キャリアガイダンスVol.415
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活動につなげることも重視された。 取り組みの結果、島での学びに魅力を感じた生徒が島内外、さらには海外からも集まるなど、入学者数はV字回復。異例の学級増も達成した。 「人間関係が固定化しやすい過疎地にあって、島外から来た多様な生徒とのふれあいは島の生徒に火を付け、学習に向かう空気も生まれました。キャリア教育や探究学習が推薦・AO入試対策につながったこともあり、3割近くが国公立や難関私立大学に進学するようになりました」 数字だけではない。「町長になってこの島を日本一幸福度が高い町にしたい」と語るなど、地域や社会のために活動する卒業生も増えてきた。 隠岐島前の実践をベースに、藤岡は各地の高校魅力化プロジェクトに関わっている。そこには図3のように3つの柱があるが、このうち公営塾や教育寮は、地域事情に深く関わることなので詳しくは触れない。ただ、いずれにしろプロジェクトの核心はハードよりも学びの中身にある。 「各校での学びを魅力的なものにしようとする際、有効なのが総合的な学習の時間や学校設定科目です。そこで独自の授業展開ができれば、教育のブランド化が図れるでしょう」 その際、藤岡が勧めるのが、土地の歴史から紐解く方法だ。 「それぞれの地域には歴史や文化があります。生徒が身近に感じる、そうしたテーマを深い学びへと昇華させていくのです」 例えば、広島県立大おおさき崎海かいせい星高校の場合、水軍の子孫が、瀬戸内海の変化が激しい潮目を読む知恵を活かして社会の潮流を読み、造船や海運で栄えた歴史がある。そこから、予測不能な社会を読み解く「潮目学」や、自らの方向性や志を立てる「羅針盤学」という独自科目を設定。また、長野県立白はく馬ば高校の場合、白馬村には古くは塩の道として日本海側と太平洋側の交流があり、戦後、観光地化によって都市部の人、近年はインバウンドにより海外の人との交流が盛んだ。こうした地域性を活かし、県教委と高校、白馬村、小谷村で協議した結果、国際観光科が設置されたと言う。 「地域特有の文化を受け継ぐ学びは、その地域でしかできません。私は文化遺伝子と呼んでいますが、これに紐づけることで、学びに対する興味が深まるとともに、高校と地域が深く連携できるようになります」 地域特有の学びをきっかけに出番が増えた大人は、生徒を子ども扱いしない。課題解決に向けた生徒の提案に対して、実現可能性など厳しい質問も飛ぶ。そうしたなか、大人を納得させるには、実は普段の勉強が大切であることに気づいていく。 こうした課題発見解決型学習において大切なのは、テーマ設定だと藤岡は言う。なぜなら、通常の授業のように、考え方の筋道はもちろん、正解すらあるとは限らないからだ。 「大人ですら難しい作業にストレスを感じるはず。それを乗り越えるくらい熱中できるテーマでなければ、挫折してしまうでしょう。生徒はよく貧困問題や少子化問題などをテーマに掲げますが、表出化している問題に取り組むことが、課題発見解決能力を向上させるとは限りません。問題を選ぶのではなく、発見できるかどうか。本当の問題は隠れています。そこを掘り返し、課題を〝自分事化〞することが肝心です」 そのためにはまず、自分の価値観とは何かを明らかにする作業から始めるべきだと言う。 「ヒントは、日常にあります。クラブや委員会活動、職場体験や修学旅行などの過程で、どのような壁があり、どう思考して、どう行動したかを生徒自身に言語化させるのです」 そうやって自分の価値観に気づいその地域・高校に根差したカリキュラム改革が柱図2 「島前高校魅力化プロジェクト」ホームページhttp://miryokuka.dozen.ed.jp同プロジェクトについては、『未来を変えた島の学校』(岩波書店)にも詳しい。問題を選ぶのではなく、発見できるかどうか102016 DEC. Vol.415

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