キャリアガイダンスVol.414
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渡邉先生の授業デザイン●毎回席を変える先生が宿題ノートを置いた場所が今日の自分の席になる。●板書に書くのは、授業の目標と 生徒にやってもらうことのみ渡邉先生は全員のノートに「いいね!」「どうしてそう思った?」など声をかけながら、生徒一人ひとりの学習状況を把握していく。渡邉先生が演習用に作成している長文読解のプリント。登場人物の関係性は図解することも推奨。自分なりの思考で書くため、一人ひとり書く内容が異なる。思考をフル回転させている生徒たちの表情は、試験中のように真剣そのもの。生徒が問いへの解をつくる間、先生はフラッと廊下に出て行ったり、廊下から生徒の様子を見ていたりする。とにかく生徒の思考の邪魔をしない。仲間の考えを聞いて、ノートに書いてみた自分の意見と比べて、お互いなぜそう考えたのかを話し合い、それもノートにメモしていく。て言葉を選び、自分の考えを伝えることが求められてくる。そこにひとつの正解はない。  渡邉先生は課題を解かせる際にはペアワークやグループワークをはさんだり、生徒たちのノートのコピーを配布して、自分とは異なる意見に触れさせている。生徒が自ら他者(仲間や文章の作者)との考えの違いに気付き、「なぜ違うのか?」と考えることで、自分の思考を深めるサイクルを繰り返し、問いを深めていくおもしろさに気付いていく。すると新しい文章に出会ったときに、深く読み進めるようになっている。また、他者との違いの比較で、自分と向き合い自分の思考パターンにも気付く。文章を通した他者との対話を繰り返すうちに、生徒たちは自分の思考パターンが揺らいだり変化したりすることもある。文章を読み込み、表現し合う活動が、生徒自身のものの見方・考え方を鍛えていくことにもつながっているように思える。 生徒たちに授業の感想を聞いてみた。 「読書は嫌いだけど、この授業は意見を考えて、自分の言葉で伝える力がついておもしろい」(海洋科学科・男子生徒) 「普通の授業で先生の反応をもらえるのは発表した人だけ。渡邉先生は毎日文章を読む意義を知り読解を楽しむ生徒たち生徒はどう変わったかノートで一人ひとりに意見を言ったり添削してくれるのがいい。読解力も表現力もついて、1学期だけで模試の点がすごく上がった」(国際探究科・女子生徒)「登場人物や作者の心情を深く考えるから、小説だけでなく、評論や新書など、どんな文章でも読むのがおもしろくなった。登場人物や作者と自分の違いを見比べることで、自分のことや、『世の中こうなってるんだ』とわかるようになってきた」(国際探究科・男子生徒) 過去に先生の授業を一年間通して受けた生徒が書いた小論文を見ても、読解力の深さや、小説を読む作業を通して、生徒が自分自身とも向き合うようになっていることがわかる。毎年の最初の授業で配布する、授業の年間目標。「なぜ国語を学ぶのか」「どんな力をつけたいのか」という問いとともに、「ノートに『たくさん』メモを取る。『質より量』」と記されている。取材・文/長島佳子※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.414)授業の流れ例宿題ノートの内容を隣の生徒とシェア。相手の話を聴いて考えたことをノートに書く。書けた生徒から一人ひとり先生に持って行く。全体に向けて先生が言葉を発することはほとんどない。板書の文字は非常にラフな感じ。始業・終業の挨拶をなくし、少しでも生徒が考える時間を確保する。先生のチェックを受けた生徒は次のプリントをもらう。徐々に難易度が上がっていく。プリントをもらった生徒から設問にとりかかる。書くのはノートに。プリントを解くポイントや制限時間を板書する。時間が来たらペアでシェア。この後、②~④を繰り返して、プリントの内容によって、ペアワーク、グループワークを行う。振り返りシートを記入。123456 圧倒的な教材研究力、独特に見える授業スタイルでも、渡邉先生自身は、自分の授業はシンプルだと語っている。 「生徒たちは自分のためになると思えば、自然と一生懸命やります。それだけです。教員としては、授業中に生徒が寝たり、つまらなそうな顔をしたら切なくなります。そうならないように心がけているつもりですが、今後は生徒が『これやりたい!』と、自分で問いを見つけて、問いを解決していくために主体的に学んでいけるようになったら理想ですね」生徒が自発的にやりたいと思ったことをする授業今後行いたい授業【図1】「授業」で社会を生きる力を育む【Report 01】 国語172016 OCT. Vol.414

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