キャリアガイダンスVol.414
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髙橋先生の授業デザイン そうして学びながら考えたことの「発信」にも力を入れるのはなぜか。「この先の就職活動でも、仕事でも、自分の考えを説明することが求められていくからです。そもそも生徒たちは何のために地理や歴史を学ぶのか。僕は、『なぜそこにあるのか』『なぜそれが起きたか』を理解するだけでなく、最終的にはそれをもとに自分の考えを発信するためではないか、と思っているんです。仕事や生活で何らかの問題に直面したときに、地理や歴史で学んだことを現在に結びつけて思考し、そこで考えたことを発信して社会と関わっていく。そうしたことができる人になってほしい、と思っています」 髙橋先生は、前任校では貿易ゲームなどもやっていたそうで、以前から生徒主体のアクティブ・ラーニング(AL)に積極的だったと言える。 でも本人にその意識はない。 「ALが注目されているからと、それをやることを目的にするのではなく、今の生徒たちにはどんな授業が良いかを考えていきたいです。今の3年生に対しては『話す』授業をしていますが、この子たちが1年生のときは、いきなりの対話はまだ難しいと考え、『書く』こと中自分の視点で歴史を捉え、考えを口にするように生徒はどう変わったか心の授業をしていたんですよ」 そうした段階を経て、今や生徒たちはボールを回すことで意見を出し合えるようになった。授業中の笑顔が増え、授業外の生徒同士の会話も多くなった。 平安末期の院政について学んだときのことだ。ある生徒が「これって今もあるよね。○○の会長と社長のバトルとか」と現在とのつながりを発見してくれた。さっそく髙橋先生は、次の授業でその事例も示したうえで、話し合うテーマを投げかけた。「先輩からの助言・口出しはアリ? ナシ?」 先輩も間違う、助言があったほうが効率がいいなど、生徒たちは自分の視点をもって歴史と向き合うことができた。取材・文/松井大助 授業中のグループの対話には髙橋先生も参加するが、今のところは話が煮詰まると、生徒から頼られてボールを渡されることが多い。だから髙橋先生がボールを持つ時間が長くなりやすい。この時間を減らし、髙橋先生も1参加者になることが当面の目標だ。 その先ではコミュニティボールからの卒業も視野に入れる。実社会の対話にボールは存在しない。そうした場でも、生徒が生き生きと活躍できるようになることを目指しているからだ。授業の対話スタイルをさらに実社会に近づける今後行いたい授業1年次 〈地理〉⇒「書く力」を重視2年次 〈担当教科なし〉⇒個別にソーシャルスキル3年次 〈日本史・現代社会〉⇒「話す力」を重視4年次 〈世界史〉⇒「話す力」の向上校内アンケートや学級日誌の書き込みから、「自分の考えはもっていて、書く力はあるが話は苦手な生徒が多い」と把握。いきなり対話は難しいので、授業は講義中心、ただし論述を増やし、考えて書く力を伸ばし、その考えが受け入られる安心・安全な場を目指した。研修でソーシャルスキルトレーニング(SST)を学び、クラス担任として、コミュニケーションなどに困難さを感じている生徒数名に、始業前にSSTを展開(次年度も継続)。週2回の授業を「知識習得セッション」と「トークセッション」に分けて2回1セットで実施。前の授業で身に付けた知識をもとに、輪になってコミュニティボールを用いながら生徒が意見を出し合うことで、自分の考えを発信・説明する力を育もうとしている。現状は「プリントに自分の考えを書いて」「ボールを回して意見を出し合う」形を取っているが、最終的にはプリントに書かなくても、ボールがなくても、対話できることを目指す。授業を受けた 生徒の声「前よりもみんなの質問とか意見が聞けるので、すごく楽しいです」「今までみんながどう思っているかわからなかったけど、みんなの考えがわかって、自分が思いつかなかった発想が聞けてよかったです」「なんて言えばいいかわからなくて話せなかった人と話せるようになったし、クラスでも少しみんなと話すことが増えました」「みんなと仲良くなりました」「楽しいです。…なんか、なんていうんですかね。みんなでコミュニケーションを取っているなあ、というのが」定時制3年生のみなさんQQ「ユーモアを兼ね備えた先生かな、と思います。僕が(藤原道長のことを)ミッチーってあだ名で呼んだら、先生はフジーとか言い出すので」「話しやすいです。あと、はっきりとしゃべってくれるので聞き取りやすいです」「全体的にいい人です。悪いところがあったら言ってくれるので」髙橋先生はどんな先生ですか?ボールを使った授業はどうですか?「授業」で社会を生きる力を育む【Report 02】 地理・歴史192016 OCT. Vol.414

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