キャリアガイダンスVol.414
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した。しかし、仕事が大規模化、複雑化、スピード化したことで、求められる知識やスキルは格段に高まり、その差は急速に広がっています。もはや企業内教育だけでは足りません。この変化を教育機関側も認識し、社会で必要とされる力の育成に努めてはきましたが、十分とは言えません。このままでは学生と企業の双方に不幸をもたらす。そうした危機感を抱いたのです。 もう一つ、鉄は熱いうちにうつ必要があることを痛感したという理由もあります。人材開発の研究では、調査結果を研修やワークショップなどの形でビジネスの場に還元することが少なくありません。そこで実感したのは、ロジカルシンキングにしてもプレゼンテーションスキルにしても、参加者の頭が固いとなかなか定着しないことです。まして、与えられた業務を粛々とこなしているだけのような方に、リーダーシップの重要性を説き、大勢の人を巻き込んで高い目標を達成するような課題をだしても、あまり響かないのです。 何より、雇用が流動化し、技術革新が著しい時代においては、一生学びつづけるモチベーションやアクティブさが不可欠であり、若いうちから本気で考え抜いたり、熱く議論したりする経験の有無は、その後の仕事人生を大きく左右するはずです。 企業における大人の学びも大切ですが、失敗が許される教育機関にいるうちに訓練を積むことの重要性を今も強く感じています。 こうしたことを口にすると、「何も学校は、企業に必要とされる人材をつくる場ではない」と不快感をもたれる方がいます。確かに、教育の目標はそれだけではありません。ならば、「教え子が社会で幸せに生きていけるために」と頭につけて考えてほしいのです。困難な時代における社会への移行は、若者が抱えている本当に切実な問題なのですから。 教育機関と仕事領域の間には、クレバスのような断絶が横たわっています。不安や葛藤といったネガティブな感情を抱えやすい時期でもあり、大勢の学生が、仕事領域に参入する前に、何らかのつまずきを経験します。厳しい就職活動を乗り越えたものの、このままでよいか考えこんでしまう学生、内定者研修中に意欲や自信を失ってしまう学生、組織や業務に適応できず、早期離職してしまう卒業生もいます。大学教員である私は、そのように苦しむ若い人の姿を何度も目にしてきました。 しかも、これからの若者が生きていく職場は、従業員の雇用形態も国籍も違い、多様な人々とぶつかりあいながら目標を達成することが仕事の根幹になってきます。コラボレーションといえば聞こえはいいですが、「違う」ということは、不快なことでもありますから、メンタル的にはきついこともあるはずです。 もちろん、トランジションにリアリティショックはつきものであることは、私たちの研究でも明らかです。けれど、ショックのままこぼれ落ちてしまうか、そこから這い上がれるかではまったく違います。 対処の仕方も訓練によって左右されます。例えば、人と本気でぶつかった経験が豊富にあれば、実際の職場で似た場面に遭遇し、強いストレスを感じたとしても、「あの時も、こうだったな。人とうまくやるのは簡単なことではないな」で済ませられます。コーピングストラテジー(ストレス対処行動)などの知識があったとしても、経験に勝るものはありません。 「学びとは何か?」と問われたら、訓練と経験こそが円滑なトランジションの近道学びとは何か。なぜ学び続けなければいけないのか中原淳研究室と日本教育研究イノベーションセンターが運営するWebサイト「マナビラボ」。全国高校のアクティブラーニング実態調査や実践事例を公開するほか、授業がさらに「ワクワク」するためのコンテンツを毎週更新。http://manabilab.jpリアリティショックは必ず起こる。そこで落ちるか、這い上がれるかは経験と訓練で変わってくる「授業」で社会を生きる力を育む【Message】 授業を「ワクワク」するものにしよう412016 OCT. Vol.414

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