
いや、なにもそんな大それたことが起きたわけではなく、ただ先生方と自分の椅子を、キチンと元に戻した上で退席するという、「ごく当たり前のことを自然にやってのけただけ」のこと。

 ですが、それを認めた記者の多くが大きく報道した事実にこそ着目しましょう。なぜなら、このような「ごく当たり前のこと」すらできていない子が多い現状があるからこそ、目上の人である「先生の椅子をキチンと戻す」というごく自然な彼の姿が、言葉で語るより何倍もの説得力をもって彼の「人柄」というものを、相手(記者や私たち)に伝えることができたのだと言えます。

「普段のキミたちの行動一つ一つが、本番の面接では相手(面接官)に見抜かれてしまうのだぞ」と、取り立てて本当のことを言って生徒たちを脅す?こともありませんが、事実そうであることを知っている私たち大人としては、せめてマニュアル本の受け答え(挙措を含めて)ぐらいはカンペキにして面接に望んでもらいたいというのが、親心というものでしょう。

 仮に、それすらも難しい状況にいる子がいたとしたら――ボクならそんな子にはせめて次にようなアドバイスをしたいと思います。それは、

  1. キチンと相手の目を見て、ゆっくりと話す
  2. ウソは決してつかない。しかし、自分から「相手が評価できないこと」はしゃべらない
  3. 最後に「よろしければ質問させて下さい」と言い、そこであなたの熱意を質問の形で相手にアピールする
  4. 入室・退室の際は、前述した「斎藤くん」を思い出して行動する。とにかく目の前の面接官は、彼のような挙措こそが大好きなのだ。なにも「毎日そうしろ」とは言わないが、せめてその日(面接日)だけは真似て行動しよう

 前述したように、先生方のお気持ちを私は勝手に「親心」と表現してしまいましたが、おそらく当たらずといえども遠からずであったことと推察いたします。
また、「出来の悪い子ほどカワイイ」という気持ちも、ボクにとってはよく分かります。そんな手のかかる、でも大好きな子ども達にこそ少しでもよいチャンスをあげたいと思ったとしたら、「頼むから今日だけはハンカチ王子(王女)になってくれ」と私ならアドバイスをしたいところですが、これはムリな相談なのでしょうか?

 
 
  国際人事コンサルタント 梅森 浩一 氏
 
うめもり・こういち
国際人事コンサルタント。エグゼクティブ向けコンサルティング「アップダウンサイジング・ジャパン」主宰。1958年生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、三井デュポン・フロロケミカルに入社、総務・人事に従事。88年、チェース・マンハッタン銀行東京支店の人材・組織開発担当マネージャー、93年、ケミカル銀行東京支店の日本統轄人事部長に就任。さらにチェース・マンハッタン銀行東京支店、ソシエテ・ジェネラル証券東京支店においてディレクター・人事部長を歴任。それらの間、合併作業に伴う大量の人員削減、その一方での中途・新卒の採用活動、各種人材開発プログラム、給与・厚生プログラムの見直し、新規の人事制度導入等にかかわる。主著に「面接力」(文春新書)、「転職したいヤツに欲しい人材はいない」(光文社)、「『採用したい!』と言わせる技術」(大和書房)、「成功する会社の『女性力』」(ソフトバンククリエイティブ)など多数の著作がある。
http://www.updownsizing.com/
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