キャリアガイダンスVol.414
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遠藤直哉先生教師歴17年。東日本大震災後、「教育によって福島を復興させたい」と、生徒が企業や大学と連携して取り組む「福島復興プロジェクト」や「医療系セミナー」などを立ち上げてきた。型破りな行動力から「暴走特急」の異名をもつ。 「なぜ?」「だから何?」||東北でトップクラスの進学校、県立福島高校で「生物」を教える遠藤直哉先生の決まり文句だ。教科書にはほぼ物事の「結果」しか書かれていない。遠藤先生はそれを丸暗記させるのではなく、なぜそうなるのかという「原因」も理解させる授業により、「結果の学問」から「原因の学問」への転換を図っている。 例えば眼の構造に関する授業では、各部位の名称と役割の解説だけでなく、「ここに盲斑がある理由は?」「視細胞のうち錐体細胞は視界の正面、かん体細胞は端に多いのはなぜ?」と、その原因にまで踏み込む。テストは論述問題が多く、そこでも原因を重視。採点には時間をかけ、テスト用紙が赤ペンで真っ赤になるぐらいコメントを書き込む。 「生物分野には原因が2種類あります。例えば、髪が黒いのはなぜ? 化学的にはメラニン色素があるからです。さらに、黒だから何なの?と考えると、強い紫外線から細胞を守るためという生物学的な原因も見えてきます。その違いを意識し、思考できる道筋をつけたいと考えています」(遠藤先生・以下同) 遠藤先生が「原因の学問」に取り組む理由の1つは、生徒の進路実現のためだ。ただし、それだけではない。 遠藤先生は授業の成立すら困難だった初任校での経験から、いかに生徒に勉強が楽しいと思わせることが大切かを学んだ。進学校に転勤後は基礎知識の徹底と、生徒との対話による躓きやすいポイントを的確に押さえた授業で、「生物」の成績を引き上げた。そうして生徒の進路実現に大きく貢献するなかで、改めて進路の先に目を向ける必要を感じるようになったという。 「受験学力をつけて○○大学に受かればそれで良いのか。東日本大震災で原発事故の混乱を経験し、その思いはいっそう強まりました。大学の先にある人生をどう生きるかを見据えて、自ら課題を発見し解決できる人材を育てたい。それが福島の復興の1つの支えになると考えました」 原因に踏み込む授業の実践には、教員側の知識の深さが必要だ。その点、 なぜそうなるかを考えさせ思考力を養うどんな授業なのか1898年創立/普通科/生徒数959人(男子558人・女子401人)/進路状況(2016年3月実績)大学218人・短大1人・専門学校3人、就職2人、その他88人学校データ遠藤直哉先生の昼食はたいていカップ麺。ある生徒が健康を心配して「カップ麺ばかり食べているとガンになっちゃうよ」と声を掛けると、遠藤先生は「本当にカップ麺が原因でガンになるの? なぜ?」と突っ込みを入れる──このやりとりのように、遠藤先生が授業で大切にしているのは、結果ではなく原因である。「なぜ?」「だから何?」を繰り返し結果の学問から原因の学問へ生 物福島高校 (福島・県立) 授業エピソード刺身を弁当に入れないのは「当たり前」?なぜ刺身は弁当に入れないのか。「生は腐りやすいから当たり前です」という生徒に、遠藤先生は「じゃあ、なぜ刺身は腐りやすいの?」と問う。生徒は、細菌の数が多いからではないかと予想するが、「それ本当?実験してみたら?」。刺身と煮魚の一定面積の表面組織を採取し、時間経過で細菌数の変化を見る実験を行うことに。すると、最初は同等だった細菌数が、数日後は刺身だけ激増した。「なぜ刺身の細菌だけこんなに増えたの?」。両者の違いは何かを話し合ううち、生徒は水分の違いに気付く。そこで、刺身の水分を抜いて同様に実験を行ったところ、細菌の増殖は大幅に抑えられた。これにより、刺身が腐りやすい原因は、生であることではなく水分量の多さだとわかった。242016 OCT. Vol.414

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