キャリアガイダンスVol.415
17/66

 新しい総学には、「落高トライ&リポート」(合併後「真庭トライ&リポート」・通称「TR」)と命名。活動の中心は、グループあるいは個人でおよそ1年間かけて取り組む探究活動だ。3年間で探究活動を繰り返すことで徐々に生徒をステップアップさせ、卒業後の進路につなげることを目指す(図1)。名称は「探究活動にトライし公の場でリポートする」という特徴を表している。 「TR」は管理職含め教員全員の参加を基本とする。負担が増えるだけではないか││教員からは、そんな不安の声も聞こえてきた。しかし、動きを止めるほどの抵抗がなかったのは、やはりどの教員にも総学の改革に活路を見出したいとの思いがあったからだろう。 「TR」実践のキーワードは「地域」と「体験」。当初からこれを掲げて始めたわけではなく、実践から浮かび上がってきたものだ。地域に出ていくきっかけとなったのは、初年度に1学年が取り組んだ、地元の代表的な土産菓子を使って町おこしを目指す「落合羊羹プロジェクト」。就職した教え子が大人と会話ができずに早期離職したという苦い経験から、水本先生が「異なる年代の人とコミュニケーションできる人になってほしい」との思いで仕掛けた。 「敬語も未熟な生徒もいた」というなか、思い切って地域に出したら生き生きと活動する生徒の姿があり、これが以後の「TR」の基本形に。各学年が年度ごとに「住みたくなる街」や「災害への備え」など地域に関連した共通テーマを掲げ、それに基づいて各グループ・個人は個別テーマを設定。書籍やインターネットで調べるだけでなく、商店街でのインタビューや地域の人との交流を複数回行いながら課題解決に取り組んでいる。 「TR」で地域について体験的に学ぶなかで、生徒は地域の魅力を改めて知る。現状の課題を自分たちで何とかしたいと、将来は真庭市で働くことを希望する生徒も増えた。 その様子に、当初、教員が抱いていた不安感は和らいでいった。そして、「TR」の経験を生かした推薦・AO入試合格が多数出て、久しぶりに国公立大学合格者が2桁という進路実績があがると、「方向は間違っていなかった」と逆風は完全に追い風に変わった。ただし、教員の視線は大学進学の先に向いている。 「教員の間に『地域を支える人材を育てる』という意識が強くなりました。10年後の真庭を支える人材を育てるのは本校しかいない、という気持ちで取り組んでいます」(中山先生) また、学年で1つの共通テーマに取り組む「TR」には、教員間の結束を強める効果もあった。職員室では学年団が「TR」について「今どんなんやってる?」「これがようわからんのだけど」など、教科を超えて日常的に相談や情報交換を行うという。 総学の研究事業に続き、12年度からの2年間は国立教育政策研究所教育課程研究センターの研究指定事業に指定された。研究テーマは、次期学習指導要領のキーワードでもある「思考力・判断力・表現力」の育成だ。なかでも同校は「論理的な思考力」に焦点を絞り、その育成に有効なシンキングツールを使った授業を、総学をはじめ全教科で実施することを目指した。真庭高校落合校地 近年の動向2002年度●岡山県立高等学校教育体制整備実施計画により、美作地区の教育体制整備の方向性が示される2004年度●至道高校と統合し、新・落合高校としてスタート2011年度●落合高校と久世高校の再編統合により、2つの校地に分かれた真庭高校が開校2012年度●国立教育政策研究所教育課程研究センター指定事業の研究指定校となる(研究主題「思考力・判断力・表現力」/~13年度)●「TR」にシンキングツールを導入2013年度●全教科でシンキングツールを活用した授業をスタート2015年度●「TR」を中心に地域の「しめ山プロジェクト」に 参加2010年度●岡山県学力向上アクションプラン「高等学校教科指導パワーアップ事業」の研究指定校となる(研究主題「総合的な学習の時間」/~11年度)●総学を「落高トライ&リポート(TR)」としてリニューアル落合高校真庭高校(落合校地・久世校地)至道高校久世高校学校を飛び出し地域での体験を重視総学から各教科へ授業で思考力育成の試みカリキュラム・マネジメントで生徒が輝く学校づくり真庭高校 落合校地(岡山・県立)172016 DEC. Vol.415

元のページ 

page 17

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です