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キャリアガイダンス@メールTOP基礎から分かる教育トピック vol.27

基礎から分かる教育トピック キャリアガイダンス@メール
「知識の『探究』」〜新指導要領でも課題に〜
学習指導要領の改訂が、近く行われる。昨年11月の中央教育審議会教育課程部会「審議のまとめ」では学力向上を強調する一方で、単なる知識の「習得」にとどめるべきではないことも訴えている。高校教師は新教育課程にどう対応すべきなのか。
「習得―活用」と並び、どの教科でも

 新しい学習指導要領においては、「確かな学力」※1をどう育成するかが課題になります。そのための学習活動として、どの教科にも知識の「習得―活用」と「探究」という2つの流れを位置付けていることに注目していただきたいと思います。

   各教科の内容はご承知の通り、何千年にもわたる人類の文化の蓄積を経て出来上がった体系です。それを生徒たちに習得してもらうことが不可欠ですし、国内外の学力調査※2で浮き彫りになったように、それを活用する力の育成にも力を入れなければなりません。しかし習得・活用だけでは、単なる受け身の学習になってしまう恐れがあります。生徒が自分なりのこだわりを持って追究・探究し、自分で納得する知をつくり上げる探究活動を、「総合的な学習の時間」はもとより各教科でも充実する必要があるのです。例えば理科で、最初から結論が分かっている方法をなぞるだけの「予定調和的」な観察・実験を行うだけでなく、生徒が自ら課題を見つけて観察・実験のステップを考え出し、結果を論述する、という面を含む授業でなければ、探究力は身につかないのです。

「成熟社会」へ乗り出すために不可欠な力

 こうした提言を行ったのも、中教審では今の日本が「成熟社会」にあることを大前提に議論したからです。成熟社会とは、絶対的なメインストリーム(主流)がない社会です。例えば私が学生のころならば「重厚長大」型の大企業への就職を目指して努力すれば人生は成功すると信じられていましたが、現在ではそうした産業はメインストリームでなくなってしまいました。成熟社会では、多様な道があることを忘れてはいけません。特に「探究」は、そうした唯一の正解というものがない社会に向かって乗り出していく力を生徒たちにつけさせるための、創造的な学習活動です。

 もちろん点数を取る以外の才能が見つからなければ、とりあえず一生懸命勉強して大学を目指すのもいいでしょう。しかし大学に進むにしても、今やスポーツ推薦など学力以外で入る道もたくさん開かれています。「習得」を測ることに長けている大学入試センター試験は、「活用」や「探究」に最も反した試験と言えますが、そのモデルとなった米国のSAT※3は、30年くらい前から活用の力や探究、創造の力を測ろうと、一部に論述式を取り入れていることにも注意すべきです。

 ただでさえ学校の教師は、今も社会にメインストリームが存在していると思い込みやすいものです。自分たちの学校時代に紆余曲折の経験がない人が多く、就いた仕事も安定しているからです。しかし、それでは成熟社会に出て行く生徒たちに役立つアドバイスなどできません。教師自身、一日10分でいいから専門教科以外の読書をしたり、芸術に触れたりして、日常生活への埋没を避けるようにするべきです。そうすることで「習得」一辺倒の授業は自然と変わっていくはずですし、常に「活用」「探究」型の学習活動を意識しながら、生徒たちを正解のない世界にも導いていってほしいと願っています。(談)

 
この人が解く!
  中央教育審議会教育課程部会長 兵庫教育大学長 梶田 叡一 氏
 
キーワード
*1 確かな学力

 現行の小・中学校学習指導要領が本格実施となる直前の2002年1月、学力低下批判に答える形で遠山敦子文部科学相(当時)が発表したアピール「学びのすすめ」で打ち出した考え。基礎・基本や自ら学び考える力はもとより、発展的な学習の充実や学習意欲の向上なども盛り込んでいる。

*2 国内外の学力調査
 2007年度、43年ぶりに全国の小・中学生を対象に実施された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)では国語、算数・数学で共に「知識」問題に比べて「活用」問題の正答率が低かった。また、経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」(PISA)はまさに知識の活用能力を測るもので、2006年調査で日本は科学的リテラシー、数学的リテラシー、読解力の全分野で前回(2003年)より順位を下げた。
*3 SAT
 非営利団体が実施する進学適性テスト(Scholastic Assessment Test)。日本のような個別の大学入試がない米国では、ACT(American College Test=米国大学テスト)とともに、多くの大学で入学者選抜の資料となっている。
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