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キャリアガイダンス@メールTOP基礎から分かる教育トピック vol.22

基礎から分かる教育トピック キャリアガイダンス@メール
「特別支援教育」〜「特殊教育」を転換し4月スタート〜
従来の特殊教育(障害児教育)を転換し、学習障害(LD)など軽度発達障害※1にも対応した「特別支援教育」※2が、この4月から始まる。体制整備は小・中学校で先行して進められているが、高校ではまだ理解が広がっているとは言えない。さまざまな困難・ニーズを抱える生徒を前にして、教員はどう対応するべきか。
進学校も例外ではない「特別なニーズ」を持つ生徒
 これまでの「特殊教育」は障害の種類や程度に応じて、盲・ろう・養護学校、特殊学級、通級※3の「場」で行われてきました。しかし、こうした場に在籍しない通常学級の児童・生徒は、障害に基づくと推測される学習・生活上の困難があっても、十分な対応が受けられずに放置されてきました。「特別支援教育」は教育を受ける場のいかんを問わず、その子の持つ特別な教育的ニーズに着目して、必要な対応をしていこうというものです。

 現在、特殊教育の対象者は全児童・生徒の約1.7%ですが、文部科学省によると軽度発達障害の児童・生徒だけでも6.3%と推計されており、これまで十分に支援されてこなかった通常学級在籍の学習困難・不適応・病気療養などの児童・生徒も合わせると少なくとも10%以上が特別支援教育の対象者ということになります。高校進学率が98%近くにまで上昇した今では、高校も無縁ではいられません。軽度発達障害は知的能力・学力面において問題がない場合も少なくないので、たとえ進学校であっても対人関係や学校適応においてトラブルを抱える生徒が在学しているケースは珍しくありません。

 先進国になればなるほど特別支援教育の対象者を拡大させる傾向にあり、特に北欧では約15%となっています。日本でも将来的には、病気療養、不適応、非行、いじめ・被虐待、外国人子女など、あらゆる子どもの困難・特別ニーズに対応していかなければならないと私は考えます。画一的な教育から脱却して「個に応じた教育」が進められていますが、特別支援教育もその流れを汲む「理念」だとも言えます。

まずは一人ひとりの生徒に話を聞くことから

 高校では軽度発達障害などの困難・ニーズを有する生徒を、「親のしつけが悪い」「本人の問題・わがまま」などと扱いがちでした。しかし軽度発達障害という新たな「枠」を設定することで、はじめて生徒の行動の現象面だけでは分からない本人の困難・ニーズが見えてくることも少なくありません。例えば彼らは五感において顕著な「感覚の過敏・鈍麻」を有することが多く、通常では問題とならない音や匂いなどでパニックを起こしてしまうことも少なくありませんが、そうした障害理解の有無が彼らの困難・ニーズへの支援に大きな影響を与えます。

 軽度発達障害の問題が出てきて約10年、「枠」はできました。しかし障害や特別ニーズに応じた標準的な支援はまだ確立されておらず、これからの課題です。ただ対応の基本は、生徒本人やその保護者・家族においていかなる困難・ニーズがあり、どのような配慮が必要なのかをしっかりと聞き取り、それに応じた支援をすることです。そう考えれば、従来の指導とそう大きく変わるところはありません。「教員が増えないと対応できない」という声も根強くありますが、これなら今ある学校の“資源”でも対応可能ではないでしょうか。

 特別支援教育という言葉はなじみがないかもしれませんが、高校においては生徒の単位認定・進級・留年、不適応・暴力・非行などの生徒指導、中退・進路変更などの問題への対応などで生徒の各種の多様な困難・ニーズに取り組んできている実践の蓄積があります。そうした取り組みと特別支援教育とは、生徒一人ひとりの課題に丁寧に対応するという点で大きな違いはありません。

 その意味で特別支援教育を特別視しないで、小・中学校と同様に、ぜひ高校にも不可欠なものとして根付かせていってほしいと願っています。(談)

 
この人が解く!
  東京学芸大学教授 高橋 智 氏
 
キーワード
*1 軽度発達障害

 精神発達が同年齢の子どもよりも遅く、かつ知的な遅れが少ないものを総称した日本独自の概念。学習障害(LD=聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力に著しい困難を示すもの)、注意欠陥/多動性障害(ADHD=年齢や発達に不釣合いな注意力や衝動性、多動性を特徴とする行動を取るもの)、高機能自閉症(知的発達の遅れを伴わない自閉症)などが含まれる。

*2 特別支援教育
 障害の重度・重複化への対応と、軽度発達障害への対応という2つの観点から、2005年12月の中央教育審議会答申を受けた2006年6月の学校教育法改正によって制度化されたもの(施行は2007年4月1日)。これにより盲・ろう・養護学校が「特別支援学校」に一本化されるとともに、特殊学級は「特別支援学級」に名称変更される。
*3 通級
 小・中学校で通常の学級に在籍しながら、障害の状態に応じた特別な指導を特別の場で受ける指導形態(他校に設置された学級に通う場合もある)。1993年の文部省(当時)告示によって制度化され、2006年度からは「自立活動」と「教科指導の補充」を合わせて年間35〜280時間(週1〜8時間程度)の指導が行えるようにしている。
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