キャリアガイダンスVol.414
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小林光一先生教員歴9年。大学卒業後、ドレスショップ営業やサッカー社会人リーグ(現J3)選手を経て教員に。生徒に頑張れと言う以上は自分も頑張らねばと、日本一の保健の教師を目指すと宣言している。 小林光一先生の4月の保健の授業は、毎年「甘いものをたくさん食べたらどうなる?」といった問いかけから始まる。生徒は「太る!」などと答えてくる。そこでさらに問いかける。「なんで?」 小林先生の授業はこれが基本形だ。「保健の学習内容はなんとなく知っていることが多いので、『なんとなくわかりそうな保健クイズ』を出題し、まずは生徒をしゃべらせます。でもその解答には根拠がない。だから『なんで?』と問うと言葉に詰まります。そうして生徒たちに、みんなが『理解しているつもり』のことは『聞いたことがある』にすぎないことを突き付けます(笑)。それをくり返し、3学期には『なぜそう思うか根拠までちょっと話せるようになった』状態になることを目指します」 授業では1学期からグループ学習も行うが、ここでもおのおのが自分の考えを見つめ直す。そのために小林先生が生徒に授ける魔法の言葉が「なんで?」と「でもさー」だ。グループ内で、ある生徒が意見を出したら「なんで?」と根拠を求めてみんなで「その考えを深める」。あるいはその意見に「でもさー」と何らかの反論を試みて「その考えに対する視点を変える」。 「話し合うときに『深く考えろ』『視点を変えろ』と言っても、生徒はどうすればいいかわかりません。けれども『なんで?』『でもさー』という〝オモチャ〞を与えると、生徒は面白がってやってみて、そこから議論が広がるんです」 思考を深めることを重視するのは、社会に出たらその営みが大事になる、という実感が小林先生にあるからだ。 「僕は大学まで競技やスポーツ社会学ばかりやっていたので、保健のことは教師になってから学び直しました。すると、何が健康に良いか悪いかはいろいろ調べてよく考えないと判断できず、自分が『理解しているつもり』にすぎなかったのを痛感しました。少し前の僕は、生徒と一緒だったんです。保健に限らず、社会に出たら、正解がわからないことを今ある知識で考えなければいけない場面が増えます。だから生徒に求めるのは、正解ではなく根拠。答えにたどりつくまでの道のりを、自分で描けるようになってほしいと思っています」 小林先生はまた、考えたことを「伝える技術」についても、実体験やリアルな教材をもとにレクチャー(左上カコミ記事参照)。そのうえで生徒が論述やプレゼンに挑む機会も増やしている。 「自分の考えを説明することは、どんな仕事でも必要だと思うからです。生徒には、ただ正論を言うのではなく、相手に思いを届けられるような伝え方を身に付けてほしいんですよね」知っているつもりのことをより深く多角的に考えるどんな授業なのか1834年創立/普通科・理数科/生徒数783人(男子375人・女子408人)/進路状況(2015年度実績)大学221人・専門学校3人、その他28人学校データある授業では、たばこの依存性の怖さを訴えるキャッチコピーを考えた。教科書の知識に加えて、伝える技術や感性が問われる。「なんで?」「でもさー」の魔法の言葉で思考を深め、「伝え方」もみがく保 健順天高校 (東京・私立) 2016 OCT. Vol.41428

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