キャリアガイダンスVol.414
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SSH活動例SSH担当清水 理先生SGH担当櫻井 健先生イノベーションスクール担当田中一也先生キャリア指導部長中前勝吾先生校長上田優人先生方も海外と直接つながる社会になるはず。その時、地元にいながら地域の魅力を世界に発信することで地域の発展を牽引する、グローバル人材の育成を目指します」 具体的に取り組む内容として、「地域文化」「移民の歴史」「地域産業」「地域防災」の4テーマを設定。1学年は全テーマの基礎的な学習を行い、2・3学年では各自1テーマを選んで国内外の高校生と連携しながら課題研究に取り組む。その成果を「和歌山発-地方創生課題解決モデル」としてまとめ、行政機関等への政策提言を目指す。活動はまだ始まったばかり。 「これまでの国際交流のやり方を一歩進め、もっと企画段階から生徒を参加させる方向で進めていけたらと考えています」(櫻井先生) この10年間で、同校生徒に積極性や主体性が育った要因について改めて考えてみると、際立つのはフォーラムや各種事業など生徒の活躍の「場」の多さだ。 「地方では、学校が生徒に多様な経験をさせる場を設定する必要があります。積極的に参加し楽しそうに取り組む生徒たちを見て、彼らは我々が思っていた以上に『もっと何かしたい』という気持ちが強かったのだと感じました。こうした経験による充実感が、高い進路目標への挑戦や意欲的な学習姿勢につながっているのではないでしょうか」(上田校長) そんな「場」の生かし方にもカギがありそうだ。「課題解決型学習はその取り組み方で生徒が変わる」と上田校長。同校はそのプロセスにおいて、徹底的に生徒を主体とし、丁寧に対応している。 例えば、テーマ設定では生徒自身の「やりたい」を重視。生徒から意見が出るまで、焦らずじっくり話をする教員が多いという。 「生徒が本心から興味がもてれば、こちらが先にへこたれるぐらい粘り強く取り組みます」(清水先生) 目標設定でも生徒が起点となる。コンテスト入賞など格上の目標をもって生徒の力を引き上げる方法もあるが、清水先生はそれで失敗した経験をもつ。高い目標を掲げて生徒を引っ張ろうとしたところ、途中で「面白くない」と生徒の気持ちが離れてしまい、生徒に見合う目標設定の大切さを知ったという。 「課題解決型学習では結果よりもむしろ、そこに至るプロセスでどう思考したか、どう工夫したかが大事です。外部からの評価を気にして背伸びするのではなく、どう生徒たちの力を引き上げるかに努めています」(清水先生) そして、課題の解決に向けた生徒の活動において、教員は極力「教えない」。「イノベーションスクール」では生徒が自分たちの足で稼いだ情報から地域課題にたどり着いた。櫻井先生はいつも生徒に「なぜ?」と問いかけ、正解を押し付けるのではなく、生徒自身が考え行動することを促している。 「自分も長く教師をやっていて、答えを見つけさせないといかん、失敗したらあかんと考えがちです。でも、失敗しても次に修正をかければよい。こうあるべきという意識を横へ除けて、生徒を信じて任せるようにしています」(櫻井先生)● この10年間で、「教員にも学校の枠組みを破って新しいものにチャレンジするスピリットが育まれた」と田中先生はいう。「失敗してもいいからまずやってみよう」。こうした教員自身の姿勢こそ、実は生徒を変化させた最大の要因かもしれない。 現在、SSHやSGHの活動の評価方法など、まだ試行錯誤の段階の課題もある。SSHは最終年度を迎え、「特別な活動をうまく日常の授業につなげていきたい」(清水先生)と新たな挑戦も始まる。 これからも「地方の普通の高校」として挑戦を続けていくうえで、上田校長は同じような価値観をもつ高校同士の連携に期待を寄せる。 「こんな田舎の小さな学校でも頑張ればここまでできる。こういった取り組みが他の学校でも増えてお互いに意見交換していけたら、さらに大きな力になる気がします」(上田校長)身近なタンポポの粘り強い研究が高い評価 日高高校では2011年から「課題研究」でタンポポの研究を行っている。昨年度は高校1年生を中心とした有志9人のチームが、先輩の先行研究を深める研究に取り組んだ。市街地、里山、ダム上流の3エリアにおいてタンポポを採取。外部形態に加えてDNA分析の手法も用いて在来種・外来種・雑種の識別を行うと、在来種が多いはずのダム上流で外来種や雑種の分布の割合が高いことが判明した。この矛盾点に着目し、環境指標の再検討を試みる研究を実施。その研究結果は「第59回日本学生科学賞」の県審査で県教育委員会賞を受賞した。 チームの代表を務めた濱田真衣子さんはこう振り返る。 「高価な遠心分離機やピペットを使って細かい分析をしたり、連携する大学の協力で過去の調査データを入手したり、SSHならではの貴重な経験をすることができました。各地でのタンポポの採取など大変な面もありましたが、結果が出て評価もいただき、大きな達成感があります」 また、メンバーの同2年望月春菜さんは、この経験による自身の成長を感じている。 「最初は先生がおっしゃることをやるという受け身な姿勢だったんですが、だんだん皆で『こんな仮説が立てられるのでは?』など意見交換できるようになっていきました。また、大きな舞台で発表した経験は自信にもなっています」 2人は今年度、「課題研究」の授業のなかで、昨年度の研究で積み残した課題の解決に挑むという。総合科学科2年の濱田真衣子さん(写真左)と望月春菜さん(同右)教員が思う以上に生徒は「何かしたい」592016 OCT. Vol.414

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