キャリアガイダンスVol.414
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 アクティブ・ラーニング=グループワークによる学び合いと思われがちの中、「静かなるアクティブ・ラーニング」を実践しているのが若狭高校の渡邉久暢先生だ。 先生の授業を受ける生徒たちは、毎朝登校時に、廊下で待ち受ける渡邉先生に前回の授業で出された課題への理解を記したノートを持ってくる。何人かの生徒は、その際声をかけられる。 渡邉先生は現在3学年の4クラスで、118人の生徒の授業を担当している。現代文と古典を合わせると、どのクラスもほぼ毎日授業があるため、100人前後のノートを毎朝見ていることになる。 そして、このノートが学びの肝となっている。渡邉先生は、生徒が書き留めるための板書は一切しない。ノートは授業中の課題に対する理解を書くためだけではなく、自分が思ったこと、授業中に仲間の意見で気付いたことなど、生徒自身の思考の変遷を自由に書くメモ帳と位置づけられている。そのノートを毎日確認することで、先生は生徒の頭の中を覗き込み、心の機微を把握し、その日の授業の展開を臨機応変に変えていく。生徒たちが「今」足りないもの、培うべきものに合わせた授業をするためだ。それができるほどの教材を準備している、教材研究力に驚かされる。 この日は海洋科学科と国際探究科の現代文の授業を見学。クラスによって題材に使用した教材(小説)は異なっていたが、授業の進行は同様で、登場人物の設定や、語り手の心情をつかむ内容だ。その授業の様子は今まで見たことがないものだった。(左ページ「渡邉先生の授業デザイン」参照)。 ひとりで課題に向かうときも、仲間と意見をシェアするときも、とにかく生徒たちは猛烈「自分」と「他者」の違いを考察する授業でものの見方・考え方を鍛えていく国 語に脳味噌を使っていて、先生はその思考の邪魔をしないよう気配を消している。生徒が自ら学ぼうとして、生徒自身のペースで進んでいる授業だった。 授業デザインについて先生に聞いた。 「学習活動を通じて、自身のもつ知識や技能を意図的に使いこなす高い能力=『生きて働く高次の学力』を育てたいと考えています。私の目的は、生涯にわたって学びを続ける『自立した学習者』を育てることです。国語で育む力は『話す』『聞く(訊く)』『書く』『読む』の4(5)技能と定義されている。だから『自立した話し手・聞き(訊き)手・書き手・読み手になろう』と、毎年最初の授業で年間目標を示しています(図1)。その目標を示せば、生徒たちはやるべきことを理解します」 社会に出れば様々な人々との関わりの中で生きていかなければならない。どんな人と協働しても、相手や場に応じ若狭高校 (福井・県立)渡邉久ひさのぶ暢先生教員歴25年。母校である若狭高校に初任で着任。藤島高校、福井県の指導主事などを経て2015年から再び若狭高校に。授業実践を通した研究で多数の論文を執筆。全国から見学が後を絶たない。先生が存在感を消し、生徒が思考を続ける授業どんな授業なのか国語という教科学習を通じて、生きて働く高次な学力を培う1894年創立/普通科・文理探究科・海洋科学科/生徒数926人(男子437人・女子489人)/進路状況(2015年度実績)大学190人・短大28人・専修その他60人、就職20人、その他4人学校データ朝の廊下での宿題提出。「ノートを持ってくる生徒の表情で、どれくらい書けているかだいたいわかる」と渡邉先生は語る。162016 OCT. Vol.414

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