キャリアガイダンスVol.414
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 問題・課題が似通ってしまう原因は、生徒の問題・課題発見能力にあります。生徒自身が違和感を覚えた事態に関して、状況を把握し、情報を整理したうえで、問題や課題を発見する力が不足しているのです。不足している理由は、生徒が問題・課題の発見方法を学ぶ機会の少なさでしょう。まずは問題・課題を発見する方法について考えましょう。 問題とはあるべき姿と現状のギャップです。例えば”貧困“は状態であり、問題ではありません。貧困という状態によって引き起こされる現状と、貧困という状態が解消されたあるべき姿(ビジョン)の間にこそ、解決すべき問題が存在します。問題を把握してから、問題が起きている原因を深掘りし、そこにある課題を明確にするというプロセスが大切なのです。同じ貧困であっても、生徒それぞれに取り組む理由があるはずです。自分が考える理想状態とは何か、何が一番の課題なのか、具体的に取り組みたいのは何か。情報を集めていくうちに、違う問題に気付くかもしれません。また、解決にいたるアプローチ方法を考えるうちに、必要な学問が見えてくるかもしれません。どこまで深く考え、明確にできるか。それが、単に問題を選んだだけか、「マイテーマ」と言えるものにまでできるかの違いとなるでしょう。 問題・課題を発見し、深く掘り下げる能力は高校生活で十分に身につきます。身に付けるタイミングは、授業と課外活動。授業においては課題を発見し、解決するような学習は最適な機会です。解決に向けた探究活動のなかで、理想状態を考え、情報を集め、原因を追究し、段階を踏んだ試行のプロセスを体験できるからです。 インターンシップや就業体験も工夫次第では有効ですが、体験だけで終わらせず、仕事における課題を生徒に突きつけてはどうでしょうか。生徒に仕事における問題・課題は何か、いかに解決するのかを考えさせ、発表させ、大人からフィードバックを得るだけでも意味があります。 次に、部活や委員会活動などの課外活動で身に付けるタイミングに注目しましょう。課外活動は問題・課題の宝庫です。なぜ試合で勝てないのか、部員が主体的にならないのか。委員会活動でも、文化祭に多くの人に来てもらうにはどうすればよいか、生徒の登下校のマナーを良くするにはどうするかなど、問題・課題を発見する能力を鍛える機会は多分にあります。 先生方が問題を解決するのではなく、生徒たちに問題・課題を明確にさせ、解決に向かわせるナビゲーターとなることが重要です。 最近の生徒のマイテーマの探し方を見ていて、気になることがあります。大学に受かりそうなテーマを挙げ、経験や体験、エピソードを強引に作る方法です。例えば、受かりそうなテーマが貧困だと決めた生徒は、貧困に関係ある体験を自分から作ります。そこでの体験から貧困というテーマに行き着いたように、志望理由で書きたいからでしょう。場合によっては体験を作るために高校生団体を結成するなどのアリバイ作りや、エピソードを捏造する場合もあります。 その行動の動機に信念が感じられない場合、大学に「生徒なりのテーマ」とは認められないようです。なぜなら、「たまたま」出会った経験や体験が志望理由のテーマとなるのは不自然だからです。大切なのは価値観・信念・信条に基づいた行動や思考です。 価値観・信念・信条とは座右の銘など生徒が信じている、心の拠り所にしている言葉です。価値観・信念・信条から志望理由のテーマが導かれた時にこそ、生徒なりのマイテーマになると信じています。人は思っていないことを考えたり、行動したりできます(もちろん葛藤を感じながら、ですが)。しかし、自らの価値観・信念・信条に嘘をつくことは至難の技でしょう。自身のアイデンティティに関わるからです。 生徒の価値観・信念・信条は、生徒の思考や行動により証明されます。つまり、価値観・信念・信条、それらに基づいた思考や行動、経験・体験からこそ、生徒なりのテーマが生まれると思います。問題・課題を深める能力は授業や課外活動で身に付ける生徒なりの価値観・信念・信条からマイテーマを見つける生徒の価値観・信念・信条が志望理由の根拠の場合は、「自分なりのテーマ」として認識されやすい。思考や行動が志望理由の根拠の場合は「自分なりのテーマ」として、価値観・信念・信条が根拠の場合と比較すると弱い。価値観・信念信条思考特性行動特性人となり個性志望理由(テーマ・問題やりたいこと)532016 OCT. Vol.414

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