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キャリアガイダンス@メールTOP基礎から分かる教育トピック vol.26

基礎から分かる教育トピック キャリアガイダンス@メール
大学の「学士家庭教育」〜大学は本当に変わるのか〜
中央教育審議会の小委員会は先ごろ、「学士課程教育の再構築に向けて」と題する審議経過報告をまとめた。専攻分野を超えた「学士力」(仮称)の育成や厳格な成績評価、高校との接続の改善など、学部教育の大幅な改革を求めている。大学は本当に変わるのか。
入試からの一体的なカリキュラム改革提言が不十分

 そもそも「学士課程教育」という言葉は、1991年に大学設置基準の大綱化で一般教育と専門教育の科目区分が廃止された際、私が所属していた一般教育学会(現・大学教育学会)が大学審議会(当時)に提案したのが始まりでした。その後、1998年の大学審「21世紀答申」※1に「学部(学士課程)」とカッコ書きながら採用され、2005年の中教審「将来像答申」※2でようやく「学士課程教育」という表記が前面に出るようになりました。

   文部科学省はこれを「学士の学位を与えるための課程」という意味で使っているようですが、それでは不十分です。学会が提言した「学士課程教育」とは、一般教育(教養)と専門教育が分裂し、大学の教員にも序列化ができてしまった状態を改め、両者を一体化して、4年間の一貫した教育課程を作るべきだという意味を込めて名付けたものでした。今回の報告が、アドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)、カリキュラム・ポリシー(教育実施方針)、ディプロマ・ポリシー(学位授与方針)の3本柱を立てて議論していることはよいのですが、問題はそれらによって保証されるべきアウトカム(結果)の内容です。報告にある汎用的「学士力」だけでは、十分でありません。

全入時代は偏差値でなく「個性」で大学選びを

 審議経過報告が言うように、現在の大学が、進学率50%という「ユニバーサル段階」にあること、社会から「知的基盤社会」を担う人材育成を期待されていること、それに加えて大学自身が「グローバル化」への対応を迫られていることは、相互に拮抗している問題に直面しているということです。ある意味では危機的な状況だと言っていいでしょう。しかし、その処方せんとして審議経過報告が提言していることは、高等教育関係者の間では常識になっていることを全部並べただけ、という印象がぬぐえません。希望者が全入できるほど大衆化(ユニバーサル化)した大学でエリート(知的基盤社会に対応する人材)を養成する、という矛盾を、報告文の最後まで抱えたままなのです。矛盾の解消には大学の機能分化※3が提唱されていますが、おそらく、どの大学でも「うちは教育・研究大学だ」と言うに違いありませんから、有効性は疑われます。

 ただし機能分化とまではいかなくても、これからの大学は学生確保のために「個性」を打ち出すことが不可欠になります。報告書も提案していることですが、「初年次教育をが充実している」「社会貢献に力を入れている」「コンピテンシー(活用能力)を伸ばす」など、アウトカムにかかわる個性を売り物にしないと、生き残っていけないでしょう。受験生の側も、今後は偏差値ではなく、そうした個性が自分に合っているかどうかで、大学を選ぶべきです。(談)

 
この人が解く!
  国際基督教大学元学長絹川 正吉 氏
 
キーワード
*1 21世紀答申

 正式名称は「21世紀の大学像と今後の改革方策について」(1998年10月26日答申)。競争的環境の中で大学の個性化を図ることを提言し、学部段階では教養教育を強化して課題探求能力を育成するよう求めた。

*2 将来像答申
 正式名称は「我が国の高等教育の将来像」(2005年1月28日答申)。高等教育の質の保証を強調し、「学士課程」に関しては教養教育と専門基礎教育を中心に主専攻と副専攻を組み合わせて「21世紀型市民」を育成するよう提言している。「大学全入時代」を2年前倒しで2007年度からと予測したことでも注目された。
*3 大学の機能分化
 「将来像答申」の中で提言されているもの。ユニバーサル段階にある大学が多様な学習者の需要に応えるためには、伝統的な「大学」という単一のあり方ではなく、(1)世界的研究・教育拠点(2)高度専門職業人養成(3)幅広い職業人養成(4)総合的教養教育(5)特定の専門的分野の教育・研究(6)地域の生涯学習機会の拠点(7)社会貢献――という各種機能を大学自らが選んでいくことで、緩やかに分化していくべきだとしている。
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