キャリアガイダンスVol.414
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取材・文/長島佳子 外部の多数の専門家の話を聴いたり、仲間の意見に触れることで、自分の見方や考え方が断片的・一面的であったことに生徒たちが気付いていることが、ワークシートや小論文から読み取れる。なかには、自分自身の視野の広がりだけでなく、自分と異なる意見の人の気持ちも理解できるようになったという生徒もいた。図1 『アール・ブリュットを知り、考える』授業の展開(2016年度:2学年)図2 『利休と茶道~その形と心に学ぶ』授業の展開(2015年度:2学年) 現在3学年で、1・2年時にこれらの授業を受けた生徒たちの感想を下段に記した。いずれの生徒も小論文に苦労したり、絵を描かない美術の授業への驚きを語っていたものの、「将来何かの役に立つのではないかと思った瞬間が何度かあった」と答えていた。山崎先生も生徒たちについてこう語る。 「高校で学んだことが何に役立っているかを実感するタイミングは生徒それぞれです。彼らが社会に出るのはまだ先で、高校は社会とつながる力のタネを蒔いている段階だと思います」 外部との連携授業の成果を学校の内外に伝えたいと山崎先生は考えている。 「地域のそれぞれの分野で活躍されている方々を、『美術』という窓口から学校へ集めることができたので、今度はその成果を発信したいと思っています。そのことで、『高校』や『生徒たち』は『広い社会』と、『美術』は『暮らし』とつながるきっかけにもなると思います」複眼的な思考と、いつか社会で役立つ兆しを得た生徒たち生徒はどう変わったか外部から得た知見の成果を、学校の内外、地域にも伝えたい今後行いたい授業授業を受けた 生徒の声南さん田中さん長船さん津田くん馬場さん美術は息抜きのつもりでしたが、小論文で大きすぎるテーマをたててまとまらず、絞りこむ作業など、めちゃめちゃ頭を使って頑張った感があります。茶器の銘付けで、必死に考えた銘を作者の子に選んでもらえたときは嬉しかったです。和菓子のデザインが選ばれて実際にプロの方に作ってもらえたのが嬉しかったです。正直、絵も描きたかったですが、もの作り+考える授業で、芸術の幅や視野を広げてもらったと感じ、希望している国際関係の仕事に役立つと思います。「ABは障がい者アートなのか?」という疑問を中学時代からもっていました。人の話を聴くときもそのテーマで聴いていたので、小論文を書くのは大変だったけれど、自分の考えをまとめて順序立てて説明する訓練になってよかったです。「あれが美術の授業だったのか?」と思うこともありますし、小論文を書くのは本当にしんどかったですが、たくさんの人の話を聞いているうちに、疑問に思っていたことに対して自分の意見がだんだん生まれてくることは面白かったです。ABの授業で、みんなの書いた小論文の輪読は、人の意見を知ることができて面白かったです。「同じ講話を聞いても人によって感じ方や見方が違うんだ」と。美術で茶道体験などをやると思っていなかったのでびっくりしたけど楽しかったです。授業の目的授業の目的導入(1時間)鑑賞(3時間)一連のプログラムを通じて「茶道」における日本の〝おもてなし〞文化を学ぶ鑑賞(6時間)陶芸(4時間)小論文作成(7時間)お菓子制作(2時間)茶器の銘付け(2時間)御茶会(1時間)授業の展開(全14時間)授業の展開(全12時間)アール・ブリュットに触れ、創造することの意義や人としての生き方、在り方を考える。●日本の文化と美の関わりについて作品制作や鑑賞活動、実際に使用するこ とを通して深く理解するとともに、これからの文化芸術の意義や役割を考える。●千利休が目指した茶道の世界について学び、ものの考え方や生き方を知る。● 文化芸術や美術に関わる様々な人たちと直に接し、自らの考え方や生き方を見つめ直すきっかけとする。アール・ブリュットに関する新聞記事を読んで、授業全体を通した自己のテーマを考える。外部講師を招いての講話。茶道の歴史や展開、道具、作法、菓子、銘などについて学び、千利休が目指した佗茶の在り様や考え方を理解する。外部から様々な講師を招いた講話とアール・ブリュットの作品鑑賞(授業ごとにワークシートを作成)。外部から陶芸家を招いての実践授業。『アール・ブリュットについて知り、考えたこと』を各自が小論文にまとめ、お互いの小論文を輪読し、考えたことを語り合う。話し合いにより修正したい箇所を直し、小論文を改訂。外部から和菓子職人を招いての実践授業。和菓子のデザインを考え、選ばれた作品は御茶会のときにプロの職人に実際に作ってもらう。自分の作った茶碗に、他の生徒たちに銘を付けてもらう。自分たちで作った茶碗、考えた和菓子(プロの職人が製造)を用いて、外部から招いた茶道家による御茶会の実践。※仕上げた小論文は冊子として配付、展示※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.414)茶器の銘付けの授業では、自分の作品、他者の作品に込められた想いをそれぞれ言語化していく。「授業」で社会を生きる力を育む【Report 06】 美術2016 OCT. Vol.41427

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